アララギ後継誌『短歌21世紀』所属歌人・神山卓也による、平成19年短歌作品。。 : Keywords = アララギ,短歌,神山卓也,21世紀
挽歌(父の死と母の死):神山卓也オンライン歌集(平成十九年)
(注)なほ、非掲載歌も一部含む。
平成十九(二〇〇七)年 四十三−四十四歳
母と行きし
猊鼻渓がテレビに映りをり涙が一筋流れ落ちたり
このリスの写真を撮りし時わが側には母がゐしと気づきぬ
霊などは信じて来ざりき我なれどいつかあの世で母に会ひたし
嘘だよね死んぢやつたなんて嘘だよね
横浜に帰ればまた会へるよね
二年前
ここには父と母がゐしと思ひたる途端に涙止まらず
我が節句人形を孫に飾りたき母の願ひは空しくなりぬ
目覚むれば母の遺影が部屋にありかつてはお早うと起こしてくれき
何時まで起きてゐるのよ父と我を叱りし母の声は聴き得ず
母の形見のネクタイピンをなくしたり見つからぬまま転居せねばならず
転勤
鹿児島から出たくないよと泣きながら段ボール箱にガムテープ貼る
気がつけばうきうきしながら赴任せし日ははや遠き過去になりたり
父の死を告ぐる電話は嘘だよと思ひたし実家に電話をかくる
独りきり発見されないまま父はここに倒れてゐたのかと思ふ
あの夜にせめて電話をかけてゐたらすぐに発見されたのだらうか
父の遺体と母の位牌の間に寝る幼き頃の川の字のやうに
誰もゐない分かりてをれども玄関を開くれば言ひたりただいまと二度
アララギ後継誌『短歌21世紀』所属歌人・神山卓也による、平成19年短歌作品。。 : Keywords = アララギ,短歌,神山卓也,21世紀