神奈川総合法律事務所  
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市民が裁く (2001年8月発行第23号掲載)

鵜飼 良昭

 あなたは次の項目のいくつに該当しますか?
 「公平であって、判断力をもち、成熟した見方ができ、頭の固さがなく、人間性を理解し、ひとの気持ちが分かること」「確固としていながら柔軟でもある自分の意見を持っていること」「コミュニケーション能力・対話能力があること」「基本的な態度と姿勢が民主的であること」「心理的負担に耐え、バランスを保てること」等々。

 実はこれは、ドイツで参審員に望ましい資質として求められているものの一部です。ドイツでは、19世紀後半から一般市民(参審員)が職業裁判官と協力して裁判を行う参審制が採用され、その後は刑事事件だけでなく行政・税務事件、労働事件、商業事件、社会保障事件などに導入されています。現在参審員の数は6万人を超すといわれ、裁判への市民参加は確立した制度となっているのです。このような参審員に望まれる前記資質は、あるべき市民像に重なるものなのではないでしょうか。

 この6月12日、司法制度改革審議会から意見書が出されました。これは、明治以来続いた「官僚司法」「小さな司法」という我が国の司法の在り方に抜本的なメスを入れるものです。内容は、法曹人口の増大、法曹養成制度の改革、裁判制度の改革など多岐に渡りどれも重要なものですが、中でも特に国民の司法参加には画期的な意味があります。
 意見書では、刑事司法手続きに一般国民が裁判官とともに責任を分担し協働して裁判内容の決定に主体的・実質的に関与することができる新たな制度を導入するとしています。具体的には、選挙人名簿から無作為に抽出された者から選ばれる「裁判員」が、重大犯罪の裁判に、職業裁判官と対等の権限で参加し、有罪・無罪の決定及び刑の量定を行うというものです。
 これまで我が国では、裁判は法律の専門家である裁判官が行うものであり、多くの人もこれを当然のこととして疑いませんでした。一般市民が参加して適正な裁判が保障されるのか、私なら専門家である職業裁判官に裁かれたい、といった意見が審議会で述べられたことも、我が国の歴史からすると無理からぬことでしょう。何せ、庶民の好むドラマの代表が「大岡越前」や「遠山の金さん」であり、法と正義を一身に体現した権力者の裁きに、溜飲を下げ喝采を送ってきたのですから…。
 しかし、気がついてみたら、我が国の裁判は国際的に見てもいびつな姿になっていたのです。今度の司法改革についても、単なる運用改善程度で終わらせようとする根強い動きがあります。このチャンスを逃さないで、本当の司法改革につなげられるかどうかの正念場にさしかかっていると思います。(私は日弁連司法制度改革実現本部の幹事としてこの問題に関わっていますが、世論の盛り上がりが弱く危機感を感じています。皆さんのご意見を是非お聞かせ下さい。)