東直己の固ゆで日記

最終回
No.179 My Last Bow 
(2005年1月31日更新)


 さて、今回で、とりあえずこの連載コラムも終了であります。長い間、ありがとうございました。
 きっと、このサイトのどこか、あるいはホーム・ページにでも書かれているかとも思いますけど、この「寿郎社web site」が模様替えをする、ということで、更新はとりあえず、これで最後、ということだそうです。
 これでNo.179。その前の「固ゆで卵の夜」から数えると、何回お付き合い頂いたことになるのかしら。え? 始まったのは、2002年? あらまぁ……
 その間、愚にも付かないことや、間違ったことや、口汚いことなど、好き勝手に書かせて頂いて、ありがとうございました。そして、それを読んで下さった読者の方々も。「バカか、こいつは」「なんて下品なの?」「少し言葉遣いをどうにかしろ」「個人的で感情的な罵詈雑言など読みたくもない」などと、非常に不快に思われた方々も多かった、と思いますが、とにかく、読んで下さった方々全員に、つまり、歌舞伎で言うところの、「いずれも様」ってことだけど、心から、お礼申し上げます。
 あと、読者の方々はどう思っているかはわからないけれど、この拙文は、ちゃんと原稿料を戴いている文章なんですね。その点でも、土肥編集長には感謝しつつ、尊敬の念を禁じ得ません。おれは文章を書いて食っている人間で、寿郎社は出版社なんだからそれは当然、大人のビジネスの世界なんだから、というのは一方にありますが、しかし、なかなかそうでもない。ビジネスとして一人前にやっていける地方出版社、というのは、そう、御想像の通り、本当に少なく、みんな厳しい。特に北海道ではそうなんだな。たいがい道庁や市役所などの、税金にたかるような、そんなような下らない仕事しかないし、そんな下らない仕事に必死になってぶら下がるような根性の会社がほとんどだし、ということは、技術も技量も、編集の基本も、営業も、なにもかもがオアソビの、会社ごっこ、出版社ごっこの会社がほとんどであるのが現状です。
 道庁や市役所や、市役所から恵んでもらった税金で食いつなぐNPO、なんてのに仕事を恵んでもらって、どんなバカでも作れるパンフレット、小冊子、なんてのを作るのがメインで、残った時間を、自己満足の「ラーメンガイド」「スープカレーガイド」「観光ガイド」「キャンプ場ガイド」「温泉ガイド」「知床写真集」「礼文の花写真集」「ススキノガイド」などの低レベルの情報本を作ってりゃ、それでもう、なんか仕事をした気になれる、うふふふ、僕も私もメディア業界人なんのね、という喜びを噛みしめて、でもって、給料は安いからどんどん人は辞めていく、でも、その方がラッキーさ、この業界に入りたがる若いのはいくらでもいるから、専門学校を出た若い連中の、夢と希望を安いギャラで食いつぶせば、下らないガイドブックなんか毎年いくらでも作れるし、お役所の仕事を恵んでもらえば、そこらの出版社が、必死になって、2週間で、50万の予算で作るようなパンフレットを、半年かけて、600万円の予算で、みんな楽して楽しく作れるし。ま、競争しないで、のんびりいきましょうや。あ、今年もそろそろ「キャンプ場ガイド」の時期だ、などという、ミジメで情けない、でも、その中に安住すればなんとか食っていける、そんな状況にあって、数少ない例外のひとつである寿郎社は、日本全国を相手にして、観光でもない、ガイドブックでもない、税金にたかるためのバッタ本でもない、日本にきちんとした商品として通用する本を出し続けているわけで、これは本当に大変なことだろうに、と常々感心しているわけで。
 そして、多忙の上にも多忙な中で、このサイトを運営していたデザイナーの村田さん、拙著も含めて、寿郎社の本を強力に、日本全国に営業して回っていた大谷さん、著者に安心と自信を与えてくれた、信頼できる編集者である角家さん、状況の厳しい地方出版社に自分の世界を求めて入って来た柴山さんなどのスタッフにも、おれはとにかく敬意を禁じ得ないわけですね。
 一部の第三セクター出版社が、税金を湯水のように使って、のどかに、だらだらと、見栄えだけはいいけれども、アカの浮いたぬるま湯のような雑誌を作っている現状を知っているだけにね。
 ま、そんなこんなで、いろいろあるけれども、これからも、寿郎社の出版物を読んでいこう、と思っているわけです。私が言うのもヘンですけど、寿郎社を、よろしく。
 また、どこかでお目にかかりましょうね。
 お元気で。

「東直己の固ゆで日記」は今回で最終回になります。
日頃楽しみにしてくださった皆さん、突然の最終回の報告になってしまい申し訳ありません。
バックナンバーは当分残していく予定です。春にサイトのリニューアルを計画中です。
また宜しくお願いいたします。
東さん、長い間本当に有り難うございました。(涙)

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この連載コラムの前編にあたる、5年にわたって北海道新聞に連載された超人気コラム集、東直己著「ススキノハードボイルドナイト」(寿郎社刊)の詳細はこちら!