『短歌21世紀』ウィング21掲載の過去の神山卓也作品の自作評。 : Keywords = 作品,過去,歌評,神山,卓也,自作評
自歌自賛−過去の作品より−
鼻先でも髪一筋でも耳でも良し少しは君に似るひとがゐないか
これは失恋の歌である。アララギ時代の末期、平成八年の歌。私が恋心に気づいた時には既に彼女には恋人がいて手遅れだったのである。この失恋は傷が深く、夜も眠れぬ一週間の間に体重が一割も減って四十キロになってしまった。寝ても覚めても思うのは彼女のことばかり。爽やかにあきらめなきゃという思いと、どうしても忘れられないという思いが交錯していた頃の、苦しい心境を写生した。自歌選択時にはなまじ思い入れがあるため品質上最良の作を選ぶのは難しく、この歌も、品質よりは思い入れで選んだかも知れない。
技法的には口語詠に意識的に挑戦し始めた頃で、下の句だけ口語を試みた。口語詠が文語詠よりも軽くなりがちなことへの防止策として俵万智は体言止めを用いたが、当時の私は体言止め挑戦前であり、軽さ防止策としては独白口調を模索した。上の句では、顔の部位の繰り返しで彼女への思いの写生を試みたが、繰り返しは諸先輩の作に習ったものだ。
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