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 商品先物取引の被害

弁護士大塚達生  弁護士田中誠 

 

    
はじめに
 
 ここでは、商品先物取引業者の外務員に勧誘されて商品先物取引を行い、損害を被った方を対象に、損害回復に向けての考え方を解説しています。
 読んでいただければ分かりますが、中心となるのは、行われた取引とその計算関係を客観的に分析し、いくつかの指標を用いるなどして、先物取引業者の一連の行為が不当・違法といえないか調べるというものです。
 これは、現在の商品先物取引被害に関する裁判で、定着している手法だからです。
 とはいえ、実際にこれらの分析・調査を正確に行うには、かなりの作業が必要になります。
 被害にあったと感じたら、手元に残っている取引関係資料を全部持って、先物取引被害の事件処理の経験とノウハウをもった弁護士に相談することが近道です。
      

 商品先物取引とは

 商品先物取引とは、将来の一定時点における商品及び対価の授受を約する売買取引であって、売買の目的物となっている商品の転売又は買戻しを行ったときは、差金の授受によって決済することができるという取引です。
 商品先物取引は、商社等が価格変動リスクをヘッジするための取引として利用され、市場が発展してきたものですが、商品現物の受け渡しをせずに差金決済が行われることから、商品現物を必要としない一般の人でも取引を行うことが可能です。そのため、先物取引業者は一般の人に対して投資目的での取引を勧誘しています。
 しかし、次に述べるように、商品先物取引は、一般の人にとっては極めて危険な投機的取引です。
     

 商品先物取引の危険性

 商品先物取引は、取引金額の5%から10%程度の証拠金で取引を行うことができるため、取引金額は証拠金の額に比べて高額となります。
 また、取引の数量の単位と値決めの対象となる数量の単位が異なっており、前者が後者よりも遙かに多いため、わずかな値動きでも多額の売買損益につながります。
 商品先物取引は、極めて投機性の高い取引なのです。
 そのうえ、商品先物取引の仕組みは複雑で、取引手法や損益計算方法を一般の人が理解することは容易ではありません。商品先物市場の価格は激しく変動しますが、価格変動要因は複雑多岐であり、一般の人が価格変動を的確に予測することは、ほとんど無理だといえます。
 商品先物取引は、一般の人が参加した場合(特に未経験者が参加した場合)、短期間で予想外に多額な損害を被る可能性の高い危険な取引なのです。
 私たちのもとへ相談に来られる商品先物取引の被害者の方々は、このような危険が現実化してしまった方々です。
     

 商品先物取引業者に勧誘され取引で大きな損害を被ってしまった場合

 不法行為責任の追及

 商品先物取引が極めて危険な取引であることから、顧客保護のための種々の法的規制等が行われています。
 先物取引業者とその従業員(外務員)には、そのような法の規制等を遵守することはもとより、商品先物取引に十分な知識・経験を有しない者が安易に取引に手を出すことがないよう、また、顧客本人の予想しない大きな損害を被らせることがないよう努めるべき、高度の注意義務が課せられていると解されています(商品取引所法213条も「商品取引員並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。」と規定しています)。
 先物取引業者側が、このような注意義務に違反し、不当・違法な行為によって顧客に損害を被らせた場合は、顧客の損害を賠償する責任(不法行為責任)を負います。
               

 業者側の行為に不当・違法な点はなかったか?

 取引勧誘段階、取引開始段階、取引継続段階、取引終了段階の全部を通じて、先物取引業者側に不当・違法な行為がなかったかをチェックします。
 実際に行われた商品先物取引が、勧誘から取引終了までを通じて見て、先物取引業者側の一連の違法・不当な勧誘や受託業務遂行行為によるものといえる場合は、先物取引業者側の一連の行為は、社会的相当性を欠く違法なものであって、全体として不法行為を構成し、顧客に対する損害賠償義務を負うということになります。
 日光商品事件最高裁平成7年7月4日判決も、従前の数多くの地裁・高裁での裁判例を踏まえて、勧誘から取引終了までの一連の行為が不法行為にあたるという、いわゆる一体的不法行為論を採用しています。
     

