アララギ後継誌『短歌21世紀』所属歌人・神山卓也による、亡き母の死を詠んだ挽歌を中心にする平成18年短歌作品。。 : Keywords = アララギ,挽歌,短歌,神山卓也,死,母
(注)なほ、非掲載歌も一部含む。
平成十八(二〇〇六)年 四十二−四十三歳
死ぬ前の母に会ひたしと思へども
鹿児島からは
横浜は遠し
死の床の母に会ひたし
飛行機の速さも今の我にもどかし
あんなにもおしやべりだつた母なれど眼(まなこ)は開けど口は動かず
子の我を知覚してゐる様子なしせめて眼(まなこ)の反応を見たし
故郷
(ふるさと)は
横浜は街の隅々に母の思ひ出が満ち満ちてをり
太りてゐし母なり今は細々と骨皮だけの足になりたり
去年
(こぞ)の今日母と
歌舞伎を見し思ひ出繰り返し繰り返し父は語りぬ
ずつとずつと暖かなりし母の額我が着きし時既に冷たし
遺体とはいへども形のある母とこの家にゐ得る最後の夜なり
あと二時間あと一時間母の遺体が我が家を出(い)で行く時近づくも (落選非掲載歌)
お母さん嘘でもいいから目を開けて焼かれてしまふ前に逃げてよ (落選非掲載歌)
子守歌歌ひてくれしのど仏はかくも小さき骨になりたり
暖かつた手はどこだらうばらばらの骨からは既に知る術も無し
母の遺骨を持たせて貰へばこんなにも軽くなりたりこんなにも軽く
一緒に俺も焼いて欲しかつたと泣く父の傍らにをりなす術もなく (落選非掲載歌)
お母さんねえお母さんお母さん呼べども呼べども今は答へず
旅行ガイド開きて母との思ひ出を父と語れど過ぎし日はるけし
夢に母が会ひに来てくれたりと気づくその瞬間に目覚めてしまふ
銀行に桃色
(注)の薔薇の花あれば母と
バラ園に行きし日思ほゆ
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(注) |
この一首の第二句は、原歌「ピンクの薔薇の」に対して大河原先生から「紅の薔薇の」と手直ししていただきましたが、「桃色の薔薇の」に戻させていただきます。母が好きだった色ピンクにちなんで母を偲ぶ一首なので「紅」では意味が無いのですが、師匠から手直しされた趣旨に鑑み「ピンク」を残す訳にもいかないため和語で「桃色」にするというのが趣旨です。 |
母と来し駅前の店しみじみと今日は父と二人入りたり
横浜に帰れど二度と会ふことは叶はぬ母よ故郷の部屋よ
アララギ後継誌『短歌21世紀』所属歌人・神山卓也による、亡き母の死を詠んだ挽歌を中心にする平成18年短歌作品。。 : Keywords = アララギ,挽歌,短歌,神山卓也,死,母