遠山の金さん番外編 花泥棒と緋牡丹お竜

丸出美帆子

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 音楽:チャラリ〜 ドドン!
 タイトルロール「遠山の金さん番外編 花泥棒と緋牡丹お竜」
 緋牡丹お竜カメラ目線、チャキッ!
 音楽:和風テーマ曲
 江戸の町中風景。人が行き交う道をカメラが追う。茶店では町人が団子を食べている。その中の女の花かんざしクローズアップ。
 賭場。盛り上がってるところ。キセルを吸いながらひかえている緋牡丹お竜。賭場を背景に、左斜め後ろ45°から緋牡丹お竜のアップ。(さりげなく花かんざしが光る。)

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 草履の音。足もとアップ。
 緋牡丹お竜が町を歩いている。呉服屋の旦那と通りすがりに出会う。

呉服屋の旦那 「いやぁ、お竜。景気はどうだい。」

お竜 「いやだねえ旦那さん。最近来ないくせに。」

呉服屋の旦那 「いやあ、お竜にかかっちゃかなわねぇなぁ。うちも近頃商売あがったりでねえ。こないだは盗人にも入られちまったし。ま、そのうち顔を出すよ。」

お竜 「そんなこといって、またなかなか来ないんでしょう。まあいいわ。旦那にはいつも良くしてもらってるからね。」

呉服屋の旦那 「じゃあまたな」

 ふたり別れる。賭場に戻ってくる緋牡丹お竜をカメラ追う。

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 座敷。みんな一服中。

お竜 「やあみんな、調子はどうだい?」

サブ 「いやあ、どうもこうもありませんよ。それよりお竜さん、最近不況のせいで盗っ人が増えてるそうじゃないですか。中には数珠やらかんざしやらコレクターのような盗っ人もいるそうですぜ。」

お竜 「あぁ、呉服屋の旦那も盗人に入られたってさっき聞いたばかりだよ。まったく物騒な世の中だねぇ。」

タク 「そういや、お竜さんのかんざしと言えば、代々伝わる柴又南齋(しばまたなんさい)、の逸品で、巷じゃ随分値がはるそうじゃないですか。気を付けたほうが良いんじゃないですかい?」

お竜 「そうだねえ。ま、あたしにゃあ関係ないことさ。ただ気に入ってるから、手放す気はさらさらないけどね。」

サブ 「それでこそお竜さんだっ!」

お竜 「馬鹿なことお言いでないよ。さっさと持ち場にもどんな。」

タク 「あはは、お竜さんにかかっちゃかなわねぇなぁ。じゃあさっきの勝負の続きをしようぜ。」

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 その日の夜、緋牡丹お竜が自分の部屋でキセルを吸いながら考えごとをしている。

お竜モノローグ
「確かに最近、役人が騒いでいるようだねぇ。呉服屋の旦那も被害があったってゆうし、あたしも気をつけないといけないねえ。」

 お竜溜息をつく。キセルをしまい部屋を出ていく。賭場の方が盛り上がっている声が聞こえる。

お竜「ちょっと様子でも見に行こうかね。」

 お竜賭場に行く。

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 賭場に入ったお竜は、真中辺りのサブの横に座る。

お竜「なんだい随分もりあがっているようだねえ。」

サブ「そうなんすよ、お竜さん。こいつが久しぶりに勝っちまって。」

お竜「おや、豆腐屋の旦那じゃないか。久しぶりに来たと思ったら勝っちまったのかい?」

豆腐屋の旦那「いやあ、はっはっは。なんだか調子が良くてねえ。」

お竜「そうかい。じゃあうちが困らない程度に楽しんでいっておくれよ。」

遊び人の金さん「おうお竜さんじゃねえか。こいつどうにかしてくれよ。全然勝てねーんですよ。」

タク「いやあお竜さん、こいつが弱いくせに思い上がってるんですよ。」

お竜「そうだねえ、あんたは以前から無茶な賭け方しかしないからねえ。」

遊び人の金さん「そんなこと言わねえでくだせえな。あっしだってちったぁ考えてるんですぜ」

タク「おいおい、そうだったのかい?こりゃそうとうな馬鹿だなぁ」

お竜「ほらほら、タクもその位にしてやりなよ。」

遊び人の金さん「ったく、お竜さんにかかっちゃかなわねえなあ。」

お竜「そんな上手いこと言ってないで、しっかりしとくれよ。それじゃあね。今日はサブが此処に出てるからなにかあったらいっとくれよ。」

 お竜サブの後ろに回って何かを言う。お竜&サブ ズームアップ。

お竜「くれぐれも役人とコソドロには気を付けとくれよ。」

サブ「あぁ。そうですね。最近じゃあ役人もうるさいし泥棒も増えてるから気を付けねぇと。まぁ、俺に任せて下さいよ。逃げ口の場所もしっかり覚えてますから。ヘマぁしませんよ。」