 チェックポイント(その1) 取引および計算関係の客観的特徴を見る

 勧誘から取引終了までの一連の行為について違法性を判断するにあたっては、取引および計算関係に認められる客観的特徴を指標とする方法が、裁判実務上定着しています。
 この指標となる客観的特徴には各種あり、代表的な指標を挙げると、特定売買比率、手数料損金比率、売買回転率、利乗せ満玉などがあります。
 これらは、顧客にとって有害無益、不合理な取引内容となっていないか、先物取引業者の単なる手数料稼ぎに利用されていないかを見る指標であり、先物取引業者の手数料稼ぎのために顧客の利益が犠牲にされていないかを見ることができます。
          

【特定売買比率】
 特定売買とは、①直し、②途転(どてん)、③日計り(ひばかり)、④両建(りょうだて)、⑤不抜け(ふぬけ)と呼ばれている取引であり、行われた取引のうちこれらの特定売買に該当する取引の割合を特定売買比率といいます。
 「直し」は、既存の売り玉(又は買い玉)を仕切るとともに、同一日内で新規に売り玉(又は買い玉)を建てることをいいます(異限月を含みます)。このような取引は、既存の建玉をそのまま維持するのと何ら変わりはなく、徒に取引回数を増やして委託手数料の負担がかさむだけ顧客にとっては有害無益です。
 「途転」は、既存建玉を仕切るとともに、同一日内で新規に反対の建玉を行うことをいいます(異限月を含みます)。途転は、相場が逆に展開することを予想しているときに行うとされていますが、そのような予想外の相場展開の際には、仕切るべき玉を仕切ってしばらく取引を休むのが常道であり、無定見・頻繁にこのような取引を行うと、いたずらに委託手数料の負担を増やすだけに終わる取引です。
 「日計り」は、一日のうちに建玉をし、その日のうちに仕切ることです。一日では大した値動きもないのに、手数料ばかりかかることから、手数料稼ぎの徴表と評価されます。
 「両建」は、既存建玉に応させて反対建玉を行っていることをいいます(異限月を含みます)。両建は、両建したときに損金が実質的に確定するので、この時点で既存建玉を仕切るのと何ら変わりはなく、新規に反対玉を建てる点で委託証拠金、委託手数料の負担がかさむだけ顧客にとって有害無益なものです。
 「不抜け」は、売買取引により利益が発生したのに、その利益が委託手数料より少なく、売買益が手数料で食われて差引損になっているものをいいます。顧客にとって、手数料の巾を抜けられない限り利益はないのですから、特別の事情がない限り顧客にとって不合理な取引です。

 以上のような特定売買の危険性・不合理性については、過去の裁判例でも指摘されています。
 このような特定売買の割合(特定売買比率)が高い場合には、先物取引業者の手数料稼ぎのために顧客の利益が犠牲にされたと評価することができ、勧誘から取引終了までの一連の行為の違法性を判断するための有力な指標となります。

 なお、かつては行政が農水省チェックシステムと通産省MMT(ミニマムモニタリング)と呼ばれる指導基準に基づき、先物取引業者に特定売買比率等を報告させ、それをもとに行政指導等を行っていました。
 これらの指導基準は平成11年に廃止されていますが、これは行政による事前規制の緩和という流れの中で行われたもので、民事的な不法行為を判断する上での指標としての意味がなくなったわけではありません。
 そもそも、「規制緩和」一般に通じる議論ですが、行政による事前規制が緩和されたからこそ、司法による事後救済が重要となっているのです。
 もともと、行政がこれらの基準によって特定売買比率等を報告させ、それをもとに行政指導等を行っていたのは、特定売買比率の高い取引には委託者保護の点で問題があるからです。このこと自体は、これらの行政指導基準の廃止によっても変わりはなく、先物取引業者側の不法行為を判断する上で、特定売買比率は依然として意味のある指標だといえます。

【手数料損金比率】
 手数料損金比率とは、取引で損金が発生した場合に、損金の中に占める委託手数料の割合を見る指標です。損金のうち、どの位の割合を手数料名下に先物取引業者が直接取得したのかを端的に示す指標です。
 一連の取引が、顧客のために行われたのか、あるいは顧客を犠牲にして先物取引業者の利益を追求するために行われたのかという、違法性判断の指標の一つになります。

