続・続・キリン神戸工場でビール造り教室に参加しました。(2000/9/2(土))

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ボックビールを仕込む
はじめに
今回で3回目の参加です。スッタフにお聞きしたところ、3回目の参加はごく少数ということです。我々のグループは全種類のコースを制覇するのを目的としていますので、まだまだ参加記録は更新されることでしょう。

今回はボックビールを仕込むことにしました。ボックビールは関西限定で販売されているキリン神戸ビールがボックタイプのビールです。ラガータイプのビールといえば、ピルスナースタイルという淡色の風味の静かなラガービールを連想しますが、ボックタイプのビールはラガータイプのビールの仲間に入りますが、ピルスナースタイルとは違い、豊かでこくがありフルーテイな香りがするビールです。

今回は、このボックビールの豊かでこくがありフルーテイな香りはどうして創られるのか、勉強するために参加しました。ボックタイプの淡色系を今回仕込みました。

ビール教室のプログラムはいつもと変わりはありません。講義が一時間、その後教室に移動して、糖化行程、麦汁の濾過、ホップ投入式、麦汁の煮沸、冷却、酵母投入、エアーレイション、終了証授与式です。

今回は3回目の参加です。各工程の写真は前回、前々回とほぼ同じですので、できる限り省略しました。

(1)ビール仕込み(糖化行程)

今回の仕込量15リットルです。他に10リットルコースもありますが、どちらになるかは抽選で決まります。10リットルコースと15リットルコースとでは、鍋や濾過層などの道具に若干の違いがあります。

材料;主原料----欧州産pale malt-874g、豪州産pale malt-874g、北米産pale malt-874g---total malt-2622g。

   副原料----米-302g、コーングリッツ-227g、コーンスターチ-227g---副原料の総量-756g。

   total---3378g

(同じpale maltですが、3つの地域から仕入れて使用しています。おそらく、一つの地域のpale maltを使用した場合、気候などの変化で一定の品質のmaltが手に入りにくくなることもあり、その対策だと思います。)

本日の糖化行程のタイムスケジュウルを下記に示します。

A:副原料の糊化行程

53℃のお湯を入れた寸胴に副原料(米302グラム、コーンスターチ227グラム、コーングリッツ227グラム)と麦芽(pale malt)151グラムの合計907グラムを投入しました。50℃で10分間ゆっくり大きなへらでかき回します。(前回のビール教室でキリンラガービールを仕込みましたが、その時は50℃で30分間でした。この時間の違いに何か意味があるのか不明です。その時に気づけば質問したのですが、次回参加したときに聞くことにします。麦芽151グラムを副原料の中に入れていますが、麦芽の酵素の働きを期待して入れているわけではなく、麦芽を入れないと副原料が固まってしまって糊化行程が進まないためです。麦芽を少量入れることにより、マッシュ液はさらさら状態になると前回の参加で聞いています。)

副原料は78℃以上にすることにより固いからで覆われた澱粉がノリ状になり、後にメインマッシュ液に加えますが麦芽の酵素により副原料のデンプンが分解(糖化)しやすくなります。20分間で78℃まで温度を上げ、5分間その温度で保ち、その後20分間で100℃まで上昇させます。マッシュ液が沸騰しましたら大きなへでかき回すのは終了します。ふたを閉めてグツグツを弱火で20分間沸騰させます。

今回は3回目の参加ということで、状況が把握できています。マッシュ液の温度差も±O.2までしか許してもらえませんでした。

B:主原料の糖化行程

スタートして45分後に主原料(pale malt:2471グラム)の糖化行程が始まります。別の寸胴に53℃のお湯9.4リットルを入れ麦芽2471グラムを投入します(麦芽は2622グラム用意していましたが、151グラムは糊化行程で使用しました)。

protein rest 50℃で30分間のprotein restです。protein rest終了後20分間沸騰させた副原料のマッシュ液を5分間かけてゆっくりとメインマッシュに加えていきます。この結果、マッシュ液の温度は65℃になりました。

