■ 第46回全国大会予稿集(OA学会誌『オフィス・オートメーション』)
OA学会全国大会で発表した、音楽サイトのWEBマーケティング戦略における情報デザインの研究報告です。 : keywords = eマーケティング,WEBマーケティング,情報デザイン,eミュージック,チャネルアンドメディアミックス,e音楽
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eミュージックにおけるチャネルアンド
メディアミックス志向の情報デザインの実験
An Experiment of the Channel and Media Mix Oriented
Design of Information for E-Music
1.はじめに
eコマース・サイトでは,オペレーション・フローでクリック回数が増える程来訪客が面倒臭がって途中で操作を止めてしまい,販売にまで到達し得ないとよく言われる.この仮説は既に常識と言えるものであるが,実証的な検証抜きの論説は評論ではあっても実証科学ではないため,本稿ではこの現象に対する実証的な検証を行うことを目的とする.今回の本稿の目的自体は前述のものであるが,その先を俯瞰する目的はeコマースのためのオペレーション・フローを考慮してのより良き情報デザインのモデル化である.この背景としては,新製品開発型の新規ベンチャー企業が小売り市場で直面する,知名度不足や販売網未整備による問題をチャネルアンドメディアミックス型マーケティング・アプローチでどこまで克服可能かという点に筆者の問題意識はある.
観察対象としては,インディーズ・レーベル・Trade Winds music所属の筆者のロックバンド・
STATISTICSの公式WEBサイトを用いた.自分が運営するサイトを用いた理由は,画面毎のアクセス数や画面間の動きは企業機密であって他サイトの情報は開示されていないという操作可能性の観点からのものである.
STATISTICSは,社会人としての本業と両立させるべくライブを十分にはこなせない「二足の草鞋」バンド特有の時間的制約を克服するべく,eスキルをコアコンピタンスに定めたネット・プロモーションを試みてきた.拙稿(2002)では音楽業界全般の音楽配信の現状の概観を述べた上で,
STATISTICS Official WEB Pageで試みたeミュージック・マーケティングの中間状況報告を行ったが,本稿は,
STATISTICS Official WEB Pageで試みた,チャネルアンドメディアミックス(=クリックアンドモルタル)志向の「eスペースのWEBサイトからリアルスペースの実店舗への顧客誘導」の情報デザインの検証を行うという位置づけでもある.なお,本稿ではWEBサイトへのアクセス向上で苦しむ状況は既に脱した状況を前提としている.
STATISTICS Official WEB Pageは200アクセス/日以上,2003年1月現在累計13万アクセスのアクセスがあってアクセス不足問題を解決済みである.
なお本稿は余暇時間を用いた私的研究であり,筆者所属の企業,レーベル,バンド他全ての筆者関係組織や個人は本稿の内容に関して免責である.
STYLE="margin:0.00mm 0.00mm 0.00mm 4.94mm;text-indent:-4.94mm"(1)
音楽配信(無料試聴)画面から取り寄せ可能なCD小売店を紹介する
CD購入案内画面までの横飛び機能を設けたこと
(2)
CD購入案内画面からは
注文票画面を呼び出すことができ,この注文票をプリントアウトしてCD小売り店舗に持っていけば容易に取り寄せ注文を行えるようにしたこと
(3) 上記(1)及び(2)を実現するためのリンクは1箇所に留めず各画面で数カ所に設けたこと
の3点である.横飛び機能とは,階層構造の上位画面に戻ることなく並立する下位階層間で画面移動が行える機能である.クリック回数増加によるHP来訪客離れを避けるため,
試聴画面から
注文票画面まで2回のクリックで辿り着けるようにしたと同時に,店頭にCDを置いて貰えないバンドのCDを購入していただくための顧客誘導上の分かり易さを狙ったのが,横飛び機能も用いての図表1の画面構成なのである.本稿で検証する効果は,この情報デザインが設計者(=筆者)の意図どおりにHP来訪客を音楽配信画面から
注文票画面に誘導してくれるか否かである.
