1.はじめに
中国語に「米袋子=米袋(食糧)」と「菜籃子=買物かご(副食品)」という言葉があり、 近頃頻繁に使用されている。この内食糧に就いては、中国では故毛澤東主席時代から食糧を増産 し、蓄え、外敵に備えなければならないことが強調されてきた。一言で言えば、食糧の自給なく して民族の自立は有り得ないということである。これは現在も中国の為政者に貫かれている基本 的な思想である。
中国の食糧問題は、特に1994年レスター・ブラウン氏が「誰が中国を養うか」という問題を提起 して以来、世界的規模で種々議論され、自力更生を標榜してきた中国政府自身もこの議論に刺激 され、更に深く食糧政策を検討し且つ見直し、理論武装してきた形跡がある。
その総括ともいえる「中国の食糧問題」白書が昨年10月24日国院報道弁公室より公表され、10月 25日の人民日報に掲載された。
白書の内容は、従来からの中国は食糧を自給出来るという基本的主張に変わりはないが、目新し いことといえば(すでに昨年6月に出版された農業部の中国農業発展報告’96にも述べられて いることではあるが)「中国は国内の食糧増産に努め、通常の状態では食糧の自給率は95%を下 回らず、純輸入量は国内消費量の5%を超えない」としていることであろう。
中国は、1994年を境に穀物の純輸入国になり、1995年には輸出入を相殺して、穀物の純輸入量は 1,976万トンに達したが、この程度なら通常の範囲ということになる。但し、全国的に非常な不 作で、備蓄にも深刻な影響が出てきた場合には、最大10%即ち4,000〜5,000万トン程度の輸入は 有り得るのではなかろうか。
現に世界銀行の借款も利用し、大連港など深水バースが建設可能な港湾で、パナマックスなど大 型穀物専用船による輸入穀物のUNLOADING施設を建設、拡大中であり、全国的に穀物のバラ輸送 一貫システムを建設中である。
また、江澤民総書記のブレーンと言われる中国科学院の胡鞍鋼氏は、昨年9月に発行された「瞭 望」誌で、現在の食糧自給率を10%下げ、輸入による補充と、食糧以外の農作物の輸出拡大によ る「交換の促進」を提唱している。
但し、世界の穀物の貿易量、食糧安保の面からみて、4,000〜5,000万トンの輸入が限界と考えら れる。 若し万一これ以上輸入しなければならない事態に立ち至った場合は、中国では部分的に市場経済 が後退し、1994年以降中国の29の大中都市で一時的に「都市住民食糧食用油供給切符」(糧票) が復活したように、食糧を配給制度に戻しても基本的な食糧自給を貫くであろう。
しかしながら、白書のより重要な論点は、今後中国人の食事の構成は改革され、食料品の消費パ ターンが変化していくことを強調していることではなかろうか。
現在、中国で食生活に変化が起きている。従来の量が有れば満足という状況から、より美味なも の、より新鮮なもの、より栄養のあるもの、簡単に且つ相当期間保存出来るもの、手軽に料理出 来るもの、更に見た目が美しいものを求めるようになってきている。
既に栄養摂取量は一部都市では中進国並みに達し、住民の一人当たり一日の食糧消費量は、穀物 387gで大きな変化はないものの、肉類78.3g、魚介類36.1g、乳製品24.2g、卵76.1gまで増大した。
以前、北方では冬に新鮮な野菜を摂取するのは難しく、北京市でも冬場は白菜しかなかった。現 在では栽培技術も進歩し、耕作面積も拡大し、道路輸送など物流面も整備されつつあり、四季を 通じて新鮮な野菜を摂取することが可能となり、一昨年の一人当たり年間野菜消費量は150kgに 達した。 更に冷凍食品、レトルト食品の食卓に占める割合も増加している。
即ち中国の食糧問題は、単に「米袋子=食糧」を見ているだけでは不充分で、「菜籃子=副食品」 も見なければならず、更にその構成、質的変化も見なければならないということである。以下本 稿では副食品を視野に入れ、食糧と副食品を統一的に食料とし、過去を振り返り、今後を展望し てみよう。
2.食料供給の歴史:
1949年に新中国成立時、食糧総生産量はわずか一億千三百二十万トンで、一人当たり210kgに 過ぎなかった。そのため中国政府はまず食糧増産に力を入れ、土地の所有制の改革を通じ農民 が互助合作の道を歩むよう指導し、生産力を開放し、農業基盤施設の改善、機械化、技術進歩 などを通じて食糧を増産することを最大のテーマとせざるを得なかった。