Saccharification Rest マッシュ液の温度が65℃になり、5分後にマッシュ液の40%を別の寸胴に粥移しをします。60%のメインマッシュは65℃で30分間糖化を行います。別の寸胴に移した40%のマッシュ液は30分間で95℃まで上昇させます。95℃まで上昇させたら、メインマッシュに5分間かけてゆっくりとマッシュ液を戻します。メインマッシュの温度は78℃になり5分間かき回して糖化行程は終了です。

温度調節にはかなり神経を使いました。温度が下がればガスコンロの火をつければマッシュ液の温度を上げることができますが、上がりすぎた時はぬれたタオルを寸胴につけて温度を下げます。

今回の糖化行程ではSaccharification Restの時間が35分間でした。前回のビール教室でキリンラガーを仕込んだ時はSaccharification Restの時間は55分間でしたので、20分間少ないことになります。糖化終了時にヨード反応で糖化が終了したか確かめましたが、完全に糖化は終了しています。ヨード液の色は変化しませんでした。しかも、別の寸胴に移した40%のマッシュ液は95℃まで上昇させただけで、前回のビール教室でキリンラガーを仕込んだ時のように10分間の100℃での沸騰はありませんでした。このSaccharification Restの行程がボックビールの出来上がりに大きく関係しているものと思われます。豊かでコクのあるボックビールの秘訣はSaccharification Restにあるのではないかと考えられます。糖化行程で麦芽の中の酵素がデンプンを分解しますが、酵母は単糖のグルコース、2糖類のマルトース(麦芽糖)、3糖類のマルトトリオースまでは炭酸ガスとアルコールに分解する事ができますが、それ以上の多糖類(デキストリン)は分解することができずビールの中に残ります。このデキストリンの量がビールのコクや豊かさに関係していると思われます。Saccharification Restの時間を長くすればマッシュ液のデキストリンの量が少なくなりますので、ボックビールのSaccharification Restの時間が35分間と前回のビール教室でのキリンラガーのSaccharification Restの時間より短かかったと思われます。

今回のボックビールの材料は3378グラムで、前回のビール教室でのキリンラガーでは、仕込量を15リットルに換算して材料は2910グラムとなり、今回のボックビールの材料の方が468グラム多くなります。麦芽の量が多いこともビールのコクや豊かさに関係していると思われます。また麦芽の量が多いとフルーテイな風味が出ます。ラガー酵母でフルーテイな風味を引き出すには、(1)原料を多くする(2)発酵温度を高くする(3)エアレーションをしない。とブラウマイスター阿部さんは解説していました。今回のボックビールでは、エアレーションは通常通りしましたので、原料が多い、発酵温度を高くすることにより、フルーテイな味わいを引き出すと思われます。しかし、阿部さんはボックではあまりエアレーションをしない方がいいと言っておられました。

別の寸胴に移した40%のマッシュ液は95℃まで上昇しただけで、100℃にしなっかた理由は聞きませんでした。次回のビール教室参加時に聞くことにします。

protein rest、Saccharification Restの間、絶え間なくマッシュ液を大きなへらでかき回せました。どうして常にかき回せ続けないといけないのか、ブラウマイスターの阿部さんに質問しました。工場での話ですが、温度が一定の時はマッシュ液をかき回せないそうです。protein rest、Saccharification Restのrestは休止と訳します。つまりマッシュ液をかき回さないでそっとしておく意味です。キリンビール工場ではマッシュ液の温度が一定の時はマッシュ液を休め(攪拌機を止め)、温度を上げるときにゆっくり攪拌機を動かす、とのことです。理由をお聞きしましたら、真の理由はまだ分からないが(経験的に分かっていることですが)、マッシュ液の温度を上げるときにはかき回さないとマッシュ液にえぐみ成分が出る、すなわち雑味が多くなると教えていただきました。

キリンビール教室ではマッシュ液を絶え間なくかき回せますが、工場に比べて小さい容量なので一定温度の時に必ず撹拌が必要かどうかは分からない、とのことです。

(2)麦汁濾過(lauteringとsparging)

