神奈川総合法律事務所  
since1975   
   

  戻る  HOME > 事務所だより

夏、ひと休み (2002年8月発行第25号掲載)

小宮 玲子

 「おとうさん、夏の陽ざしにできる影って濃くて深いよね。人生にも濃くて深い影があればその裏にはかがやくまぶしい光がぜったいある。ぜったいにあるんだよ。おとうさん」
(大島弓子『毎日が夏休み』)

******

 週末の午後、原稿も進まぬまま部屋でぼんやりしていると、ふと蝉の声に気づいた。驚いた。いつの間にか世間が「夏休み」になっている。扇風機をつける。暑い。

******

 金曜夜、仕事を一段落させ、帰途を急ぐ。夜の町を疾走するバイクの爆音が聞こえてくる。いつものことながらため息が出る。あんた達、若いよね・・・私は帰って寝ますよ。非行をするにもエネルギーがいる。
 「私はまだ夜遊びをする体力はあります!」。手紙の中で威勢良く宣言してくれた少女がいる。元気いっぱいで鑑別所の面会室では笛をぴりりと吹いてみせたとかいう大物ぶり。明るくてお喋りだが、本当に悩んでいることは言葉にできないでいた。少年院で過ごす夏はどんなだろうか。
 虞犯で家裁に送られてきた少女がいた。母親は離婚後、女手一つで兄妹を育ててきた。母親に暴力をふるう息子と「お母さん可哀想」と慰める娘。しかし娘も中学に上がると家に帰らなくなった。
 「お母さんは面会のたびに、もう少しがんばってって言うけど、もうがんばれないからこうなったんだよ」。
 審判に立ち会った調査官から、「疲れた?」と問いかけられると、それまでうつろな視線を床に落としていた少女は、ゆっくりと顔を向け、首を傾げてため息をつくように、にこっとした。

******

 尋常でない日差しの強さと眩しさ。今日もまた暑い。
 炎天下くらくらしながらやけくそ気味に全力疾走するのも、ある意味、気分爽快だ。けれど、ちょっとくたばっているならば、日陰で立ち止まって少しばかり休んでいてもいいでしょう。焦らなくても実りの季節はまだまだこれからなのだから。