青い気持ち。

著: 音露

少女は一人で泣いていた。
青く薄汚れたスカート。部屋の壁は真っ青に塗られ、ペンキの匂いが切なかった。
「青い気持ちが私を救ってくれた、でも青い気持ちは私を突き落とす・・・・」
(結局のところ私は・・・・私は?何?
私はリル。でも私は名前じゃないわ。容姿や性格でもない。でも、「私」はここにいる。。。・・・?)

少女は静かに音も無く泣く。涙だけが光の消えた瞳から流れていく。

 

「ガチャッ」
あぁ・・・・母さんだ。私の「青」を汚した母さん。

「っ・・・!アンタ何やってんのよ!!」
(ああ、やっぱり怒られた。・・・でもあんたの顔は真っ赤よ。笑っちゃうわね)
「バッカじゃないの。」
母は私をあざけ笑うようにしてすぐ出てってしまった。

(せっかく静かだったのに。あぁまたイライラする)
 「家中そんなことしたら今度は殺すわよ」
台所のほうで母さんの声が響く。
(何言ってるの?私はもうあなたに殺されているわ。何度も、何度も私の心を。)

「青い気持ち」まで変えてしまった、私が憎い。

私は無機質なアルミのパイプベッドに突っ伏した。異世界に飲み込まれるようで、
現実から離れる一瞬が、そこにはあった。

「青」は私にとって特別だった。
数年前までの私の感情は全て青で表現できるぐらいだ。
空のように晴れ渡り、青い絵の具のように一点の汚れも無かった。それが私を救ってくれていた青。
それは空に雲が出て、絵の具がほかの色に殺される前の話。
父のネクタイ、母の化粧品。
暗くて、陰湿で、見ている私は首を締め付けられそうだった。
私はもういいから「青」まで殺さないで。

 

私が目覚めたのはいつも見る天井と違っていた。
分からないけど素敵。何も無くて。ヒステリーの母 意地汚い父には到底見せたくない色。
また汚されてしまうもの。
でも、死にたくなる。切なくなる。素敵なのにゾッとする。最近感じる青みたいだった。

「どーせ死ぬなんて出来ないんじゃない?」
              高い女の人の声が何処からか聞こえる。
「逃げてるのよ」「自分で悲しい子ちゃん演じてんのよ」
              自分の言いたいこといいまくりである。
(えっ?なに?何処?あなたは何を知ってるの?私の青い気持ち。分かるの?どうしようもない青。
 自分で汚してしまった私の青い気持ち。)

"大好きだけれど憎くてたまらない「青」"

「分かるわよ。あなたの気持ちぐらい。私はあなたの青だもの」
(あぁ、もうよく分かんない。思っただけであなたは答えてくれる。なぜ?私の青があなた?なにそれ。)
「人間て誰だって根は暗いし、ドロドロした人もいるわ。
 弱い人はそこですぐ死ぬし、ストレスや気持ちが自然と不幸を呼び寄せてる。
 あなたは青い気持ちを手に入れた。強くなれた気がした。でも頼りすぎだわ。どんどんぬかるみにはまる。」

「ちょっと待ってよ。言いたい事だけ言わないで。
 私だって気違いじゃないんだから傷つくし、やる事わかる。幼稚園児じゃないのよ!」

(あれ?何言ってんのか分かんない。日頃の愚痴。不満を吐き出しただけじゃない。)

「なんだ元気なんじゃない。」
「・・・・え・・あの・・・御免なさい。あなたに言ったんじゃないの。母と重なって見てしまった所があって。」

「でも、うん。よく言えました。」
私は目が点。何を言われているのかさっぱり分からなかった。

「えらいね。自分の心開けたじゃない。こうして欲しいって言えたじゃない。
 心にためて青にばっかりなすりつけてたのに。」
「青に・・・・?」
「さっきも言ったでしょ。あなたは私に頼りすぎ。あなたは私をすごく愛してくれていた。
それはすごく嬉しい。でも自分の心まで青く塗りたくってしまった。あなたの仕方はどこかで間違ってしまったのよ。はっきり言ってしまうと、あなたの愛は感情は「青」に重すぎたのよ。
青い気持ちを乱用しないで。少しずつねっ。使い方次第でどーにでもなってしまうデリケートな色よ。」

声は優しく遠のき、暖かい空気だけがまだ私を包んでいた。

青に頼りすぎた。青の気持ちを使いすぎて疲れてしまった。青い気持ちまで濁してしまった。
それが私? 私。 うん。分かったもの。

私は透き通った青い海。
空のように雲が出る事もなく、絵の具のようにほかの色にも殺されない。
最初で最後。きっと一生に一度の【本当の青い気持ち】が私に押し寄せた。

 

少女の青い気持ちはこれで最後。
初めて少女の頬にピンクが差した。
もう青い気持ちじゃない。楽しい。嬉しい。悲しい。寂しい。全部言える。

FIN


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