アララギ後継誌『短歌21世紀』所属歌人・神山卓也による平成16年短歌作品。恋愛短歌,恋の歌等。 : Keywords = 歌集,和歌,短歌,神山,卓也,アララギ
(注)なほ、非掲載歌も一部含む。
平成十六(二〇〇四)年 四十−四十一歳
ときめき
効果ある支援か知らねど君の会社のイベントがあるからサクラにならむ
ダブルデートを提案する君ツーショットではなかなか会へない微妙な距離感
君に会へるただそれだけでこの一週間仕事を張り切るエネルギーの湧く
金曜日には遅刻せず君に会ひたしと日曜日仕事を前広にしてをり
早く来れば早く会へると思はねど約束の店に二十分前に着く
いつ見てもやはり綺麗な顔だなあ鍋つつきながら横ばかり見る
嫌はれてはをらぬと思へど思はれてゐると言ひ得る言質もまだ無し
密やかに期待してゐしバレンタインデー君には既に予定ありといふ
とりあへず三週間後にまた会ひてくるると言ふ語に安堵してをり
エキストラで君が出てゐると聴きしゆゑドラマのDVDを買はむとしてをり
DO THE BESTといふ君のメールを読み直し大学院入試の会場に臨む
義理かもと社交辞令かもと恐るれど一通のメールが君との絆
都合悪くなつたでもいいせめて君の回答知りたい黙つてゐないで
多忙なる君の状況を知りしより改めて応援をせむと決意す
君が出るインタビュー記事載る雑誌発売日直ちに買ひ求めたり
会へぬならせめて雑誌の君の写真飽くこともなく幾度も眺む
仲間が来る前にこつそり見つからぬやうに君宛ての絵葉書を書く
もつとよく
湯布院らしさがあるといふお菓子を求めて君に送りぬ
叶ふなら伴ひてここに来たかりきこの街並みもこの
湯治場も
この街の様子を問ひてくれしメールにて今のしばしの胸はときめく
会ふ機会なかなか無けれど君からのメールが距離を埋めてくれたり
君も係はりし君の会社のコマーシャル流るる度にテレビに見入る
君からの伝言残る携帯に席をはずしてゐしを悔いたり
プレゼントの受領伝ふる君のメール喜びてくれたる事も知りしか
人事異動
やうやくに電算部門から足を洗ふ希望が叶ふ辞令を貰ひぬ
横になれぬ程にベッドを占領する本をこれから片づけねばならず
最後に会ふ機会さへ得られぬまま君のゐない街へと我は出で発つ
空港から
市内に向かふバスに乗れば御家人祖霊の下向し思ほゆ
新しく求めし家具の次々と届けば新生活の実感湧きたり
鉄道マニア我は
市電で通勤をするといふだけで毎朝が楽し
憧れて憧れてをりし
大久保らの生地の近くに支店は位置す
傷心
やうやくに久々に会ひ得しこの夜ふけ心を決めて告白したり
一日が一年に思ほゆ君からの返事は今宵も届きてをらず
イエスでもノーでもいいさはつきりとしなけりや前にも後ろにも行けない
覚悟してをれども異なる道を行くこの喪失感は闇よりも深し
君が好きだつた
プリプリの曲を聴けどあの日の会話は戻つて来ない
君からのメールに胸をときめかすあの感動も今宵で終はりぬ
免許証入れから君の写真を取り外す思ひを断ち切る決心として
今思へば初めて出会ひしあの日から三年間なり良き夢なりき
いつまでも海見て飽きぬこの我か一人海好きなりと思ひぬ
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