文化大革命−人民公社の大混乱もあったが、食糧増産は相当の成果をあげた。この時代、腹一杯 食べるということが人々の最大関心事であったが、一部大都市住民を除き未だ充分満たされるこ とはなかった。
筆者は当時北京に滞在したことがあるが、果物といえば夏は西瓜しかなく、秋にりんごと梨が 時々食べられるくらいで、冬場は野菜といえば白菜しかなく、寒くなり始めると、各家庭は冬に 備え大量の白菜を仕込むのに大わらわであった。一般市民の生活は、量はともかく質も種類も現 在の北京市民からみれば信じられないくらい貧弱なものであった。
その後1979年以降1984年にかけて、人民公社に懲りた農民が自発的に農業生産の請負制を工夫し、 中国政府はこれを家庭生産高連動請負制としてこの改革を奨励、促進し、更に食糧買付け価格を 大幅に引上げたため、広汎な農民の生産意欲は急激に高まり、1984年の食糧生産高は四億七百三 十万トンに達し、これにより中国の長期的且つ深刻な食糧不足の局面が転換された。
1985年から現在にかけては、食糧生産高の伸びは鈍化している。これを見て中国の急速な市場経 済化による耕地面積の減少や、農民の食糧以外の換金商品作物へのシフトと結び付け、近年中国 の食糧問題が俄然クローズ・アップされてきたのであろうが、この時期中国政府は農業生産の構 造調整を積極的に進め、多角経営を発展させ、食物の多様化がかなり速く進展したことも見なけ ればならない。
即ち中国政府は「九十年代の中国の食物構成改革・発展要綱」にもあるように、食物構成を中カ ロリー、高蛋白、低脂肪のパターンにするため、伝統的な食事構成を残しながらも、動物性食品 の数量を適切に増やし、食物の質を上げる努力をしてきた。
食物構成の変化により、直接主食となる食糧は減少傾向にあり、飼料食糧が次第に増え、配合飼 料の生産は1985年の800万トンから急増し1995年には4,500万トンに達した。この期間、中国人 一人当たりの食糧は相対的に安定し、栄養水準が著しく改善され、一人当たりの一日平均の供給 熱量は2,727kcalとなったが、この数字は一人当たりGNPが同程度の国を上回り、既に世界の 平均水準に達している。 (RE:日本2,627kcal−平成6年) 以上現在までの食料の生産量は図表のような伸びを見せているが、1995年、副食品の生産量 は下記となった。
豚・牛・羊肉: 4,265万トン 図表 とり肉: 935 〃 水産物: 2,517 〃 図表 卵 : 1,677 〃 図表 牛 乳: 576 〃 図表 果 物: 4,215 〃 図表
(中国農業部 中国農業発展報告’96及び国家統計局 中国統計摘要 1996より)
即ち、1995年食糧の生産高は一人当たり380kgで、世界の平均水準に達しているが、副食品の生 産量は一人当たり肉類41kg、水産物21kg、卵14kg、果物35kg、野菜198kgで、既に世界の平均水 準を超えている。
3.食料供給の現状と実態:
上記図表から明らかな通り、食糧の総生産量は1987年に4億トン台に乗せてから緩慢な上昇を 続けているが、各種副食品の総生産量はこの頃から大幅な上昇を続けている。中国政府は副食 品の増産を「菜籃子項目=買物かご(副食品)プロジェクト」と称して重視し、農業部に全国 「買物かごプロジェクト」弁公室を設けて指揮している。
従って現状に於いても、中国の食糧問題を人口の増加と食糧生産の増加との単純な対比に於いて 見るなら、問題の所在を正確に把握することは困難であろう。
中国政府は大都市周辺地区に現代化された大型菜園を建設すること、また品種改良、大量生産、 温室栽培、物流の現代化、市場の整備など考えられるあらゆる手法を使って副食品の増産、質の 向上、品種の多様化、市場への安定供給、価格の安定を計っている。更に農業部は全国的に無農 薬、有機肥料の‘緑色食品’の普及を推進している。
今、朝方北京の街角を歩いてみれば、都心を外れた処には未だ伝統的な米粥攤(朝粥の屋台) も見受けられ、これはこれで美味しいが、都心部に向かえば、至る所にケンタッキー・フライドチキン、マクド ナルド、ピザハットなどの店が見られ、吉野屋の牛丼、炉端焼き、日本そばなどの店もあり、市場経 済化の大波と共に外食産業の波も押し寄せ、デパートやスーパーには冷凍食品、レトルト食品、 綺麗にカットされ包装された新鮮な野菜や魚が並び、北京市民の「食卓の風景」もすっかり変 ってしまった。
