神奈川総合法律事務所  
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ワーキング・プア(2008年8月発行第37号掲載)

嶋﨑 量

 私は1975年生まれだから、いわゆる団塊ジュニア世代である。バブル崩壊後の就職氷河期、日本経済の「失われた10年」が、就職時期と重なった世代にあたる。実際、私の同世代の友人を見渡しても、大学を卒業しても正社員の就職先が見つからず、派遣社員等で働く者は珍しくなかった。
 「ワーキング・プア」、すなわち、「働く貧困層」が、連日にマスメディアで取り上げられる様になって久しいが、中でも団塊ジュニア世代の非正規雇用労働者を取り上げたものが目につく。
 先日、いち早くこの問題を取り上げてきた後藤道夫教授の講演を聴かさせていただいた。後藤教授によれば、若年(15歳から24歳)の正規雇用労働者数は94年から08年の間で、309万人も減少したという。この間の全年齢の正規雇用の減少は434万人だから、正規雇用から非正規雇用への労働条件の変化の多くは、若年層の労働者に押しつけられてきたといえる。
 「正社員になればいいじゃないか」、そんな風に思う方もいるだろう。世間では、残念なことに、未だに非正規労働者は真面目に働く気がないキリギリス的な「フリーター族」であるとの偏見を持つ方も少なくないから。
 しかし、多くの若者は好きで非正規を選んだのではないし、一度非正規で働いた者が正規雇用の職を探すのは容易でない。非正規雇用に対しては企業が年齢相応の職業技能を与えていない場合が多いし、多くの企業は非正規での就労経験がある労働者よりは新卒採用を望むのである。
 この問題は、単なる雇用形態の問題だけでは済まされない、日本の将来へも大きな影響を与える問題である。
 少子化問題への国家的取り組みの必要性が語られて久しいが、非正規の低賃金で働く世代に(加えて世界的に見ても高額な教育費、住宅費等が、大きな負担となってくる中で)、子供を産めといっても、育てていく自信はもてないだろう。また、高齢化社会に突入し、高額の社会保障費を負担する肝心の働き手の世代が、十分な職を確保できない状況に置かれることになる。
 このところ、弁護士会や労働弁護団でも、「労働と貧困」「ワーキング・プア」の問題が取り上げられるようになった。特に、長年消費者事件の側面から「貧困問題」を熱心に扱ってこられた弁護士の方々から、「労働」の問題を解決しなければ、現代の貧困問題を解決できないとの声が聞かれ、熱心に活動されているという。
 では、労働弁護士は、この新しい労働問題に何ができるのか。私自身、同世代の労働者の状況に対して、何ができるのか。もちろん、この問題は派遣法改正等の政治課題という側面も大きい。しかし、労働弁護士にも、今までにない斬新な取り組みが求められている気がしてならないし、答えの出せない自分に焦りも感じる。この問題に対して、何らか自分がやるべきことがあるのではないのか、自問自答している。