 お竜うなずいて奥の部屋に入る。

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 お竜、炉付きの机に座って帳簿を付けている。溜息をつく。
 三日月がきれいに光っている。(時間がたったって感じ。)お竜は座ってキセルを吸っている。
 サブが部屋のふすまを勢いよく開ける。

サブ「てぇへんだ!サツの手入れだ!お竜さん、早く逃げてくだせぇ!」

 お竜、帳簿など大切な物を掛け軸の裏の金庫にしまってから賭場の方へ行く。

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サブの仕切りでお客が壁際の回転扉から逃げている。もうほとんどの客が逃げ終わっていてサブが一番後ろからせきたてている。

サブ「お竜さん、こっちはオッケーですぜ。」

お竜「そうかい?それならいいけど、そろそろやばいよ、急ぎな。」

サブ「はい!お竜さんも先に、どうぞ。」

お竜「あぁ、回転扉、ちゃんと閉じるんだよ。」

 お竜、回転扉から外へ出る。サブも後から出て、扉を閉じる。

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 回転扉の外は、人には知られない裏道で、お客や従業員はあわただしくそこを抜けて行く。お竜、その様子を見守っている。お竜がその場所を動こうとした瞬間、後ろから聞きなれない声が聞こえる。

聞きなれない声 「待ちな!緋牡丹お竜!」

 お竜のただならぬ顔 アップ。

聞きなれない声 「あんたのその柴又南斎の花かんざし、この花泥棒の猪鹿お蝶がいただくよ!」

 お竜、振り返って一歩踏み出す。

お竜 「どこのどいつか知らないがぁ、この緋牡丹お竜を、甘く見てもらっちゃぁ困るんだよ。そんなに易々と奪われてなるもんですか!」

お蝶 「だまれ!ともかくその花かんざしはいただくよ。」

 ピ〜ピ〜 御用!御用! 岡引がやってきたようだ。

お蝶 「ちっ。どうやら長話がすぎたようだね。また必ずくるからね。…その花かんざしはあたしが絶対頂く!」

 お蝶は屋根から屋根へと飛び移り、あっという間に去っていった。お竜はそれをただみていた。

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次の日、賭場は花泥棒の噂で大騒ぎになっている。そこにお竜登場。
呉服屋の旦那「お竜、ついにおまえさんの所にもでたってねぇ。それで、かんざしは無事だったのかい?」

お竜 「あぁ、旦那じゃないか。かんざしはこのとおり無事さ。岡引がうちにきたおかげでね。あたしとした事が岡引に借りができちまったよ。」

呉服屋の旦那 「いやぁ、何言ってるんだよ。あんたとかんざしが無事なら良かったじゃないか。それより、どうせまた来るんだろう?用心しとけよ。奴にはうちも何回かやられてるんだ。なぜか奴は花が好きでな、前も特上花紋様の着物が入った時にさんざんやられたんだよ。夜に盗みに入ってな、後には必ず蝶と花の絵が書いてあるカードが置いてあるんだが、おまえさんのかんざしはいつもおまえさんが身に付けてるから、いつものように行かなかったんだなぁ。」

 呉服屋の旦那、溜息をついて立ち上がりながら。

呉服屋の旦那 「まぁ、なんにしても気をつけなよ。盗まれてから後悔しても遅いんだから。」

お竜 「おや、旦那っってばあたしがそんな間抜けだと思ってるのかい?」

呉服屋の旦那 「あっはっは。ったくお竜にかかっちゃかなわねぇなぁ。」

 みんなが笑って賭場がちょっと明るい雰囲気になる。呉服屋の旦那以外は仕事に戻る。呉服屋の旦那、お竜の肩に手をやってまた話し始める。

呉服屋の旦那 「だが、本当に気を付けなよ。お蝶の花好きは本物なんだ。またいつここにやって来るかわからねぇ。いくらあんたでも油断はならねえよ。」

お竜 「あぁ、わかった。悪いね、心配かけちまって。」


つづき