一例として、大連の経済技術開発区に進出した日清製油は、大豆粕の日本向け輸出、食用油の中 国内での販売を行っているが、当初サラダ・オイルは、これは油ではないなどと言われてあまり 売れなかったという。しかし、今では上海を中心に売れ行き好調とのことである。先ず北京、上 海、広州などのような所得の高い大都市で消費パターンが変化し始め、現在その変化が徐々に地 方に及びつつある。
例えば、中国のビール消費量は急速に増大しており、1995年には1,533万屯のビールを生産し、 米国に次ぐ世界二番目のビール生産国になったが、2000年前後には米国も抜き、世界最大の生産 国になるとみられており、ラテン・アメリカを除く世界の全ての巨大ビールメーカーが中国に進 出している。
食生活の向上は動物性蛋白質の摂取量などの定量的な面だけでは捉えにくい面もある。例えば高 級食材である海老、蟹、くらげ、その他の高級魚介類も中国の中・高級レストランで盛大に消費 されており、特に披露宴などでは金に糸目を付けずふんだんに出され、国内で高値で売れるため、 我々が輸入しようとしても高すぎて買えないものが増えている。
一般に中国では夫婦共稼ぎが普通で、しかも可処分所得が多いので、大都市住民の食事は、我々 が想像する以上に豊かである。
しかしながら中国は広く、一部の地区は自然環境が劣悪で、耕地と水資源が不足しているため、 1995年末現在、全国でなお6,500万人(総人口の約5%を占める)の衣食の問題即ち腹一杯食べる という問題が解決されていない。
中国政府は貧困扶助の政策により、今世紀末までにこの人々の衣食の問題を基本的に解決すべく 努力している。総じて現状では、中国に於いては未だ都市と農村の消費パターンの乖離が大きい。 (詳細は図表を参照してください)
中国政府は食料の増産に懸命の努力を続けているが、これは中国の産業政策として外資への対応 にも現れている。中国は既に外資に対して選別して導入を始めており、大型、ハイテク、インフ ラ、内陸部への投資を歓迎しているが、特に農業関係への投資を強く希望しており、種々の優遇 策を採ると言っている。
率先して中国の飼料市場に参入したタイのチャラン・ポカパン・グループは、現在この市場で10 %のSHAREを占めているが、華僑に続き米国の穀物メジャーであるコンチネンタルも進出し、カー ギルも昨年5月に8,000万ドルを投資して、とうもろこしと綿実油の加工事業を進めることになっ た。その他ユニレバー、コカコーラ、ネッスルなど世界の巨大企業も既に進出している。
日本も製油、製粉、精米、製菓、乳業、醤油やビールの生産、養鶏/ブロイラー処理を含め、各 種食品メーカーが中国に進出しており、当初は製品の日本向け輸出を目的とした企業が多かった が、近年製品の中国に於ける販売を目的とした進出企業も多くなっている。
先般訪中した官民ミッションの「中国東北部投資・産業開発考察団」も吉林省、黒竜江省を訪問 し、各種の具体的な提案を行った。中国の農業生産計画によると、「九・五」期に農業分野の外 資利用は62億ドルを見込んでおり、外資にとっても大きなビジネス・チャンスである。
中国の食用油といえば、少し前まではあまり精製されていない薄茶色の多少酸化した油が一般的 で、日本人などが始めて訪中し、特に内陸部に行った時など、この油を食べてお腹の調子が悪く なる人がいたものである。それが現在では未だ日本ほどではないにしても精製された新鮮な油が 普及し、サラダ・オイルなども消費されるようになった。
小麦粉の場合でも、従来は3種類ぐらいの等級しかなく、パン、ケーキ、即席麺など多様化し高 度化するNEEDSに対応出来なくなり、一部輸入小麦粉に頼っていたが、外資のMILLが進出するこ とによって、10種類ぐらいの等級の製品が出来るようになっている。
米にしても、従来精米技術が悪いため夾雑物や破砕粒が多く、保管の問題もありあまり美味しく なかったが、佐竹製作所などが高性能の機械・精米技術を持ち込み、5kgぐらいの小袋入りの包 装にしてスーパーなどで売出しており、売行き好調である。タイの香米なども輸入され、小袋入 りで売られている。
その他日本企業も、ロッテのパイなど種々の菓子類、また即席麺、ソフト・クリーム、コーヒー など多種多様な製品を生産し、販売拡大に乗り出している。これらによる食生活の変化は、ここ 数年特に急速で、劇的とも言えるものであり、古い中国を知る者にとっては隔世の感がある。
