『短歌21世紀』若手歌人(現在は退会)・大塚奈緒美氏の歌に対する歌評です。 : Keywords = 短歌21世紀,ウィング21,歌評,大塚,奈緒美
短歌21世紀ウィング21 平成十一年十月作品評
大塚 奈緒美 歌評
なんとなくあなたがそこにいるようで何度か見てはまた振りかえる
眠れない夜がどれほど続いてもまた眠れない夜は来るもの
大塚作品は、題材の捉え方の感性に私には無い何かがあり、それが魅力になっている。その反面写生色が薄くて評価し辛いので敢えて写生色のある二首を選んでみたが、逆に言えばこの視点は大塚詠の魅力や特色をついたものではない旨をお含み置きの上、お読み願いたい。
一首目は、こんな体験をする機会はあるが題材に選ぶことを思いつかないものなので、よくこの瞬間を捉えたと思う。自分が今いる場所にパートナーが来ている訳はないのにそこにいるかのような感覚に襲われて、いないと頭では分かっていてもついつい何回も振り返ってしまうのだろう。大塚詠に魅力を覚えるのは、無機質な私には無いこのような心のゆらぎを感じるからだ。短歌はロジカルである必要は無いという意味において、論理的思考しかできない私に反省を促してくれる一首でもある。
二首目もよく分かる歌だ。私も不眠症なので共感してしまう。睡眠不足であっても、また夜が来ると眠れなくなってしまうのだろう。そのやりきれなさがよく現れている。結句がやや観念的で作者の実感動が薄まると思うが、拙歌のように説明的と化すよりはまだましだと思うので、これはこれで良いのだろう。
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