シートの話

 シートはねえ・・・

語らせてもらいますよぉっ!。

 一応コレでも一時期シートの設計をしていました。シートの設計を離れても暫く同じ職場に居たので、「門前の小僧・・・」で勉強の機会だけは有ったんですね。

 で、シートなんですけど・・・ダメなんです。良いシートを作ろうと思っても、マスプロダクトでは限界が有るのです。

 シートの機能は当然「乗車中の体を支える」という事です。この部分で合格点が得られないシートはまず有りません。でもここに「体への負担が少なく」と付け加えると難しくなってしまいます。

 「体への負担が少ない」というのは「長時間座っても体が痛くならない、疲れにくい」という事です。で、「痛くなる」のは大抵背骨、主に腰の辺りですよね。

 背骨は沢山の円柱状の骨が軟骨で連結された物です。ニュートラルの位置から曲げた状態を長く続けると、変形した軟骨にストレスが掛かって痛くなるのです。ですから痛くならない様にする為には背骨がニュートラルになる姿勢を執る事が必要です。

 ニュートラルな姿勢とは即ち立っている時の姿勢です。横から見た背骨が緩いS字を描く状態。背骨は骨盤から繋がっているので、骨盤の角度から考える事もポイント。

 でも人の背中の形なんて千差万別。とてもひとつの形で全ての人に適したシートなんて作れないのです。量産車のシートは大抵AM95%tile、つまりアメリカ人男性の、体格の小さい方から95%辺り=大きい方にいる人の体格に合わせて作ってあるのです。こんなシートが合うはずが有りません。

 メーカーでも5分か10分座ったくらいで評価していますから、8時間座ってどうなるか?なんて事は考えていないでしょう。考えたところで全ての人にベストな物が作れないのが判っているので深く追求もしてません。その結果、機能より造形が優先されちゃったりもしてます。
 強いて言えば「椅子に座る」事に関してより深い歴史を持つヨーロッパの車の方が「マシ」な物が多いですかね。

 それをごまかす為、ちょっと高級なシートになると、アジャスターが付く様になるのです。

 でもアジャスターで調整出来る範囲は限られています。どちらかというと「ベストな姿勢を作る」より「姿勢を変える事が出来る」事のメリットの方が大きいかもしれません。

 ではアジャスターのない車、ハイエースのバンでは耐えるしか無いのでしょうか?。

 そんな事は有りません。多くの人に合わせようとするからアジャスターが必要なのであって、ただ1人、自分だけに合う様にチューニングする事は可能です。

 先ずはノーマルのシートについてですが・・・。

 正直言って「なんじゃこりゃ?」というレベル。腰上部の支持が強過ぎて背骨が反ってしまい、2〜3時間で痛くなってきます。昔のモデルとは形状が違うのでしょうか?。前の塩ビのシートの方がマシです。

 支持が足りない所にウレタンを追加して済めば簡単なのですが、この状況では強すぎる腰上部の反発を弱くするのが先決。でもウレタンを削ってしまうと絶対元に戻らないので避けたい所。

 よってこんな対策を取りました。

 先ずはシートの表皮を剥がします。背面の下に表裏のシート表皮を繋いでいる所が有ります。ここはC字状の金具{ホグリングと言う}で接合されているので、プライヤーで掴んで捻る様に取り外します。接合する時はタイラップで留めれば良いので、金具は捨てちゃって良いです。

 車に取り付けたままだと一カ所表皮を切らなければならないのですが、表皮を剥がします。

 下から捲る様に、シートパッドを圧縮しながら、左右均等に捲っていくのがコツです。
 突然叩かれたり泣き出したりはしないので、落ち着いて作業しましょう。

 背後に回るとS字状に曲がりくねったスプリングが見えます。通称「Sバネ。」そのまんま。

 上側の位置が強すぎて困る支持の位置になります。よってこのスプリングの作用を弱くすれば良いのです。

 具体的にどうするかと言うと、後ろに引っ張って変形させてしまいます。

 まず力の限り引っ張って、ここまで変形させました。

 これで座ってみると強すぎた支持がかなり改善されました。まだ完全とは言えないけれど、取り敢えず4時間くらいなら大丈夫。

 あとサイドサポートも強化しようと思ってますが、まだ手つかず。
 まあ好きなだけパッドを追加すれば良いです。表皮を被せ直した時にシワが出るかもしれませんが、ひと夏越えれば気にならなくなります。このへんはまた追々報告します。

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