束になってつながれた風船は、こんもりとした実りのように、宙に浮かんでいる。何人ものこどもたちが、目を輝かせながら背伸びをして、「あれあれ」とお気に入りの風船を指さしている。
昔ながらの、赤や青や緑のカラフルなゴム風船。そしてアルミのメタリックバルーンには、人気のキャラクターがプリントしてある。わたしが小さい頃もお祭りで見かけた。たしかゴム風船より少し高級だったけど、その分メタリックバルーンのほうが長持ちをするのだ。でも、やっぱりわたしが好きなのは、ゴム風船だった。たまごを逆さにしたような形が可愛くていい。
「わあ、いいなあ」
広場の様子を眺めながら、わたしはひとりごとのように呟いた。
「もらいに行こうか?」
そう言ったのは、手をつないで隣を歩いている彼だった。いたずらっぽくわたしを見下ろしている。わたしは首を横にふって笑いながらこたえた。
「いいよ、さすがにこどもに混ざってもらえないよ」
言いながら、いつのまに大人なってしまったのかと、少し寂しく思う。
最後に風船で遊んだのは、いったいいつのことだろう。
初めての風船は、細い糸の先でふわふわと、宙に揺れるのが楽しくて。わたしは風船をひっぱって走りまわった。けれど、息を切らせ足を止めたそのすきに、風船はあっけなく手から離れて、空へと昇った。高い高い青さへと、ぽつんと鮮やかな点となって、わたしを置いて軽やかに遠ざかった。
手を離した愚かさを悔い、飛んでゆけない自分の重さが憎かった。
もう二度と、離さない。泣き出しそうになりながら、そう思った。
二度目に手にした風船は、細い糸をにぎりしめて、ゆっくりゆっくり歩いて眺めた。頼りない感触に切なくなっては、糸をたぐって引きよせた。目の前まで引き降ろし、腕に抱えた風船は、上へ上へとひたむきに浮かぼうとする。行かないで!と抱きしめたら、パチンとはじけて、ゴムの切れ端になった。
空へ離したほうが、まだ良かった。
晴れの日の広場で、束になってつながれた風船を、わたしはもう手にしようとはしない。けれど、彼と手をつないで歩くわたしは、それほど大人になったわけでもない。
今も少女だったあの頃と同じ。彼の自由を、ちょっとだけ、ずっと長く…
手の中につないでいたい。