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憲法前文を読もう(2000年1月発行第20号掲載)

宇野 峰雪

 衆議院と参議院にそれぞれ憲法調査会が設置されることになった。日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うとされているが、憲法改正問題が議論されることになる。
 憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案して、国民投票で過半数の賛成を得なければならない。
 憲法調査会では、5年の間に調査を行って報告書をまとめるが、議案の提出権はもたないことになっている。
 しかし、衆議院と参議院のそれぞれで3分の2の多数を占める巨大な政権が誕生すれば、改正の決議がされて、国民投票にかけられることは十分予測できる。現在の自自公連立政権は衆議院では3分の2を超え、参議院でも過半数を超えている。この3党の協議で国旗・国家法や通信傍受法など重要法案がいとも簡単に通過したり、介護保険法が実施を目前にして突然重要部分が変更され、企業や団体の政治家個人に対する献金が禁止されることになっていたのに、自民党がこれを葬る決議をした(さいわい世論の反発でとりやめられたが、政党に対する献金を見直すことになっていた点は、見直ししないことにしようとしている)ことなど、この間の動きを見ると、両議院で3分の2を確保する勢力ができたときには、どのように暴走するかわからないからである。その勢力内でのほとんど密室での議論で結論をだし、数の力で反対党の議論を抑えて決定を急ぐことは目に見えるようである。
 そうすると、国民一人一人は憲法改正を是とするか非とするか、態度決定が迫られることを予想しておかなければならない。もちろん、何をどのように改正するのか、その内容なしには決められないということがあるかも知れないが、憲法改正の中心課題が9条にあることは、はっきりしている。他のいろいろな改正問題は、9条問題ほど大きな比重をもちえないであろう。そうした問題も含めて、憲法改正を議論するについて、私は、繰り返し憲法前文を読んでみたいと思う。
 前文はまず国民主権を宣言し、民主主義の原理を述べている。同時に政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意して日本国憲法を制定するとしている。 軍隊を持つということは、万一のときはまた戦争の惨禍をもたらす行動を国が行うこともあるということであるが、憲法を制定したときの「決意」を私たちは放棄していいのだろうか。
 前文は次に、日本国民は恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意し、国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う、と述べたのだが、日本は、そして私たちは、国際社会で名誉ある地位を占めるに至っただろうか。アメリカの核の傘の下で平和が維持されたとすれば、私たちはそうした努力をしたといえるだろうか。
 憲法を制定したときの日本国民は、子々孫々に将来の日本国民も視野に入れて憲法を制定した。そして50余年を経た今日、憲法を議論するとすれば、今現在を考えるだけではなく、今後50年100年を耐えうる内容であるか否か、将来を見据えなければならないと思う。
 憲法前文は、改正問題を考え、議論するうえでも宝庫である。