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初めての勝沼 その4

昇仙峡の入り口は、観光客用の駐車場とおみやげ屋が建ち並び、観光バスからは団体のおっちゃんとおばちゃんが列をなすという私がもっとも苦手とする 景観を全て兼ね備えていた。旗を持った添乗員の後ろに続く、行動を予測できないじいちゃん、ばあちゃんの列を縫う様に歩くのは結構苦痛なのだ。実際 には、川沿いに巨岩奇岩が織りなすかなり迫力のある名勝地らしいのだが、ひと目入り口を見て興味を失った私は昇仙峡を素通りして適度に整備されたワ インディング・ロードへ車を向けた。
例によってすぐにトランス状態に落ちた私は、初めての土地、初めての道、それも山の中であるにもかかわらず地図も持たずに約1時間気持ちよく走っていた。

私は六甲山の麓に住んでいるので若かりし頃は、車で15分で到着する職場から3〜4時間かけて帰ることもよくあった。もちろん、六甲の山中を行った り来たり走り回っていたのだが、決して暴走族に所属していた訳ではなくただ車で走るのが好きだっただけだ。
いくら六甲で慣れているとはいえ、40歳にリーチの掛かった運動不足の身に1時間のワインディング本気走行は結構キツイものがある。山用にチューンした車ではなく、 ド・ノーマルのRV車だからなおさらだ。腰の高い車は安定感に欠け、ゆったりしたシートはホールド性に劣る。お尻が痛くなってくるし、腕も張ってきた。そんなこん なで徐々に意識が戻ってきた私はこの時今日の目的を思い出すことになる。しかし、時既に遅く自分が今どこにいるのかなど全く分からなくなってしまった。地図もない しどうしたものか?


ワイナリーに入るmutsu

とは言うものの決して道に迷わない特技を持つ私は(ここまでの行程は置いといて!)、おもむろにお日様の方向を確認し、これまでの行程を思い起こすことで東に進ん でいるであろうという結論を数秒の内に導き出したのだ。これはむしろ、勝沼に近づいている可能性が高いと脳天気に判断し、とりあえず市街地があるはずの南に向かっ てみることにした。南だから、お日様に向かって走ればいいのだ。
「もしかすると、もう、勝沼は目前かも知れない!」そんな期待を持っていたのだが結果的に、私の車はほんの15分ほどで甲府市内に戻ることとなった。

エッ!・・・?
甲府!!!???
なんで??????

そう、山の中を、ぐるっと回って帰ってきただけの話しだ!
もしかして、私を勝沼に近づけまいと、誰かが結界でも張ったのではないかなどと思ったりもしたが、まあ、知らない土地だし何があっても不思議はないのだ。そしてこの 時、助手席にあるマップルに目がとまった。ウン!地図は持っていた。今走ってきた道も載っている・・・! 
まあいいか!
 もう昼はとっくに過ぎている。お腹は何か食わせろとばかりに、グーグー文句を言い続けている。しかし、目的を果たさなければならない。やっと見つけた国道20号線 を東に向かうこと約40分、道路標識にとうとう勝沼の文字が登場した。午後3時少し前、前日に急遽設定された目的地に到着したのだ。特にナンの感慨も感じることなく、 益々やかましくなってきたお腹を満たせる場所を探すため、私はハンドルを左に切り勝沼の市街地へ車を乗り入れた。市街地と言えど勝沼の町は、古い家や寺社とぶどう畑 が目立つ田舎町の風情を呈している。食堂らしい看板もあまり見つからない。「メルシャン位の大手ならレストランを併設しているかも?」と思いついた私はまずはじめに メルシャンを訪れることにした。しかし、私の淡い期待は見事にはずれ、食い物にありつくことは出来ず、売店で売られていたロバート・モンダビーの帽子やTシャツに後 ろ髪を引かれつつも(帽子やTシャツが4000円以上もするのだ!)、何も買うことなくメルシャンを後にした。すると、メルシャンのすぐ北側に「シャン・モリ」と言うレ ストランがあることに気づいて、何はともあれ入ってみることにした。駐車場の入り口は広く、駐車場は高速道路のパーキングエリア並みに広い。しかも、ここはどうもワ イナリーらしい。あとで知ったことだが、ここは[SONY]の創業者盛田昭夫氏の実家なのだそうだ。

飲んでみるか?
いや、車で来ている以上酒は禁物だ。レストランでキノコのパスタを食って、車に戻り、マップルを開いて“シャトー・ルミエール”の場所を確認し車を走らせること数分、 電信柱に「シャトー・ルミエール↑」の看板を見つけることが出来た。
もう、お気づきだろう。そう、またやってしまったのだ!
勝沼町内を東西に走る狭い道を何度往復しただろう。かなり目立つ看板に気づいたときのうれしさというか、恥ずかしさというか、ばかばかしさは何とも表現のしようがない 感覚だ。我ながら1日に3度も同じ失敗をするといい加減辟易してくる。まあ、私のことだからこれくらいは、朝飯前なのだが・・・
シャトー・ルミエールの説明はワイナリー案内を読んで頂くとして、試飲させていただいた1997年の赤を口に含んだとき、思わず「オッ!」と唸ってしまった私に売店の女 性は「フッ!どんなもんでぇ!」とばかりに笑っておられたのが一番印象に残っている。そして、ひたすら勝沼を目指した私に衝撃の事実が告げられた。

「ここは一宮町です!」
「・・・・・!?」

そう、シャトー・ルミエールは一宮町にあったのだった。朝から何度も道を間違えて、ようやく辿り着いた目的地は、勝沼ではなかったのである。ほとんど町境に接している とは言えこのコーナーの表題は間違っていたことになってしまう。
一宮町は市町村合併によりいまは笛吹市になり、勝沼町も塩山市と大和村との合併で甲州市に名を変えたので、やはり目的地としては間違っていたことになる。だからここで このコーナーの表題を急遽変更したい

「はじめての一宮」

インパクトはないが、どんなモンだろう?・・・ダメ?
やっぱり勝沼の方がいい?
ウン!私もそう思う!やっぱり、このままにしておこう!?
こうして私の「はじめての勝沼」の旅は終わった。
この旅を皮切りに、勝沼方面に通うこと7度。何件かのワイナリーでは、すっかり顔を覚えられてしまった。しかし、まだ行ったことのないワイナリーも多い。これからも年に 数度の勝沼詣では続きそうである。勝沼で、神戸ナンバーの黒いクルーガーを見かけたら「mutsuさん?」と声をかけてみて下さい。それはかなり高い確率で私です。
因みに、この時試飲したワインは全て吐き出したので悪しからず!

おしまい!

By mutsu
祝 「初めての勝沼完結!」
いや、本当に終わって良かった・・・・ by Kirakusai
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