前回、前々回と行程はほぼ同じでした。一番絞りの回収後、78℃のお湯をグレインベットに入れて二番絞りを回収し、合計15リットルの麦汁を回収します。

(3)ホップ投入式の後、麦汁の煮沸、冷却

麦汁が回収されましたら、一番ホップの添加式です。全員の拍手でこの儀式は行われます。その後は工場見学とビールの試飲の時間です。麦汁の煮沸行程、ビターホップの投入はスタッフがしてくれます。この行程は、前回、前々回とほぼ同じです。

私が仕込むときには、麦汁の温度と比重を測定しますが、キリンビール教室ではしませんでした。目標の糖度は14.8%です。ビール教室では、次のようにしています。後に麦汁を一時間煮沸しますが、水分が蒸発します。その都度麦汁にお湯を足しますが、煮沸の最後に麦汁の一部を取り、麦汁の温度を15℃まで冷やし、麦汁の糖度を糖度計で測定します。その時の糖度に応じて、お湯を足して目標糖度に調節します。今回の仕込みでは、煮沸の最後に糖度を測定し17.55%でしたので、お湯を2433ml足して、目標糖度14.8%にしました。(この行程は、我々は工場見学とビールの試飲の時間ですので、スタッフがします。ビールの試飲を程々にして、麦汁の糖度の測定と補正の様子を見学すべきでした。)

ホップは3つに分けて投入します。

A
B
C

Saaz(α酸値3.3%)

6.0g
1.9g

Hallertauer産(α酸値8.9%)

7.8g

Aは一番ホップの添加式時に我々が投入します。Bは麦汁が沸騰した時点で投入しますが、工場見学とビールの試飲で現場を離れていますのでスタッフがします。沸騰時間は一時間です。火を止める最後にアロマホップとしてCを投入します(スッタフがします)。ボックの苦み値(IBU)はいくらか計算できます。みなさん、計算してみてください。意外と低い値です。ボックはホップの苦みを押さえて、麦芽由来の風味を引き出すものと思われます。

ビール試飲を終えて、現場に戻って、ワールプールです。今回も私がしました。15分間おいておくと麦汁の中の熱凝固蛋白やホップのかすが寸胴の底に富士山のように溜まっています。

15分後には麦汁はかなり澄んできます。ロータリポンプを回し、麦汁を冷却して発酵タンクに入れます。今回は麦汁の温度を8℃にします。前回のビール教室でキリンラガーを仕込んだときは、6℃まで冷却しましたが、ボックビールは8℃とやや高いです。この温度の高さが、ボックビールのフルーテイな味わいに関係しています。

酵母投入が終了し、エアーレーションです。15分間、ポンプで空気をいれます。これで本日の行程がすべて終了しました。

キリンビール教室の酵母は、ビールのタイプに関係なく、ミュンヘン工科大学のWeihenstephanのラガー酵母を使用しているとのことです。ビール工場の酵母とは違うようです。

本日のビール教室でのスナップ写真です。

(4)発酵管理

発酵管理はキリンのスッタフがしてくれます。今回は、どのように発酵管理をしているか、お聞きすることができました。

酵母pitchig時の麦汁の温度は8℃でした。11℃まで自然に上昇させます。ボックビールは10℃から11℃で発酵をさせます。前回のビール教室でキリンラガービールでは、それより低い6℃から8℃の温度で発酵させます。

酵母を投入後、麦汁は(若)ビールという名に変わります。毎日若ビールのサンプルを取り出して、若ビールの比重と濁度を測定します。(糖度計ではアルコールが存在すると正確な糖度を測定できません。比重を目安に糖度を測定するようです。比重は比重計で測定するのではなく、振動密度計で測定しているそうです。我々でしたら比重計で充分だと思います。)

仕込み時の麦汁の糖度は14.8%で7日後に澱引きするときには若ビールの糖度を4.5%にまで減少(attenuation)させます。グラフで記入するようになっている主発酵経過表に、毎日の糖度をプロットで記入し若ビールの糖度の減衰曲線を作ります。糖度の下がり方が悪いときは発酵温度を上げ(最高11℃まで)、糖度の下がり方がよいときは発酵温度を下げ、若ビールの発酵を調節します。今回仕込んだボックビールでしたらだいたい発酵温度が10℃から11℃で、七日間で目標糖度に達するとのことです。

