コスモスがとても好きだと思う。それをどうしても堂々と言えないでいる。
「好きな花は」と問われて、戸惑ってしまうのは、私にはどうしてもコスモスみたいな花が似合わないから。
目鼻立ちがはっきりとしていて、肌の色調も強く、どちらかといえば派手な見た目。自分の容姿を嫌だと思ったことはない。ただ、ハイビスカスみたいな大柄な花が似合うと言われ続けて食傷気味になっているだけ。
涼やかな秋、繊細な茎と葉の上にたおやかに、鮮明に浮かび上がるコスモス。こんな花が似合う女性って、どんなひとだろうと思い浮かべてみる。色白で長い黒髪の。線の細いもの静かなひと。私とは正反対だなあと、軽く溜息をつく。
そう、例えば友達の清香(サヤカ)だ。少女小説に出てきそうな、ふわふわした女の子で、高校の頃ずっとあこがれていた先輩の心をつかんだ。それがみんなの噂になって、先輩のファンの女の子たちに白い目で見られた時は、普段からは想像もつかないような凛とした態度で泣き言ひとつ言わなかった。そんな芯の強さも、まるで細い茎を風に任せながらも、しっかりと咲いているコスモスみたいだった。
あの先輩、わたしはそれほど熱をあげていなかったけど、確かに素敵な人だった。清香を眺めながら、わたしには無理だなあと思うと、なんだかとても羨ましかった。
夏の過ぎたセンチメンタルな空の下。わたしは、コスモスの咲きほこる花壇の脇道でなんとなく、立ち止まる。妙に後ろめたい気持ちでゆっくり眺めることができず、すぐに立ち去ろうとする。まるで自分が、狂い咲きした夏の花みたいに、この花たちになじめないような、そんな気がした。
「コスモスなんか眺めちゃって、どうしたの?」
つきあい始めたばかりの彼が、わたしに声をかける。
「うん?綺麗だなと思って」
彼の顔も見ずに、小さく呟く。
「なあんだあ?柄にもなく」
軽く笑ってちゃかす彼。清香の彼みたいな優しい好青年とは違うけど、甘ったれで不器用な、可愛い彼氏。わたしには、お似合いだと思う。
「わたしだって、花くらい見るわよ」
わたしも笑って言ったけど、なんだか少し情けなかった。
コスモスを好きだと思う。決してかなわぬ、片思いでもしているように。