*** 序 ***
「あなたって、なんなの?」
今にも泣きだしそうな顔をして、そうわたしにたずねたのは、ほかでもないわたしだった。それでわたしは考えた。名前とか住所とか、そんなもので、答えになるのかしら。わたしという存在は、そんなことで証明できるの?信じられるの?わたしという存在、ここという場所。大きな宇宙の一点でしかないちっぽけなわたし。
なんだかわたしは、疲れている。「只生きる」ことに疲れている。わたしの存在ってなんだろう。わたし何をしたくて生きてるんだろう。そんなことすらわからずに、空腹を満たしたり、呼吸することさえめんどうに感じられる時がある。ましてや、日常にさしせまるたくさんの悩み。それと戦う意味が、わからなくなる。
わたしは旅に出ようと思う。夜、誰も知らないところへひとりで出かけよう。まるで吟遊詩人のように、疑問ばかり記された詩(うた)を抱いて、魂の底の眠りの奥で、ゆっくり考えよう。ここからは遠い、わたしだけの国で。