Regional blog network and region SNS in Kagoshima Prefecture
1.はじめに
多忙な中で資料をいただいた
鹿児島テレビ放送株式会社(KTS)の池田耕毅氏(以降敬称略)にこの場を借りてお礼申し上げる.また,本研究は筆者の余暇時間を利用しての私見であり,筆者所属会社,
KTS等の組織は本稿に関して免責である.
2.先行研究
地域SNSの先行研究は国内では
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター地域SNS研究会(http://www.glocom.ac.jp/project/chiiki-sns/)の研究が知られている.庄司(2007),庄司(2008a)では,有用な知が弱い紐帯(ties)からもたらされる旨の「弱い紐帯の強さ」のパラドックスで知られるGranovetter(1973)以来の社会ネットワーク論を,ソーシャルキャピタル(社会関係資本)論と情報プラットフォーム論とを組み合わせて,SNSサイト内では強い紐帯の「ネットワーク閉鎖論」が成立するとした上で,よそ者たる新メンバーを入れることで同質性の弊害を免れながら地域活性化を図れるとする「地域SNSによる地域活性化」モデルを構築して分析している.紐帯については地域SNSではないが
涌田(2008)でも同様に,mixiから始まった映画公開運動が成功した事例を通じて,異質な人々への架け橋が様々な情報を強い紐帯の場に持ち込んで来ることで紐帯の強弱各々のメリットが活かせた事例を分析している.
「局所的な相互作用が,質的にその総和以上の効果をもたらす」旨の創発(emergence)の見地からの先行研究もあり,土屋,浜屋,吉田(2006)では,ブログやSNSが他のコミュニケーション・ツールに比べて創発的な現象を促し易いため,「創発的マーケティング」のためのツールになり得る旨が判明した.河井(2007)では,「創発型地域経営」という概念を示した上で,各地域の様々な情報交流基盤を「創発型地域経営を支援し得るか否か」の基準から分析し,その結果を踏まえた実証実験の事例研究が行われた.
「
さつまブロ」では「入浴者」に「
さつまブロ」へのリンクを要請しているが,リンクを張った場合,上述の古参で定番の地域情報発信ブログへの来訪客は,リンクを通じて他の定番地域情報発信ブログに辿って行き得る状況と化す.地域の古参定番地域情報発信ブログが間接的にリンクでつながっている状況は,「入浴」済みブログも含めての「
さつまブロ」の
CGMコンテンツの質量両面での強みである.また,
SEO(検索エンジン最適化)の見地からは定番ブログからの逆リンクで「
さつまブロ」の検索順位が向上すれば共連れで自ブログの検索順位も向上する効果を相互に期待可能である等,リンクによる相互連携効果もあり得ると筆者は考える.
「入浴者」同士のオフ会等の強い紐帯における,知の共有化も重要であろう.「入浴者」は古参地域情報発信ブログの管理人が多いため,eスペース上で互いのブログを知り合っていた地域内定番ブログ管理人同士が,リアルスペースでも実際に会うことは,情報発信者間の「紐帯の強化」の点からも「知の共有化」の点からも意義があろう.
後述する
NikiNikiは2006年当時は招待制SNSだけであったが,筆者も含めて「
さつまブロ」オフ会参加を機会に招待されて
NikiNikiに入会したブロガーも多い.この結果,「地域活性化に志のある草奔のブロガー」が高確率で
NikiNikiに入会することになった.これは
NikiNikiの側から見れば,庄司(2008a)による「地域SNSによる地域活性化」モデルの用語で申せば,「(地域情報発信に志のある)よそ者の新規参入」が実現したことになる.
鹿児島テレビ(KTS)コンテンツ推進部(2008)p.6によれば,
NikiNikiは2006年4月に,(1) 報道制作現場による情報収集ツールとして利用,(2) 地域SNSの可能性の検証,(3) 広告媒体としての可能性の検証,を目的にして
KTSにより設置された地域SNSである.放送局運営という点が他の地域SNS事例と異なる特徴であるが,同書p.2によれば,この背景には「地上デジタル放送時代のローカル局の戦略」として,「超地域密着共感メディア! 放送連動型ネットサービスの展開」という事業コンセプト案がある.「地上デジタル放送開始や,旧来の情報受動型の
AIDMAモデルが情報検索型の
AISASモデル(
電通登録商標)に代替されることによるテレビ局広告収入減等の逆風下での,生き残り策における
NikiNiki」については,詳しくは別の機会に研究発表する予定であり本稿では詳しくは触れない.
KTSコンテンツ推進部(2008)pp.1-20によれば,発足当初の会員数は114人で,社員からの招待に期待したがほとんど無く会員数獲得に苦労した模様であるが,登録ユーザーの協力により盛り上げにつとめたり池田が行った講演で会員が25人増えたりした結果,2006年10月に会員が600人を超え,同月17日に会員実数が県内SNSで1位になり,同年12月27日には1,000人登録を達成した.2007年4月には日記活性化のためにポイント制を導入した結果,日記数が3割増加した.当初は招待制SNSだけであったが,2007年9月18日に入門用という位置づけでオープン制SNS
「NikiNiki-G」(http://nikiniki2.tv/)も開設した.オープン制SNS会員は,オープン制SNSで知り合った招待制SNS会員の紹介があれば招待制SNSの会員になれる.2008年5月時点で招待制SNSが会員数1,800人,オープン制SNSは会員数800人である.2008年8月24日現在,内訳不明ながら両SNS併せて3,390人と3,000人超えを果たしている.
5.まとめと今後の課題
これまで見てきたとおり,ブログ・ポータルサイト「
さつまブロ」からは,地域の情報発信の定番ブログを辿って行ける旨を観察した.また,
NikiNikiでは,
NikiNiki内や物販サイト「
にきもの」での会員の商品や店利用券通販を通じて地域の経済活性化を促そうとしている旨を観察した.この状況はまだ試行錯誤の段階であるが,コンシューマーの立場で楽しみながら参加することが自らのビジネスにもつながるシステムである.
KTSにとってもコンテンツ供給をコンシューマーが楽しみながらしてくれることになり,同社の用語で申せば「協働型」ビジネスモデルという
CGM型のビジネスモデルが試みられている.
NikiNikiからは,「
SNSカフェ めいさん」という,eスペースとリアルスペースと連動させて地域活性化の一翼の担うプロジェクトが実現する旨を確認した.
今後の課題は,地上デジタル放送のための投資負担で財務状況が苦しくなっているであろう状況下で,従来の情報受動型の
AIDMAモデルが崩れて放送広告収入に頼るビジネスモデルが崩れつつあるローカル局の生存戦略と,地域SNSとの関係である.これは今後のテーマとする所存である.
参考文献
河井孝仁(2007)「創発型地域経営を導くための情報技術の活用に関する研究」名古屋大学大学院情報科学研究科博士学位論文.
庄司昌彦(2007)「日本の地域社会におけるコミュニティガバナンス −実践・課題・展望−」社会情報学会第108回定例研究会,2007年11月26日.
庄司(2008a)「地域SNSサイトの実態把握、地域活性化の可能性」情報通信政策研究プログラム研究成果論文,2008年3月.
庄司(2008b)「「人をつなぐ」地域SNS 〜各地の地域SNS活用術 第7回 鹿児島県「NikiNiki」―クロスメディアとSNSカフェ」月刊『広報』,2008年7月号.
土屋大洋,
浜屋 敏,
吉田 倫子(2006)「ブログ・SNSの創発的特性と組織へのインパクト」富士通総研経済研究所研究レポートNo.269.