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平成十三年(2001年)短歌現代新人賞佳作入選作品
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「インディーズ・デビュー」
久々に電源入るる録音機器わが手になじむ感触は無し
刀磨く侍にも似ていま我はミキサーのパネルを幾たびも拭く
五年前のフロッピー探す大掃除迷子の猫を探すごとくに
久々にギターを握るこの夜ふけ弦の間の埃は硬し
新しく張り替へし弦の眩しきにギター弾くのをしばしためらふ
シーケンサーのデジタル・リズムのエイト・ビートはギター間違へても単調に続く
五線譜といふタイムマシンを手に取ればあの日の君が脳裏に浮かぶ
マイク持つ手に力込む実り得ぬ思ひを歌に託さむとして
いつか君がこの曲を聴いてくれたなら初めて失恋の儀式が終はる
わが曲の短調の調べの切々と今ははるけき君にまで届け
情感を込めて歌はむとする我にフラッシュバックの君が現る
あの頃の思ひにシンクロできるまで幾度も歌を録り直してゐる
今もなほ思ひ出づればこの曲を歌ふ度毎泣きたくなりぬ
コンプレッサーの限界を突き上ぐる程思ひは音量増やしてをりぬ
次回こそ別れの儀式の曲作る必要の無きひとに会ひたし
失恋の曲作ることさへ無き程に今では出会ひの機会が減りたり
高校の最後のライブに君が来てくれしを突然思ひ出したり
あのひともそしてあのひとも今頃はそれぞれ子供を育ててゐるらむ
締め切りは迫れどテープのこの曲のギターのパートは何かが違ふ
あぐらかきミックスダウンをする夜ふけ納得いかずに幾度もし直す
レーベルに届けむとするこのDATテープはわたしの思ひの墓標
このテープがデビュー・アルバムに変はるのだ思へばここまで三十七年
曲聴けばここまでやれたこんなもんか様々な思ひが交錯してをり
取り扱ひをしてくるるといふ業者の声は夜間航行に見る灯台のごとし
それぞれの事情ありとは分かれども友らの鈍き反応に戸惑ふ
買ひ求めくれし友ありCDはその二千円に応へてくるるか
YAHOO!の登録通知を受けしこの喜びはいま励ましに似て
ホームページ・カウント数上がれどわが曲の配信増えぬは焦りの根源
初めてのCD店からの発注の報を受けしは桜咲く頃
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