【売買回転率】
 売買回転率とは、取引回数を取引期間の日数で割ったものです。
 例えば、全取引回数を200回、全取引期間を60日として売買回転率を算出すると、0.3日に1回(月平均100回)という計算になります。
 取引回数は、建てて仕切る毎に1回と数えます。分割して仕切る場合は、それぞれを1回に数えます。
 高い売買回転率は、先物取引業者による手数料稼ぎにつながりますので、これも違法性判断の指標の一つとなります。

【利乗せ満玉】
 利乗せ満玉(りのせまんぎょく)とは、委託証拠金の限度一杯の取引を行い、建玉を仕切った場合に生じた益金を顧客に返還しないでこれを証拠金に振り替え、その増加した証拠金で建玉可能な限度一杯の取引を継続することをいいます。
 相場が予想と反対に動いた場合は、それまでに預託した証拠金と生じた利益金を失うばかりか、多額の差損金が発生しかねません。
 利乗せ満玉をした後、仮に相場の予想が当たったとしても、さらに利乗せ満玉を行えば、また同じ状況になります。むしろ、建玉数が増大した分、相場の予想が外れた場合の危険の大きさは膨張することになります。
 利乗せ満玉を繰り返せば、一度相場の予想が外れただけで、それまで預託した証拠金全額と益金全額を失うことになり、さらにそれ以上の差損金が発生する場合もあるのです。
 一般の顧客にとって相場予想は困難であり、繰り返し予想を的中させることなど不可能ですから、利乗せ満玉を繰り返せば、確実にどこかで破綻することになります。
 このように、利乗せ満玉は、顧客にとって極めて危険で不合理な取引手法だといえます。
 もし先物取引業者の勧誘により繰り返し利乗せ満玉が行われていたのであれば、先物取引業者側の一連の行為の違法性が強く疑われるといえます。
      

 チェックポイント(その2) 顧客保護のためのルールに違反していないか

 前述したように、商品先物取引が極めて危険な取引であることから、顧客保護のための種々の法的規制等が行われています。
 先物取引業者がこれらの規制等に違反することは、顧客保護をないがしろにするものであり、不法行為における違法性を判断する上での重要な要素となります。
 具体的には、次のようなものがあります(「法」とは商品取引所法のことで、「規則」とは商品取引所法施行規則のことです)。
     

【のみ行為の禁止】
 商品取引員が、受けた委託について、商品市場 (商品取引所)につながずに、自己がその相手方となって取引を成立させることの禁止(法212条)。
     

【不当な勧誘の禁止】
 次の勧誘行為は禁止。

  • 利益が確実であると誤認させるような断定的判断を提供して勧誘すること(法214条1号)。

  • 損失補填の約束又は利益保証、特別利益の提供を約して勧誘すること(法214条2号)。

  • 委託をしない旨の意思表示をした顧客に対して、さらに勧誘すること(法214条5号)。

  • 迷惑な時間・方法による勧誘を行うこと(法214条6号)。

  • 勧誘に先立って、取引員の商号、商品市場における取引の勧誘である旨を告げずに、勧誘すること(法214条7号)。

  • 勧誘に先立って、商品市場における取引の勧誘を受ける確認をせずに、勧誘すること(法214条7号)。

  • 両建て(同一物品について対当する建玉(売り注文と買い注文))を勧めること(法214条8号)。

  • 取引単位を告げないで勧誘すること(法214条9号、規則103条6号)。

【一任勘定取引の禁止】
 一定の事項(取引の数量、対価の額、上場商品、取引の種類等)について、顧客の指示を受けないで委託を受けることの禁止(法214条3号、規則101条、102条)。
      

【フロントランニングの禁止】
 商品取引員が顧客の注文を受けた場合に、当該注文を執行する前に、注文を受けたのと同一の取引を、より有利な取引価格で、自己のために行うことの禁止(法214条4号) 。
        

【委託者の利益を害する向かい玉 の禁止】
 委託者の取引と対当させた自己取引を行い、委託者の利益を害することとなる取引を行うことの禁止(法214条9号、規則103条2号)。
      

【無断売買の禁止】
 委託者の指示を受けないで委託者の計算において取引を執行すること (自己が取引を行っているにもかかわらず、委託者の名で取引をすること)の禁止(法214条9号、規則103条3号)。
      

