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LNET ニュース/2004.04.05
◎ES細胞研究に受精卵を提供する夫婦が見るインフォームド・コンセント用ビデオのナレーションを入手しました。
最終更新日 2004.04.05


2004年4月5日付
◎ES細胞研究に受精卵を提供する夫婦が見るインフォームド・コンセント用ビデオのナレーションを入手しました。

<ビデオのナレーション>

 20世紀から21世紀にかけては生命科学の時代だと言われるほど、この分野の研究は急速に発展しています。様々な研究が進められる中、多くの医学的な治療法が見つけられました。皆さまがお受けになった体外受精もその一つです。

 この治療は、あらかじめ、複数の受精卵ヒト胚を作ります。これは、母体に戻されたヒト胚がうまく着床しなかった場合に、備えて作っておくのです。予備のヒト胚は冷凍され、次の治療のために保存されます。治療が成功したり、途中で治療をやめた場合、この冷凍保存されたヒト胚は残ってしまいます。この胚を余剰胚と呼びます。余剰胚は提供者の同意を得て医学研究に使われる場合があります。

 1998年アメリカでこのヒト胚から、将来人間の体を構成するあらゆる細胞すなわち血管や神経、また臓器などへ分化する能力を持つ細胞、ES細胞を作ることができたと発表されました。
 現在日本では、マウスやカニクイザルのES細胞の作成に成功しています。 ES細胞には、二つの大きな特徴があります。一つは、非常に高い増殖能力です。そしてもう一つは、体のさまざまな部分に分化する能力、多能性です。では、ES細胞をこの多能性の面から見てみましょう。
 ヒトES細胞は、卵子が受精して、5日から7日程度の初期胚の一部を取り出し、培養して得られます。さらに、このES細胞を分化させて、血液や神経、または様々な臓器のもとになる細胞を作ることができるのです。
 マウスの研究例では、パーキンソン病の治療に効果的なドーパミン産生神経細胞や、脊髄損傷の治療に期待が持てる神経細胞、心筋梗塞の治療に応用可能な心臓の筋肉細胞、そして、白血病の治療に効果が期待できる血液幹細胞などの分化に成功しています。

 このことは、ヒトのES細胞を医学利用する基礎にもなり、今まで治療が困難とされてきた多くの病気を治すことができるのではと、今、先端の医療分野からも大変注目されています。

 21世紀に向けて今ホットな注目を集めているというES細胞とは何なのか。京都大学再生医科学研究所の中辻憲夫教授は、15年ほど前に日本で初めてネズミのES細胞を取り出す技術を確立しました。これが中辻さんたちが取り出したネズミのES細胞です。ES細胞は胚性幹細胞とも呼ばれ、あらゆる細胞に変化することのできる多能性を備えています。
 ES細胞の培養する条件を様々に変えさえすれば、ES細胞を欲しいと思った細胞に分化させることができます。
 この映像はネズミのES細胞を分化させて心臓の筋肉の細胞を作り出したものです。拍動していることがわかります。こうした技術がもっと発展すれば、移植医療や再生医療の可能性が広がるのです。

 実際に近い将来、パーキンソン病や糖尿病などの治療に、ES細胞を利用することも考えられています。パーキンソン病は、脳の中で作られる神経伝達物質、ドーパミンを作る細胞が異常を起こし、手足が震えたりする病気です。
 そこで、ドーパミンを作る神経細胞をES細胞から作り出し、脳に移植するという方法で、大きな効果が上がることが期待されています。
 ではES細胞をどのように取り出すのでしょうか。ネズミの例でその方法を見てみます。
 ネズミの精子と卵が受精し、受精卵になります。受精卵は早速分裂を始めます。分裂が進むと胚盤胞という状態になります。胚盤胞は細胞がそれぞれの組織へ分化を始める直前の段階です。その中には将来体をつくるもとになる細胞の塊があります。この胚盤胞のからを壊し、内部にある細胞の塊を取り出して培養します。この中からあらゆる細胞へ分化できる特殊な細胞を見つけ出すのです。それがES細胞です。
 最近、中辻さんの研究グループは、人間と同じ霊長類のES細胞を取り出すことにも成功しました。カニクイザルからES細胞を取り出したのです。日本で初めてのことです。

 カニクイザルのES細胞です。このES細胞を使い、骨や筋肉、毛根、神経など様々な細胞への分化も確認しています。こうしたサルでの実験を重ねれば、人間への応用も近くなると考えられています。

 このようにES細胞はまさに夢の細胞といえます。しかしその反面、ヒト胚は子宮に着床すれば成長して人間になる可能性があるのですから、その取り扱いには非常に慎重でなければなりません。

 京都大学再生医科学研究所の中辻憲夫教授は「ご覧いただきましたように、ヒトES細胞というものは、今後研究が進みますと、たくさんの人たちの病気の治療に使えるという大きな意義があります。しかしながらそのES細胞を作る最初には、貴重なヒトの受精卵あるいはヒト胚を壊す必要があります。したがってどういうヒト胚や受精卵を壊してES細胞を作ってもいいか、という意味では非常に厳密な従うべきガイドラインが政府によって決められています。私たち研究者の良心としても非常によく考えて使わなくてはいけません。提供して頂いた胚について、もしこれが売買につながりますと、そういう尊重しなければいけない貴重なヒト受精卵を売買の対象にするということは倫理的に許されることではありません。したがって患者さんから提供して頂いても、それに伴って利益も不利益も全く生じることはありません。つまりたくさんの人たちの病気を治すために提供して頂くという、まさにボランティアの精神でお願いしたいということです。
 そして提供された胚は1か月間だけ、その不妊治療を行っている医療機関に保存されていて、その間は患者さんがお気持ちを変えて、やっぱり提供するのはやめようという場合には同意を取り消すことができます。しかしながら1か月を過ぎますと、我々樹立機関の方にその受精卵が運搬されます。その前にどなたの受精卵かということはそのラベルが取り除かれて、複数の患者さんの提供されたものが、どれがどなたのものかわからない状態で我々樹立機関に受け渡されることになっています。このことはどうして行うかといいますと、実際にその受精卵を使ってヒトES細胞を作るときに、成功する場合も成功しない場合もあるのですけれども、成功したその細胞がどなたの受精卵からできたということは全く誰にもわからない状態にするためです。このことによって提供者のプライバシーが厳重に保護されるということが保障されるわけです。こういうやり方で非常に慎重に貴重なヒト胚というものを使わせて頂いてそのことによって多くの人たちの医療の発展に貢献できるということが我々の願いであります。」

 ES細胞の医療への応用は、数多くの病気を克服し新しい治療法の開発に大変役立つことでしょう。そのためには、今後様々な研究が行われなくてはなりません。皆様にこの計画をご理解して頂き、ご協力して頂きますようお願い致します。

監修 京都大学再生医科学研究所教授 中辻憲夫

<ビデオほか資料入手方法>

「文部科学大臣に提出されたヒトES細胞株樹立に関する申請書類ならびに資料のすべて」を情報公開請求したい、と、以下へ依頼すると、300円の納付書と情報公開請求用紙が送られてきますので、それを送り返してから1か月くらいで公開決定通知書が来ます。

〒606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学大学情報課
Tel 075-753-2073
Fax 075-753-2094

(2004.2.26 協力・加藤太喜子 名古屋大学大学院人間情報学研究科)
*これは京都大学再生医科学研究所へ情報公開請求したビデオから、ナレーション部分をおこしたものです。平成16年4月5日付京都大学再生医科学研究所より転載許可済

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