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日本漢文へのいざない |
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第一部 日本文化と漢字・漢文 |
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第五章 読解のための漢文法入門 |
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第2節 詞と短語 |
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(12)述賓短語4 比較の表現 漢文では比較の表現(comparison)は、述賓短語を用いた第2句式になります。漢文の形容詞には「比較級」(comparative)、最上級(superlative)の形態上の変化はありません。比較は介詞や副詞により示されます。
まず、形容詞の賓語が比較の対象を示す場合を取り上げます。この場合は、賓語の前に介詞「於」を置きます。
【例句1】 苛政猛於虎。 (訓読)苛政は虎よりも猛し。 (現代語訳)暴政は虎よりも恐ろしい。 (参考英訳)A tyrannical government is more fearful than a tiger.
苛政 猛 於虎。 謂詞 賓語 └───────┘ (述賓短語) 主語 謂語 (第2句式)
【例句2】 死重於泰山。 (訓読)死は泰山よりも重し。 (現代語訳)死は泰山よりも重い。 (参考英訳)Death is heavier than mountain.
死 重 於泰山。 謂詞 賓語 └───────┘ (述賓短語) 主語 謂語 (第2句式)
このように、形容詞の賓語が比較の対象をあらわす場合は、その前に介詞「於」を置きます。(まれに「於」がない形もあります。) この「於」は、英訳の「than」にあたるものであり、古くから「~よりも」と訓読されてきました。広池千九郎博士は明治39年刊行の『支那文典』に、「~よりも」の訓読について次のように述懐されています。昔の私塾における漢文教育が素読中心の経験主義的なものだったことがよく分かり、興味深いものがあります。(同書645ページ。現代表記に改めて引用。)
「於」の一類を、「ヨリ」と和訓する事は、古くより発明せられては居(い)たれど、これが如何なる語と会せし時に、かように和訓して宜しいかという規則は、発見せられて居(お)らざりし為に、私共が私塾に在りし際には、実に「於」の用法には五里霧中に迷うの感がありました。因(よっ)て、私は、これに向(むかっ)て、刻意研究の結果、「於」字が、形容詞の下に置かれて、甲乙二物の優劣の比較を示す場合に、かように「ヨリ」と和訓せらるるものなる事を発見したのです。
第二に、動詞「如」(「ごとし」と訓読)を使う句式があります。これは、同等であることを示し、英語の「as~as」に似ています。
【例句3】 幼安与文与可遊、如兄弟。(蘇軾『石氏画苑記』) (訓読)幼安、文与可と遊び、兄弟の如し。 (現代語訳)石幼安(せき・ようあん=人名)は文与可(ぶん・よか=人名)と交遊していて、兄弟のような仲であった。
幼安 [与文与可] 遊、 如 兄弟。(蘇軾『石氏画苑記』) [状語] 謂詞 謂詞 賓語 └───────┘ └───────┘ (状中短語) (述賓短語) 主語 謂語 謂語 (第1句式と第2句式の複句) ただし、上の句では、第1の謂語の状語「与文与可」は、文脈上、第2の謂語にもかかっています。ですから、もしこの句が二つの謂語を持たず、第2謂語だけを謂語とする句であるならば、次のようになるところです。 幼安 [与文与可] 如 兄弟。 [状語] 謂詞 賓語 └───────────┘ (状中短語) └─────────────────┘ (動賓短語) 主語 謂語 (第2句式)
ついでに比較の最上級を漢文でどのように表現するか見ておきましょう。(ただし、これは第1句式です。) 【例句4】 其西南諸峰、林壑尤美。(欧陽脩『酔翁亭記』) (訓読)其の西南の諸峰、林壑尤も美なり。 (現代語訳)その(滁州の)西南の峰峰は、林や谷がもっとも美しい。
このように形容詞の前に、「最」「尤」などの副詞を謂詞の前に置いて最上級を表します。
[其] [西南] [諸] 峰、 林壑 [尤] 美。 [定語] [定語] [定語] 主語 主 [状語] 謂 └─────────────────┘ └────────┘ (状中短語) └───────────┘ (主謂短語) 主語 謂語
(図式の単純化) 其西南諸峰、 林壑 尤美。 主 謂 └───────┘ (主謂短語) 主語 謂語 (第1句式)
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公開日:2007年7月16日 |
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