3.実験計画
4.実証分析結果
前節の実験計画に基づく実証分析結果を示したのが図表2である.観測期間における
音楽配信画面の総アクセス数は6,743アクセス(156.8アクセス/日)であり,
CD購入案内画面アクセス数は1,242アクセス(28.9アクセス/日),その内で
音楽配信画面からのアクセス数は349アクセス(8.1アクセス/日)であった.
注文票画面へのアクセス数は34アクセス(0.8アクセス/日),この内
CD購入案内画面からのアクセス数は32アクセス(0.7アクセス/日)であった.
誘導率を見てみると,
音楽配信画面から
CD購入案内画面への誘導率は5.18%であり,有意水準95%での信頼区間は4.65%〜5.70%であった.
CD購入案内画面から
注文票画面への誘導率は2.58%であり,有意水準95%での信頼区間は1.70%〜3.46%であった.この両指標を掛け合わせて
音楽配信画面から
注文票までの誘導率を求めれば0.13%であり,有意水準95%での信頼区間は0.05%〜0.22%であった.eコマース・サイトでクリック数が増えれば増える程,来訪客がわざわざ次の画面まで辿ってくれない旨はよく言われることであるが,当結果はそれを実証するものであり,誘導率というよりはむしろ残存率と評した方が実態に合っている様相さえ呈している.特に,
CD購入画面から
注文票までの誘導率が低いため,
音楽配信画面から通しての
注文票までの誘導率は約0.1%であり,純粋な0.0%ではなかったのがせめてもの救いであるという状況に等しい.
CD販売というビジネス本来の目的に則して「
注文票画面への到達」のさらにその先の最終目的の工程まで俯瞰すれば,ディストリビューター(音楽業界における卸問屋)からの追加納入注文が全く途絶えているため,
注文票をプリントアウトしてCD小売店に持って行って下さる顧客はいないことになる.言い換えればチャネルアンドメディアミックス・マーケティングで目指した「店頭までの誘導率」は0.0%である.なお,
音楽配信画面からリンクを張っている
indiesmusic.com,
HMV,
タワーレコーズの各eコマース・サイトのSTATISTICSのCD取り扱い画面への誘導率は他サイトなるが故に誘導率は実測不可能であるが,追加納入注文がないためこれらeコマース・サイトにおいても「購入までの到達率は0.0%である」旨が分かる.
5.まとめと今後の課題
本稿では,e-musicのHPにおいて,チャネルアンドメディアミックス・マーケティングに基づき,「プリントアウトして店頭に持って行けばCDの注文が可能な」
注文票画面へと誘導するオペレーション・フローを特徴とする情報デザインで挑戦しようとした試みをケースにして,「クリック回数に応じての来訪客到達率減少状況」の効果検証を行った.結果としては,「『客寄せパンダ』となる
音楽配信画面から2クリック先の
注文票画面までの誘導率」は低く,仮説としては「クリック回数が増える程面倒臭さ故に来訪客は到達しない」旨は反証されずに残り,仮説の検証としては成功したがビジネスとしての試みは失敗に終わった.
バンドの公式WEBサイト自体は1日当たり200アクセス以上,2003年1月現在で累計13万アクセスを誇る,モンスター・サイトと申しても過言ではない程の人気サイトであるため,誘導率(残存率)がどれ程低いかがよく分かる.
今後の課題としては,研究上は,今回の研究観測後既に本稿執筆時前に,
音楽配信画面から
注文票画面まで直リンクを張ることによりクリック回数を減らして1クリックで
注文票に到達可能となるHP改訂を行っており,「2クリック仕様設計」時と「1クリック仕様設計」とで「
注文票到達率」に有意な差が見られるか否かを検証したい.なお,当研究における情報デザインの模索はそれ自体が目的ではなく,デジタル財での収益モデルを確立するための手段である.また,音楽ビジネスとしては,曲を聴いていただき共感していただけるリアルスペースでの機会も増やしていく必要がある.
参考文献,参考サイトならびに参考情報
OA学会全国大会で発表した、音楽サイトのWEBマーケティング戦略における情報デザインの研究報告です。 : keywords = eマーケティング,WEBマーケティング,情報デザイン,eミュージック,チャネルアンドメディアミックス,e音楽