営業のスタイルと場のモデル」に基づく、WEB2.0における「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」の概要
An Outline for “Door-to-Door Sales Type Promotion Model Using SEM” in WEB2.0 Based on “Sales Style and Space Model”
1.はじめに
本稿ではホームページをHPと略す.また,本稿は余暇の時間を利用しての個人的研究であり,筆者のモデルや見解に対して所属会社や
NEDO等の組織は免責である.
2.営業のスタイルと場のモデル
「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」の前に,その前提となる「営業のスタイルと場のモデル」について解説を行う.このモデルは
神山(2001)で発表した当初版を,SEM等の
WEB2.0の進展に伴い
神山(2006b),
神山(2007)で発展させたものである.「営業のスタイルと場のモデル」とは,図表1に示すとおり,営業のスタイルを,小売店舗のような来客待ち型営業と,外回り営業のような訪問型営業に分けた上で,この相違は顧客がニーズを自覚するか説得されて初めてニーズに気づくかの相違であり,「場」としてはリアルスペースだけでなくeスペースでも成立するという観点から営業のスタイルと場とを分類したモデルである.そしてその分類により,営業活動を開拓済み顧客の深耕と新規顧客開拓とに分類するモデルである.ただし,例えば銀行には店舗窓口もあれば外回りの営業もあるように,特定の商品・サービスは来客待ち型営業と訪問型営業のどちらか片方だけに属するという訳ではない.
地域のマーケティングの見地からのeスペースにおいては,通常のSEMは来客待ち型営業に相当する.その理由は,企業のマーケティングの場合にはSEMに新規顧客開拓の機能もあり得るのに対して,地域のマーケティングでは顧客にプロモーションしたい対象は「地域の魅力」であるので,来訪客が他HPに行く場合も含めて,当該地域に関するキーワードを叩いてくれた段階で既に「開拓済み」であるためである.地域の知名度向上のためには,「元々知らないキーワードを叩いてくれるヒトはいない」ため,通常のSEMにより
鹿児島に関するキーワードでの来訪客だけを拾っていたのでは開拓済み顧客の深耕にしかならない.固定ファンの獲得と維持のためには開拓済み顧客の深耕も重要であるが,知名度向上のためには単なるSEMにとどまらない新規顧客開拓が必要であり,そのためのSEM版訪問型営業の技法として考案したモデルが「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」である.
3.SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル
本節では,「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」の仕組みについて解説を行う.このモデルの特徴は,前節で述べたごとく通常のSEMにより
鹿児島に関するキーワードでの来訪客だけを拾っていたのでは新規顧客開拓はできないため,
鹿児島に関しないキーワードでの来訪客に対して
鹿児島をプロモーションすることである.
もう少し具体的に
「温泉天国・鹿児島温泉紹介!」HPのオペレーション・フロー設計仕様で説明すれば,
鹿児島以外の観光スポットや温泉を紹介するサブ・ページもHP内に設けた上で,そこで
鹿児島の観光PRを行うことにより,同一HP内の
鹿児島県内紹介ページにHP来訪客を誘導するHP設計を行った.図表2で実際の画面遷移を示せば,例えば「
横浜温泉」や「
神戸観光案内」といったキーワードでの
googleや
YAHOO!経由のHP来訪客を,当該地域の観光案内のサブ・ページ画面に一旦誘導した上で,この画面で
鹿児島のプロモーションを行うことにした.これにより,
鹿児島の観光案内ページにHP来訪客を誘導するHPオペレーション・フロー設計が,「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」のポイントである.この際の誘導成功率は,自HP内のCTR(
クリック・スルー率)である.
4.効果検証
本節では,「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」のテスト・マーケティングの効果検証を行う.まずは最初に,モデルに反証可能性を持たせるべく,実験計画について述べる.
「温泉天国・鹿児島温泉紹介!」HP内の各サブ・ページへのアクセス数と「どのHPから来たか」の計測は,
CGIレンタル・サービス
ACR WEB(
http://www.ziyu.net/ 2006年10月)のアクセス解析Ver. 4.0を用いて計測した.観測期間は2006年4月1日〜同年4月30日の計30日間である.ACR WEBアクセス解析Ver. 4.0では表示行数超過分は表示されないため,月間合計を計測するのではなく,日々アクセス・ログを計測した上で1ヶ月分の分類・集計を行った.自HP内の県外紹介ページから県内紹介ページへの誘導成功率を算出した上で,「実は誘導成功率は0%だった」場合の誤差であるに過ぎないか否かの検証を,統計学の割合の検定を用いて行った.
