Keywords = 短歌,現代,短歌現代,新人賞,佳作,入選
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平成十一年(1999年)短歌現代新人賞佳作入選作品
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「情報処理部門出力工程」
保険会社当社にこんな工場があるとは誰も思はぬだらう
採用の抑制進めば職場では十三年目我は最も若し
十六進数なら二十三歳と言ひたる直後に空しさ覚ゆ
やがて来る決算計上ピーク期の電算処理ラッシュを身震ひして待つ
保守契約更新老朽機入替と決算ピーク前に多々やらねばならず
部品代実費と総合保守契約といづれが得か迷ひてをりぬ
コスト削減を思へば減価償却を終へてもさらにこの機械使はむ
電算作業は無事に終はりてゐるらむか帳票整備機は稼働してをり
保険証券はベルトコンベアーを次々と折られて流れて封筒に入る
新封筒の封入テストのラインにて封緘エラーの束見るは悔し
幾度となくテストをすれど改善無き封筒の前にて業者立ち尽くす
改善無き封筒は現場の仲間達のワークロード増やせばわが怒り湧く
保険市場自由化を思へば郵送料運送費紙代さらに減らさむ
CD−ROM化進むれど紙費消まだ多し経理部の指摘のうるさくならむ
バーコードや通数で割引に努むれど保険証券の郵送料減らし難し
予算統制厳しき我をグループ会社の仲間はけちと思ひてゐるらむ
「踊る大捜査線」の室井に感情を移入して見る親会社の我は
迷惑をかけたる業者を思ひながら息を殺して涙を堪ふ
うつらうつらと眠らむばかりに疲るれば今宵は残業を切り上げて帰らむ
わが仕事辛しと思へど同僚もばたばたしてをり助け合ひもできず
雨止んだ空を見上げる夜遅い残業もたまにはいいことあるのさ
造成地の崖より流れ落つる雨は川と化しつつ歩道を走る
ホームにてタバコを吸へば会社では堪へ来し吐息のこぼれ落ちたり
夜ふけて雨の上がればこのホーム風は首筋冷やしてくるる
リストラを企業に強ひる社説読めば解雇されゆくひとらを思ふ
家々の明かりも消えたるこの夜ふけ業務終へやうやく電車でまどろむ
小田急の電車行く音自動車の音皆静けくしじまに消えたり
一人居の部屋を思へばこの夜ふけはしごする本屋に足は向きたり
追ひ越して行きたる車の音は低く変はりてしじまに消えてゆきたり
思ひ出(い)づるひとは今頃団欒の時を伴侶と過ごしてゐるらむ
Keywords = 短歌,現代,短歌現代,新人賞,佳作,入選