もっと犯罪被害者を守ろう (2002年1月発行第24号掲載)
田中 誠
ここ1・2年、犯罪被害者保護法制が大きく動いており、刑訴法等改正・犯罪被害者保護法の成立、施行(以上2000年)、犯罪被害者等給付金支給法の改正(2001年施行)、少年法の改正(2001年施行)が行われ、被害者保護が進みました。しかし、まだ不充分です。
例えば被害者が刑事公判手続の傍聴ができるように配慮するという新制度がありますが、これも実際には、第1回公判の日取を教えてくれる程度のことで、日取を入れる際に被害者の都合まで聞いてくれるわけではありません。私も、被害者代理人として被害者のかたと共に傍聴に臨むことがあります。被害者本人だけでは、刑事法廷のやりとりの意味等は到底理解できないですし、被害者にとって刑事法廷は加害者の勝手な弁解を聞かされるなど耐え難いことも多いので、少しでも心の支えになれればとの思いもあってのことですが、一度、予定どおり傍聴に行ったら「今日の裁判は延期になりました」と言われました。被害者には事前の連絡はありませんでした。これは、全体の数多い問題に比べれば細かい話にすぎませんが分りやすい例です。現在、被害者の方々が何に憤り、何に困っているのかは、「全国犯罪被害者の会」がお作りになったホームページ(http://www.navs.jp/)等を見ていただきたいと思います。
私としては、刑事手続の中で損害賠償の問題も解決しようという「付帯私訴」の制度を導入してほしいと思います。その上で、犯罪者には支払能力が無く現実に損害賠償を履行することは少ないので、犯罪被害給付金のさらなる抜本的見直しも必要です。犯罪者の更生に巨額の税金を使うのだから、被害者の生活立直しにも使うべきです。
実は、国が、現行法制度でも救済できる被害者ですら救済していないなどの問題もあるのですが、これはまた別の機会に書きます。
さて、犯罪被害者の中でも、もっとも過酷な状況におかれるのは少年犯罪の被害者です。2001年4月1日に施行された改正少年法でも、少年審判の傍聴が一切認められていないこと等従前と変りません。ただ、この改正少年法においては、被害者への配慮を充実させるためとして「被害者等の申出による意見の聴取」「被害者等に対する通知」「被害者等による記録の閲覧及び謄写」の新制度が作られました。
弁護士として実務的に重要なのは、記録の閲覧謄写の制度(改正少年法5条の2第1項)で、事実を知るため、また損害賠償請求のために利用できるからです。
しかし、実際に使ってみて不充分な制度だと分りました。
少年犯罪の被害を回復するためには、少年本人には一般に損害賠償能力がないので、親の監督責任を問えるかどうかがポイントです。そのためには親がその少年をどういう風に育て、どういう風に監督していたかが重要で、そのため親の調書などはどうしても見たいところです。しかし、横浜家庭裁判所には「親の調書は見せられません」と言われました。法に定める「当該保護事件の非行事実に係る部分」にあたらないと言うのです。しかし、この制度の新設の主たる趣旨が被害者の損害賠償請求権行使を助けるためであることと矛盾していると思います。
被害者が守られ、加害者は賠償も含めきちんと責任を取るのが正義と思います。新年は、被害者保護の流れをもっと進めねばなりません。 |