次に観測期間30日間の計測結果について述べる.県外紹介ページのアクセス数(ページ・ビュー)は総数16,088アクセス(1日当たり536アクセス)であり,この内,相互リンク先サイトや自サイト内他ページからの移動を除いたSEMの成果としての検索サイト経由のアクセス数は13,524アクセスであった.一方,県内紹介ページのアクセス数は16,345アクセス(1日当たり545アクセス)であり,この内,県外紹介ページからの誘導成功件数は323アクセス(1日当たり10.8アクセス)であった.上述の16,088アクセスからの誘導成功率は2.01%である.この状況は,図表3のとおりである.
ここで,県外観光案内・温泉紹介ページからの 誘導成功率2.01%が「実は0%」ではない旨の仮説検定として,誘導成功率2.01%に対して有意水準0.01(信頼度99%)の片側検定で割合の検定を行うこととする.いま,
帰無仮説 H0 : p1=0.00%
対立仮説 H1 : p1≠0.00%
として,帰無仮説が棄却域に落ちるか否かを検証した.ここで,q1=1−p1とすれば,p1=2.01 %の場合の有意水準0.01(信頼度99%)の片側検定での割合の検定における棄却域臨界値cは,
c = 2.33×SQRT(p1q1/n1) = 1.75% (1)
となる.0.00%は棄却域に落ちるため,観察された誘導成功率2.01%は「実は0.00%」に対して,有意水準0.01(信頼度99%)の片側検定で統計的に有意な差である.
これにより,「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」の効果が検証された.
「温泉天国・鹿児島温泉紹介!」HPのリンク先宿泊施設公式HPでの予約の売上高や日帰り施設入場料への影響は不明であるが,同HPは
楽天トラベルの
アフィリエイト・サイトでもあるため,このアフィリエイトの売上高誘発効果だけは計測可能である.
楽天トラベルでは個別宿ごとの内訳は不明であるため,観測期間の売上高約1,089千円(年間ベースでは約13百万円)に対して,上述のアクセス数や誘導成功率で比例按分すれば,県外紹介ページから県内紹介ページへの誘導に成功した効果は,売上高では年間132千円に相当する.効果はあるが,金額的には「そこそこ」程度であろう.
5.まとめと今後の課題
SEMなどのインターネット・プロモーションは,古典的で情報受動的な
AIDMA(Attention,Interest,Desire,Memory,Action)モデルに代わる情報検索型の消費行動モデルとして
電通が提唱した
AISAS(Attention,Interest,Search,Action,Share)(電通の登録商標)モデルが当てはまる世界であるが,AISASとは申せ,知らないキーワードを叩くことができるヒトはいない.「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」は,Interestの局面で自地域に興味を持っていないか,或いは知らないかも知れないHP来訪客に対して,Searchの局面で自地域をPRするための仕掛けである.これまで見てきたように,「SEMによる訪問型営業プロモーション・モデル」には一定の誘導成功率があるため,地域のプロモーションに一定の貢献ができたと思う.
鹿児島県の産業クラスターは,川上に農業,中流に
芋焼酎などの食料品工業があって川下の観光産業と連動する観光食料産業クラスターであるため,地域の観光地ブランドを確立して観光振興に成功できれば,産業連関的な経済波及効果を見込むことが可能になるであろう.
今後の課題は,例えば
鹿児島県は
坂本龍馬による日本初の新婚旅行の地であるため,
「温泉天国・鹿児島温泉紹介!」HP内の
高知県での観光スポット紹介ページで
鹿児島をPRするなどの「ストーリー性に基づくプロモーション」や,他県紹介ページでの
鹿児島PRを「文字だけ」と「画像付きビジュアル版」とで誘導成功率に差が出るかなどの試みを行う予定である.このためには一定のHP開発工数が必要となるため次回発表はしばらく後のこととなるが,
鹿児島PR効果の極大化を目指して頑張る所存である.
参考文献