筆者は昨年9月に大連、煙台、威海などに進出している日本企業を歴訪する機会があったが、現 在は製品の日本向け輸出が中心であるが、日本の消費者向けの付加価値の高い製品が中国でも売 れるようになったので、内販を本格的に検討したいという企業が多かった。
以上の如く、日本を含む外国投資企業は、先進的技術を駆使して各種各様の食料を生産しており、 これらのグレードの高い食料は今後一層ハイピッチで増産されると思われる。但し、中国では現 状先進国に比較してインフラの未整備その他種々の原因で、鮮度管理が難しく、原料が安定的に 確保しにくい、品質管理が徹底しにくいなどの問題がある。
これらの問題点は中国政府も良く知っていて、現代化された高性能の港湾・倉庫・鉄道を改造、 建設し、一級公路、バラ輸送や冷蔵輸送などの物流施設を建設し、卸売市場・大型小売店・チェ ーンストアなど商流を整備すべく懸命に努力しており、外資に対しても協力を要請している。中 国の市場経済化と対外開放の一層の進展に伴い、これらの問題も多少時間は要するものの、徐々 に解決されていくであろう。
4.食料供給の展望:
白書は中・長期の食糧需給に付き下記のように予想している。 人口 一人当たり食糧 食糧総需要量 2000年 13億人 385kg 5億トン 2010年 14億人 390kg 5億5千万トン 2030年 16億人 400kg 6億4千万トン
この総需要量が生産出来るかどうかが今議論の的になっている。白書でも述べているが、中国国 家行政学院常務副院長の桂先生から直接詳細伺ったところでは、人口は2030年頃16億人でPEAK OUTし、食糧は最大6億8千万トン生産可能とのお話であった。しかし、これは全ての計画が極めて 順調に達成されなければ困難な高い目標と考えられる。
筆者は寧ろ白書にある2030年に人口がPEAKに達した時、一人当たり400kgの食糧の内、主食が200 kg余りで、残りは動物性食品に変わり、食事の内容が向上するという部分に注目したい。400kg の食糧の内、主食が200kg余りで、その他は飼料食糧、その他醸造用、食品加工用に使用される のであろうが、中国には食糧に依らないで動物性食品を生産する潜在力が大きいことを重視すべ きであろう。
中国では、水域、草原、山地資源が豊富で、政府の強力な施策の下、養殖・放牧・栽培などに依 り食料生産を発展させ、水産物、肉類、卵、果物、野菜を増産し、多種多様な食料の供給を大幅 に増やしていくことが出来る。また、非耕地資源を利用して果物や野菜の栽培を発展させること が出来る。即ち、先程の中国農業発展報告‘96などの図表にある各種副食品の総生産量の大幅 な上昇のトレンドは、今後とも続く公算が大きい。
また、中国の農村の労働人口は4億人で、その内1億人強が余剰とのことであり、これらの人々が 都市で職を求めることは社会的混乱を招くことにもなる。そのためもあり、中国政府はこの豊富 な労働力を上記の食料増産に結び付け、食料の付加価値を高めようと計画し、努力している。正 に一挙両得の政策と言え、この労働力が安易に他の工業に向かわないように指導している。
次に、中国は一人当たりの一日の平均供給熱量が2,727kcalに達したが、これはほぼPEAKみて良 いのではないか。筆者の経験であるが、1960年代に北京の新僑飯店に長期滞在していたことがあ り、春節の際食堂で餃子の予約があった。筆者も含め日本人は大体15個ぐらい頼んだが、若い女 性の服務員がそれでは少ないという。
筆者はその服務員に「では、貴女は幾つぐらい食べるのか」と尋ねたところ30個という。些か驚 いて今度は若い男性の服務員に尋ねたところ50個食べるというので、思わずそれは一回に食べる か聞き返したが、勿論一回にとのことであった。
また、取引先公司の方々と八達嶺などにハイキングに行くことがあったが、その際出される弁当 は、日本人には半分くらいしか食べられないような凄まじい量のものであった。その時ふと、い くら食べることしか楽しみがないとしても、これでは中国は食糧難になるのが当たり前と思った ものである。
その後現在まで、数多く訪中しているが、食べる量は徐々に少なく且つ質的に良くなってきては いるものの、現在でも日本人と比べると筆者の感じでは1.3〜1.5倍ぐらい食べているのではなか ろうか。かって日本でも「大阪の食い倒れ」という言葉があったが、中国全体が食い倒れ的傾向 があったし、今もそれは多分に残っているように思われる。
