私が高校生の時に、生徒会が発行した雑誌(といっても年1回ですが)に掲載した一文です。
読み返してみると少々気取ったところ、舌足らず、論述の飛躍などがありますが、その当時の記録として残しておきたいと思います。どうぞご覧ください。
原稿は見開き2ページに収めるためにかなり窮屈な配置になっています。掲載に当たっては小見出しを付け、改行を入れました。
山登り
ここで「登山」とはいわずに「山登り」といぅのは登山、ハイキソグ、ピクニックなどを含む広い意味に用いるためである。
「山登り」の言葉から僕は第一に、切り立った岩をザイルを使って登って行く場面を想像する。一口に「山登り」と言っても、昨年のビッグ・ニュースの一つのエヴェレスト征服のような大規模なものから、市電の布引停留所から往復一時間もかからない布引の滝へ
行って来るのも「山登り」である。
山登りにはいろんな目的がある。山の動植物の研究、鉱物、岩石に関する研究、地形観察、地図の読み方の練習、鍛練のため、自然美の観賞、写生、レクリエィションなどと算え上げると際限はない。
登山の目的が何であったにしても、山登りは我々の心を新鮮にしてくれる。息をはづませて登る途中ふとふり返って眼下にひらける景色を眺め、或は山また山の雄大な光景をながめる時、山には大きな魅力があり、流れに足をひたして疲れを休めている時、ふいにき
じがしげみから舞い上ったり、岩の裂け目から湧き出る冷い水の中に小魚を発見した時、山は我々に驚きを与えてくれる。木蔭で静かに空想を描く時、数人の友人と頂上の征服を行った時、山はよろこびを与えてくれる。
この山登りにはいろいろな制約がある。登山者の健康状態には影響を受けやすい。我々は学生であると言う条件からも制約を受けることになる。夏休みなどの長期の休日以外の山登りは大抵の場合に日帰旅行、しかも月確日の授菜にさしつかえないように……と考え
ていくと神戸の中央から約三十粁内外-だいたい六甲山を中心とした方面」ということになる。あまり慾張って遠方へ足を運んでは、山登りの楽しみよりも疲労の方が大きくなってしまう。
どんなものが山登りに必要か-これは一口には答えられない。場合によって違って来るのほ当然であるが、前にあげた範囲内では次のようなものが必要であろう。(これらは是非必要なものというのではなく、持って行った方が便利だという程度である)
(一)地図、磁石-神戸近郊では道に迷うことはまずないが、地図を参照しながら山の名を調べたり、地図上で今から行こうとする先をいろいろと想像するのは山登りの楽しみの一つに数えられる。磁石は地図とともに用いることによってその効果は一層大きくなる。
(二〕水筒-山頂で食事をするしないにかかわらず、一口の水は疲れた身体に大きな力を与えてくれる。たいていの山の頂上には飲料水のないのが普通であるから、高い山には是非必要となる。
(三)救急薬品-包帯、ガーゼ、絆創膏、消毒薬、ヨードチンキ頭痛薬等-万一のために用意をして行くことが必要。
(四)その他-新聞紙、マッチ、手拭、風呂敷、針、糸、望遠鏡
これらのものや食糧はあまりかさばらないように、また重くないように要領よくまとめ、出来ればルックサックで背負い手には何も持たない方が身軽に行動出来る。
丹生山(たんじょうさん)
諸君には聞きなれない山の名だと思う。神戸電鉄箕谷駅下車、衡原(つくはら)行きの市バスに乗り換えて西に約一粁山田川に沿って下り、両岸のせまった間を通り、餓鬼(がき)ののど*1(一名大滝)を過ぎると川の両岸は少し開け、前方にゆるやかなスロープを見せているのが丹生山である。
標高五一五米、帝釈(たいしゃく)山(五八六米)稚子墓(ちごはか)山(五九六米)と並んで六甲山麓の西のはしに位している。箕谷から約四粁丹生神社前下車、東に六甲の山なみをながめながら爪先上りの道を北に進む。頂上には丹生神社があり、毎年五月の祭はにぎやかで奉納相撲などが行なわれるが普段の日にはあまり登らない。
山腹で参道は表参道と表参道に分かれる。表参道は裏参道よりも勾配がきついけれども見はらしは立派で、一歩上るたびに視界がひらけて来る。以前は森が深く展望には都合が悪かったが数年前山火事のため山頂の一部を残して裸になってしまったので視界は以前にくらべるとずっとよくなっている。
山頂での展望は特に西の方がよい、播磨平野の各所にある溜池は銀白に光っている。その先は瀬戸内海を渡り四国山脈で空とつながり、その空は北の方では中国山脈に溶け込んでいる。ふもとに目を移すと田圃の中には部落の点在するありさまが手にとるように見え
田圃はいろんな形にあぜで区切られている。(点在する部落の一つに僕の家が発見出来る。)
空は高く、綿雲がぽっかり浮んでいる。山の空気には新鮮な味がある。山の姿は我々を招いている。
ドイツのワンダー・フォーゲルは次のような事柄を我々に示した
「日光を浴びよ。自然に親しめ。浩然の気を養え。民謡を唄え。伝説を取り戻せ。祖国の地理を知れ。祖国の土に芽ぐむ魂を思え。協力せよ。団結せよ。」
*1 のど 口(くちへん)に益 第4水準、区画点:2-4-21、UTF-8:E5 97 8C
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