【仕切り拒否の禁止】
 委託者が建玉を決済(取引を終了)しようとするのを拒否することの禁止(法214条9号、規則103条7号)。
     

【理解していない顧客から両建てを受注することの禁止】
 両建ての勧誘が禁止されていることは前記のとおりですが(法214条8号)、両建てを理解していない顧客から両建てを受注することは、勧誘していなくても、禁止されています(法214条9号、規則103条9号)。
    

【適合性原則違反】
 法215条は、「商品取引員は、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行つて委託者の保護に欠け、又は欠けることとなるおそれがないように、商品取引受託業務を営まなければならない。 」と定めています。
 これを適合性原則と呼んでいます。
 この適合性原則の具体的内容は、「商品先物取引の委託者の保護に関するガイドライン」(経済産業省)に示されています。
 具体的には、次のようなものです。
     

◎ 適合性原則に照らして常に不適当と認められる勧誘

  • 未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人、精神障害者、知的障害者、認知障害の認められる者に対する勧誘
  • 生活保護法による保護を受けている世帯に属する者に対する勧誘
  • 破産者で復権を得ない者に対する勧誘
  • 商品先物取引をするための借入れの勧誘

◎ 適合性原則に照らして原則として不適当と認められる勧誘(この例外とされるためには、いくつかの要件をみたす必要があります)

  • 年金、恩給、退職金、保険金等により生計をたてている者に対する勧誘
  • 一定以上の収入(年間500万円以上を目安とする)を有しない者に対する勧誘
  • 投資可能資金額を超える取引証拠金等を必要とする取引に係る勧誘
  • 一定の高齢者(75歳以上を目安とする)に対する勧誘

◎ 商品先物取引未経験者の保護措置(新規委託者保護義務)

 過去一定期間以上(注1)にわたり商品先物取引の経験がない者に対し、受託契約締結後の一定の期間(注2)において商品先物取引の経験がない者にふさわしい一定取引量(注3)を超える取引の勧誘を行う場合には、適合性原則に照らして、原則として不適当と認められる勧誘となると考えられる。(この例外とされるためには、いくつかの要件をみたす必要があります。)

(注1)「過去一定期間以上」とは、直近の3年以内に延べ90日間以上を目安とする。
(注2)「一定の期間」とは、最初の取引を行う日から最低3ヶ月を経過する日までの期間を目安とする。
(注3)「商品先物取引の経験がない者にふさわしい一定取引量」は、建玉時に預託する取引証拠金等の額が顧客が申告した投資可能資金額の1/3となる水準を目安とする。

 さらに、当該期間において、上記の商品先物引の経験がない顧客に対し投資可能資金額の引上げを勧めることも、適合性原則に照らして不適当と認められる勧誘となると考えられる。
    

【説明義務違反】
 委託契約を締結する前に、商品取引員(具体的には外務員)は、商品先物取引の仕組み・リスクを説明するとともに、委託者に対して書面の交付が義務付けられています(法217条、218条、規則104条、108条)。
       

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  当事務所の相談担当者

 先物取引被害についての当事務所の相談担当者は、弁護士田中誠弁護士大塚達生です。
          

   リンク
 経済産業省-商品先物取引
 農林水産省-商品先物取引
 日本商品先物取引協会
 
   商品先物取引の仕組み
 商品取引所

 商品先物取引は、商品取引所法に基づいて設立された商品取引所で行われます。
 一般の人が商品先物取引に参加する場合、取引所の会員である商品取引員に売買取引を委託する制度となっています。
   

 取引の方法

 取引が成立した売買契約のうち未決済のものを「建玉」(たてぎょく)といい、売り契約のものは「売建玉」、買い契約のものは「買建玉」といいます。
 決済の方法は、買建玉については転売、売建玉については買い戻しですが、これらを「仕切り」(しきり)とか「手仕舞い」(てじまい)といいます。
 決済しなければならない期限の月は「限月」(げんげつ)といいます。
 これをまとめると、買いまたは売りの建玉を行い、限月までに、反対売買(買建玉については転売、売建玉については買い戻し)によって、仕切りを行うということになります。
 仕切りにあたっては、建玉時点の商品価格と仕切り時点の商品価格との差額を清算しますが(差金決済)、それにより利益か損のどちらかが発生します。
 また、商品取引員に対し、取引量に応じて、委託手数料を支払います。委託手数料は、仕切りにより利益が出たか損失が出たかにかかわらず、発生します。
                        

