アララギ後継誌『短歌21世紀』所属歌人・神山卓也による和歌の歌集(平成14年) : Keywords = 歌集,和歌,短歌,神山,卓也,アララギ
−短歌21世紀掲載歌 及び 短歌21世紀歌会詠草など(注)−
(注)なほ、非掲載歌も一部含む。
平成十四(二〇〇二)年 三十八−三十九歳
折りに触れて
三年間申請し続けやうやくにYAHOO!の登録サイトになりたり
目の奥が痛む程眠きこの夜も眼閉づれど眠り得(え)ずをり
奈良勉強会
夜の明くる前に出づればコートなど無きがごとくに冷気身にしむ
夜の明けてホームに立てば指先がしびれるやうな寒さし覚ゆ
指先はしばれてをれども右左手を持ちかへてタバコを吸ひをり
冬枯れの乾きたる土の色の田にはだらに雪が白く残りぬ
子供のやうだと自嘲しつつも京都駅近鉄特急の写真を撮りぬ
今我は旅にしあれば久々に近鉄電車に乗り込む興奮
鉄道ファン我は見慣れぬ形式の電車が来る度胸ときめかす
埼玉県戸田市議補選
今度こそこの友人に当選をさせるんだといふ思ひで手伝ふ
わが友の街を良くする政策を反芻しながら街に出て行く
週末は職場より遠き選挙区に通へばゆつくり眠り得る日無し
開票待つ友の事務所に人ら集ふ泣きたくなる程支持ありがたし
当選を確かめ事務所を出でにけり疲れてをれども安らぎがあり
炭鉱に思ひを寄せつつ折りに触れて
かつてここに炭鉱炭住ありしことこの原野から想像し得ず
平成十三年九月三菱大夕張鉱跡地が新シューパロ・ダムに沈む前に見に行きて
いつか来ると覚悟してゐしはずなれど閉山の決定に打ちのめされたり
来月は休職活動をせねばならぬ炭鉱マンらと坑道を行く
新しく捨つるズリ無き山なれど草木は見えず今だに黒し
金貸して閉山の悲しみの最中にも考ふるべきは債権回収
他組織の所管なれども明日からの失業対策の状況を案ず
閉山より(注)幾月過ぐれど再就職叶ひしはいまだ一割を超えず
(注) この一首の第一句は当初「閉山から」だったが「閉山より」に直す添削が『短歌21世紀』掲載時に入った。「から」の意味は起点であるが「より」の意味は経由であるため、本当は「閉山から」が正しいのではないだろうか。
那須塩原温泉
キセキレイは谷川の石を飛び移り保護色にして岩に溶け込む
尾を振りて川面の石を渡り歩くキレキレイを今朝初めて見たり
新緑の葉の稜線と青空の境をとんびが過ぎてゆきたり
異動辞令
離陸する機内にゐたりこの職場の最後の出張が始まらむとす
日を浴びてそびゆる工場を見ればわが融資審査をせし日々思ほゆ
近隣に都市ガス供給し始むと聞けば融資が活きたるを知る
どれだけの雇用を守れたか分からねどとりあへず工場は稼働してをり
融資先の店が栄えゐる様を見るこの事業だけは残りてくれたり
融資先企業の担当者が解雇さるるこの悲しみはこれで幾度
去り難い仲間と離れる異動辞令誰か嘘だと言つてはくれぬか
職場への別れを告げて乗る電車ドアが閉まれば涙出で来ぬ
出向先で産業振興への思ひ深まれど投融資部門に戻り得ざりき
新しき産業起こす企業への融資業務への思ひ消し得ず
電算屋は代替きかぬ便利屋かと自嘲をしたくなるこの異動辞令に
新分野生保だ新たに学ぶことあることだけが救ひの刺激
三年ぶりに眺むる電算センターは妙な現実感を呼び起こしたり
みずほの電算センター見えこのオフィスにトラブルを起こすまじと誓ふ
三年のブランクがまるで嘘のやうに仕事の感覚が甦り来る
IBMのシステムと似て非なる富士通のシステムは概念が分からず
距離感
会ひたくてただ会ひたくてみちのくの仙台に行く列車に飛び乗る
百万都市と思へぬ深き森のゆらぎその美しさ眺めてゐたり
上京をためらふ心を説く言葉あれこれ考へ口にしてみる
祖父母の墓を横浜に移ししわが話に君は不安を感じてゐるらし
故郷無く育ち来し我には飛躍よりも故郷を選ばむ君が分からず
東京に出で得ぬ君に変はり得ぬ日本の姿の重ねて思ふ
久々に君の方からしてくるる電話は別れを我に告げたり
北朝鮮に拉致された日本人を思ひて
つひに北が拉致を認めしその後も高まりてゆく苛立ちは何
最も暗き時期でも味方になりてくれし西村平沢他わずか数議員
二年前手をさしのべてくれざりし議員らが拉致を質す不思議さ
逮捕さへ覚悟してゐし座り込み我はあの時行かざりし痛み
わが母校の裏手にありし拉致現場の写真を見れば怒りの湧き来
北朝鮮など潰れるべきだと言ふ恩師退任講義を頷きて聴く 神谷不二教授退任講義
我も納めし税金の中から朝銀を救ふ資金が出る不条理感
Keywords = 歌集,和歌,短歌,神山,卓也,アララギ