しかしながら、食物消費は一定水準に達すると安定に向かう。一般に低所得国では支出に占める 食費の割合が高いが、さすがの中国でも都市から徐々に食物支出の消費支出に占める割合が下が りつつあり、今後服装、住宅、医療、交通手段、旅行、娯楽などの支出が増えていくであろう。
最近の北京週報によれば、昨年上半期の都市住民の食料購入の一人当たり月平均支出は150元で、 食料の支出が消費支出に占める比率は一昨年の50.5%から49.8%に下がり、遂に50%を割った。 それに比べ服装、教育の支出が増え、医療、保険、交通、通信の支出は高い伸びを示したという。
現状都市と農村の格差は未だ大きいことを認識しなければならないが、同時に食事の構成が改善 されつつあり、食料品の消費パターンの変化は、徐々に沿海大都市から沿海地区へ、更に内陸の 農村地帯へと波及し始めており、食物構成は長期的には全中国で中カロリー、高蛋白、低脂肪が 実現し、美味しくて、新鮮で、栄養があり、付加価値の高い食料が普及しているであろう。
これらの食料は新鮮或いは高度加工され、生産・加工・保管・流通の過程は現代化され、ロスは MINIMIZEされると考えられる。
加工によって籾は一般に20〜80%、小麦は40〜100%価値が増える。菜種は50〜100%、豚は30〜 50%価値が増えるが、高度加工すれば2倍以上になり、水産物は2倍以上で、野菜は加工如何で3〜 5倍になるとのことである。
現在中国の食料加工業は沿海地区で急速、好調な発展をみせているが、内陸部では依然として原 料や一次加工品のままであり、食料加工は非常に大きな潜在力があり、今後最も重視すべき産業 の一つであろう。
現在中国では都市化が急速に進み、流動人口が増え、生活のテンポが速くなっているため、食料 の加工製品の数量、品質、種類、品位に対してより多くの、より高い要求が出されるようになり、 これが食料製品の市場拡大につながっている。
今中国では農業産業化が高まりつつあり、生産・供給・販売の一貫化、商業・工業・農業の一体 化が次第に伝統的な農業を変えつつある。食料加工業は比較的投資が少なくてすみ、速く効果が 上がるので、中国で急速に発展しつつある。
中国の食糧生産の上昇は緩慢で、需給がタイトであるが、それを補うように副食品の生産が急速 に上昇していることは貿易面にも現れている。1995年の日本の対中食料輸入は、1994年と変らず 47.7億ドルであった。しかしながら、これは1995年には中国のとうもろこしなどの輸出停止があ り、食糧の輸入は大幅に減っているので、この分を補って副食品の輸入が大幅に増えたことを示 している。
例えばブロイラーは対前年比50.6%増、加工食品特に肉・魚介類の調製品が35%増、野菜・果実 の調整品が24%増、生鮮・冷凍野菜も増えた。また大蔵省の通関統計(速報)によると、昨年1〜 9月の日中貿は、一昨年同期比26.1%増え、同期間としては過去最高となったが、食料の輸入も25 〜30%伸びている。
とうもろこしの輸入は今のところ未だ再開されていないので、これも副食品の輸入が大幅に増え ていることを示している。
最近国家食糧備蓄局の李副局長が明らかにしたところでは、昨年中国の食糧市場の状況は良く、 生産量は増加し、食糧価格は安定し、中には下がるものもあり、需給は緩和に向かっているとの ことである。
北部〜中部地帯で大規模な洪水が発生したが、全体的には豊作で、昨年の食糧総生産は四億八千 万トンに達し、一昨年より千三百五十万トンの増産となった由。
また、国が700万トンの輸入を手配したので、供給総量は四億八千七百万トンになるが、総消費量 は四億七千万トンで、均衡してなお余りあり、昨年九月末現在、全国の食糧の総在庫は、一昨年 同期より三千百万トン多い一億二千八百四十万トンとのことである。
中国は食糧以外にも食肉、魚介類、食用油、大豆粕その他各種の副食品原料を相当量輸入してい るが、大量の食料製品も輸出しており、今後とも豊かな食生活を目指して、これらの合理的輸出 入を進めるであろう。
筆者は、白書が最後に述べている「実践は世界に向かって中国人民が自らを養えるだけでなく、 生活の質を年々高めていくことを証明するであろう」という言葉を信じている。 以上