 取引単位と呼値

 商品取引所における取引の単位は「枚」で、商品毎に1枚あたりの数量が決められています。
 ただし、商品取引所の立会で決められる価格は、1枚あたりの価格ではなく、それよりも小さい単位の数量に対する価格です。
 売買に際し値決めの対象となる数量が商品毎に単位化されており、これを「呼値」(よびね)といいます。貴金属の先物に例をとると、1gいくらと値段をつける場合、この1gが「呼値」です。
 呼値に対しての値動きの最小単位も商品毎に決められており、これを「呼値の単位」といいます。
 このように、呼値も取引単位(枚)も商品の量を表す概念ですが、両者の量は大きく異なります。例えば、金では、呼値は1gですのでこれを単位として値決めが行われますが、取引単位としての1枚は呼値の1000倍にあたる1㎏です。従って、金の呼値につき1円の値動きがあれば、取引単位ではその1000倍にあたる1000円の値動きがあったことになります。
     

 値幅制限

 商品取引所では、1日の値動きの幅を一定の範囲に制限しています。これを「値幅制限」といいます。
 相場の乱高下を防ぐとともに、顧客に損失が出た場合でも委託証拠金の範囲内で賄えるようにするためです。
 上限値段に達した時は「ストップ高」、下限値段に達したときは「ストップ安」と呼びます。
 商品先物取引は相対取引であり、「買い」と「売り」の双方が一致しないと取引が成立しないため、「ストップ高」や「ストップ安」になった場合は、売り注文と買い注文のバランスがとれず、仕切りのための注文を出しても成立しないことがあります。
       

 証拠金

 顧客が商品取引員に委託して商品先物取引を行うには、取引の担保として、取引証拠金を商品取引清算機関(株式会社日本商品清算機構)に預託しなければなりません(商品取引所法179条1項)。
 取引証拠金には、取引本証拠金、取引追証拠金、取引定時増証拠金、取引臨時増証拠金があります。
 商品取引清算機関(株式会社日本商品清算機構)への取引証拠金の預託は、商品取引員が顧客から差し入れられた金銭等をそのまま清算機関に預託するのが原則ですが、例外的な方法も認められており、顧客から書面による同意を得た上で、商品取引員が顧客から金銭等の預託を受け、商品取引員がそれに相当する以上の金銭等に差し換えて清算機関に預託するという方法(差換預託という)もあります(商品取引所法179条2項)。
 後者の場合、顧客から商品取引員への預託と、商品取引員から清算機関への預託との二段階となりますが、このうち第一段階の部分(顧客から商品取引員に預託する金銭等)を「委託証拠金」と呼んでいます。

【取引本証拠金】
 取引本証拠金は、委託者が新規の買建て又は売建ての委託をするときに預託する基本的な証拠金です。略して「本証」といいます。
 本証拠金の金額は取引金額の数%です。逆に言うと、取引金額の数%の本証拠金で取引を行うことができるわけです。そのため、先物取引では、取引金額が証拠金の額に比べて非常に高額となります。

【取引追証拠金】
 取引追証拠金は、既存の建玉がその後の相場変動により損計算となり、その損計算額(これを「値洗い損」といいます)が既に預託済みの取引本証拠金の半額を超えたとき、担保不足を補うために委託者が追加して預託する証拠金です。略して「追証」(おいしょう)といいます。

【取引定時増証拠金】
 取引定時増証拠金は、建玉が当月限となったとき、担保補強のため預託を求められる証拠金です。略して「定時増」(ていじまし)といいます。

【取引臨時増証拠金】
 取引臨時増証拠金は、相場の変動が激しい場合等に、過熱化を抑制するために徴収される証拠金で、取引所が商品の種類、限月等を指定して額を定め、取引所が定めた日時までに委託者が商品取引員に預託することになります。略して「臨時増」(りんじまし)といいます。