過払い金問題雑感 (2007年8月発行第35号掲載)
大塚 達生
利息制限法は、金銭消費貸借契約の利息・損害金の最高限を定め、それを超える部分は無効と定めている。
その最高限を超過する利息・損害金が実際に支払われた場合には、超過部分は元本の支払いに充当され、それによって計算上元本が完済となったときは、その後に債務の存在しないことを知らないで支払った金額(過払い金)の返還を請求することができる。
これに対して、貸金業法43条の「みなし弁済規定」は、一定の要件を満たす場合には、利息制限法の最高限を超過する利息・損害金の支払いも、有効な利息・損害金の支払いになると定めている。
しかし、多くの消費者金融業者は、この「みなし弁済規定」の諸要件を順守せずに、利息制限法の最高限を超える利息・損害金を顧客に請求し、受領し続けてきた。そのため、それらの業者は、「みなし弁済規定」を使うことができず、膨大な数の顧客に対して、過払い金を返還する義務を負っている。
特に、2006年1月に最高裁が「任意に支払った」という要件についての解釈を示して以降は、「みなし弁済規定」を順守したと主張できる消費者金融業者はいないも同然となり、顧客から過払い金返還請求されれば、それに対応せざるをえない状況にある。 注1
消費者金融大手の公開されている決算資料を見ても、「みなし弁済」の要件についての最高裁の解釈以降、返還請求が急激に増加し、各社とも多額の返還に応じるとともに将来の返還に備えた引当金の計上が必要となったと、書かれている。
これまで長きにわたって違法な利率の利息・損害金を取り続けてきたことの結果であり、当然といえば当然のことである。
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さて、問題はここからである。
このように、消費者金融各社は、自社が「みなし弁済規定」を使うことができないことを認識しているのであるから、利息制限法の最高限を超える利息・損害金を顧客に請求することができず、受領することもできないことを、認識しているはずである。
ところが、消費者金融各社は、そのような認識に至った後も、利息制限法の最高限を超える利息・損害金を顧客から受領し続けている。
受領できない利率の利息・損害金であることを顧客に伏せ、この点についての認識がない顧客から、利息制限法の最高限を超える利息・損害金を受領することは、顧客を欺く行為であって、詐欺にあたるのではないだろうか。
また、消費者金融各社は、それぞれ顧客の取引履歴のデータを保有しているのであるから、どの顧客についても、利息制限法に基づく充当計算によって過払いとなっているかどうかを確認することができるはずである。そして、過払いとなっていれば、もはや顧客に返済を請求することなどできず、顧客から金を受領することもできないことを知っているはずである。 注2
ところが、消費者金融各社は、既に過払いとなった顧客からも、返済名目で金を受領し続けているのである。
過払いによって顧客に対する債権が既に消滅しているにもかかわらず(逆に顧客に対する返還債務が発生しているのに)、そのことを伏せて、顧客に対する債権があるかのごとく振る舞い、過払いになっていることを知らない顧客から金を受領することは、顧客を欺く行為であって、詐欺にあたるのではないだろうか。 注3
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さらに言うと、顧客から返還請求されない限り過払い金を返還しないという消費者金融各社の対応も問題である。
各社とも、顧客それぞれについて過払いとなっているかどうか分かるのであるから、過払いとなっている顧客については、顧客からの返還請求を待たずとも、過払い金を返還できるはずである。
過払い金返還は法的義務であるし、消費者金融各社はコンプライアンス(法令遵守)の徹底を唱えているのであるから(そう唱えておきながら前記のような詐欺的行為を行っているであるが)、消費者金融会社の側から、過払い金を自主的に返還すべきであろう。
金融庁は、保険会社による保険金不払いの問題について、保険会社に対する行政処分を行い、保険金を支払うよう行政指導している。消費者金融各社による過払い金返還問題についても、自主的に返還するようにとの行政指導があってしかるべきではないだろうか。
注1 平成18年1月13日最高裁第二小法廷判決。裁判所HPの裁判例情報で見ることができる。
注2 平成19年7月13日最高裁第二小法廷判決(2件)。「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の『悪意の受益者』であると推定されるものというべきである。」と判示している。これも裁判所HPの裁判例情報で見ることができる。
注3 釣り銭詐欺と比較すると理解しやすいかもしれない。相手方が錯誤によって釣り銭を余計に出したことを知りながら、黙ってそれを受け取る行為が詐欺にあたることは、よく知られている(刑法の教科書に必ず出てくる)。過払い問題の場合は、既に債務が消滅しているのに、顧客は未だ債務が残っていると思って金を支払っている。消費者金融はそのことを知りながら、黙って受け取っているのである。釣り銭詐欺と同様に、この場合も詐欺が成立するはずである。
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