毎日の比重(糖度)測定と同時に若ビールの濁度を測定します。発酵盛んなとには下面発酵ビールでも酵母は若ビール中を浮遊しビールの濁度が増します。若ビール中の糖(グルコースでマルトースは関係ない)の量が少なくなると酵母同士がくっつき底に沈むようになり、若ビールは徐々に澄んできます(flocculation)。この若ビールの濁度も発酵の状態の一つの目安にしています。

毎日、若ビールの温度と比重(糖度)と濁度を測定し主発酵経過表に記入して、発酵状態を管理します。主発酵経過表をいただきました。

日塔さんのHPを見ていますと、発酵状態を日々記録されています。サンプルを取り出して比重と温度を測定すべきですね。私の場合、この発酵管理は適当にしていました。サンプルを取り出すときに雑菌が若ビールの中に入らないようにしないといけません。現在は、glass carboyで一時発酵をしていますが、どうやって清潔操作でサンプルを取り出すか、思案中です。コニカル発酵容器でしたら、外気に触れることなくサンプルや澱を取り除くことができます。ますますfermentapが必要になってきました。

さらに、一時発酵中の温度管理を発酵状態を見ながらきっちりする。となると、冷蔵庫または保冷庫が必要になります。

醸造への道は奥が深く、進めば進むほど大きな壁が待ち受けています。

(最後に)

今回仕込んだビールは10月14日に到着予定です。10月21日にビールパーテイを予定しています。ボックビールの豊かでこくがありフルーテイな味わいは、材料の多さと、マッシング時間の短さ、発酵温度を高くすることによって生まれてくることが分かりました。また、発酵の管理の重要性も理解でき、今回のビール教室では私にとっていろいろ教えていただくことが沢山あり、有意義であったと感じています。参加するたびに今までは目に入らなかったいろいろなことが目に入ってきます。我々自家醸造家はプロではありませんので、適当にビール造りを楽しめればいいのではないか、という考えも心の片隅にありますが、それでは満足できないという気持ちが心の底から湧いてきます。ビール造りはアートという言葉がありますが、私はビール造りはサイアンスだと思います。ビールの味わいは材料の善し悪し、仕込み行程、発酵温度、澱引き時の酸化、また殺菌混入などなど栓をあけて飲むまでのどこかに問題があれば、その原因に応じたオフフレーバーが出現します。今飲んでいるビールにはどんなオフフレーバーが存在するのか、それを見抜く審美眼も必要ですが、分からなければ分かっている人に飲んでもらい指摘を受ければいいわけです。オフフレーバーの原因を考えて、次回の醸造の教訓にする。これからは、このような姿勢でビール造りをしたいと考えています。

ビールの試飲会ではブラウマイスターをお呼びする予定です。いろいろアドバイスを受けることがありましたら、また報告します。

ビール試飲パーテイ(2000/11/4記載)

10/21にビールパーテイをしました。昨年と同じ奈良市の丹生での自然薯パーテイです。我々が仕込んだボックビールですが、大変美味しいビールでした。オフフレーバーは感じませんでした。前回の日本風ビールが失敗作だっただけに、今回の成功は喜びで一杯になりました。キリン神戸ビールを飲み比べてみましたが、ビール教室のビールは甘みを感じます。しかし、目隠しして飲み比べて見た場合、その違いはなかなか分からないと思います。

キリンのビアマイスターは日程がつかなくて今回は参加がありませんでした。少し残念でした。

ボックビールは大変こくがありフレーバーが豊かで飲みごたえのあるビールです。過去3回のビールを味わってみて今回のビールが最高でした。次回はアメリカンスタイルのラガービールを作るとします。

それでは。


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このページに関するお問い合わせは:tachibana@msic.med.osaka-cu.ac.jp (橘 克英)迄。
Copyright(C)2000by Katsuhide Tachibana
作成日時 2000年09月07日-2000年11月04日