蜂蜜と鞭

はちみつ太郎 作

70 色々な匂い

「まぁ・・入れ。」

「失礼します。」

「ごくろうやったな。」

「いえ・・・昔のなじみが多いので・・・。」

「そうか・・情報を仕入れるのも裏道を歩く極意かもしれんからな。」

「・・・。」

「せや、おまえに・・褒美をやらなアカンけど・・・・。」

「・・・いいえ・・・滅相もない。」

「遠慮するな・・・せやなぁ・・・どや、・・・今日おる備品・・・どれでも選べ。」

「えっ?」

「金山・・・何番がおるねん?」

「・・・・・。」

「おいっ・・・・仕事の出来ん男やなぁ・・・。」

「すんません・・・えぇ・・・16・・19・・24・・26です。」

「4人か・・・お前の担当は26やったな。」

「はい。」

「3人の中から・・選べ・・・朝まで・・・楽しんだらええがな。」
 大島は加山佳乃以外の備品の顔写真をディスプレーに映し出す。どれも若妻らしき顔写真のなかに、婦人警官のコスチュームを着させられた女が佐々木の目に飛び込んだ。

「・・・。」

「どれでもええ・・遠慮するな。」

「・・・。」

「なんや・・・・もしかしてお前・・・・。」
 佐々木の表情からなにやら察した大島が笑みをうかべ佐々木の顔を覗き込む。

「・・・男色か?」

「・・は、はい。」

「そ・・そうか・・・そら、あかん。・・うちは男の備品仕入れてなかった・・・。」

「金山でよければ・・・尻の穴くらい貸したるけど・・・どないや。」

「・・・・。」

「不満なようや・・・それじゃぁ、お前に一部屋やる。・・・わし直属の部下や・・ええな。」

「はい、ありがとうございます・・・配送と監視の方は?」

「そのまま続けてくれ・・・これと思う人材がおったらスカウトせい・・そいつと交代したらええ。」

「わかりました・・・・では、配送がありますのでこれで・・・。」
 扉に向かった佐々木に対し、静止を促す。

「・・これ、持っておけ・・・。」

「・・これは?」

「幹部用のIDや・・・。」
 佐々木は、涼しげな顔をしたままカードをポケットに入れると一礼をし、扉の外へ出た。廊下を進みEVの扉の前で立ち止まると、あたりを見渡し画面の中にあった備品24神山愛の変わり果てた風貌に、眉を細め扉が開くのを待った。

「・・・我慢してくれ・・・神山。」
 このフロアーのどこか重い扉の向こうに囲われた部下の安否を念じながら佐々木は、EVの中に消えた。


「・・・いいんですか部長。素性のわからん男・・上に上げても。」

「お前の素性もわしは、よう知らんぞ。・・・すくなくともお前より使えそうな男や。」

「・・・・。」
 金山は、大島の言葉を冗談としてしか受け止めていなかったが、言葉を発した大島の心のうちは本音に気がつかぬ金山の眼力のなさに辟易としていた。

「・・・田辺とか言う男の始末・・・終わったら電話せい・・・わし帰るからな。」

「・・は、はい・・神崎組から電話が入りましたらすぐに・・・お疲れで・・・・し・・た。」
 大島は金山の最後の言葉を聞くことなく部屋を跡にした。備品にも手をつけずに帰宅する大島のご機嫌の悪さだけ、嗅ぎつけることが出来た金山は、佐々木に対する嫉妬心をゴミ箱にぶつけた。



 大島から幹部用IDを受け取った2時間後、佐々木は3日間の嗜好研修を終えた佳乃を研修所から自宅へと配送していた。自宅付近へ到着するなり佐々木は佳乃に袋入りの新品の下着を差し出した。

「おい、NO26!ノーパンで家に戻すわけにいかねーからよ、これ穿きな!」

 と、言うと佳乃はびっくりした表情で、

「え、本当にいいのですか?」

「ばれるわけに、いかねーんだから、早く穿け!」
 命令口調のなかにも一瞬のやさしさが佳乃には垣間見えた。

 後ろ手の手錠をはずすと、こそこそと佳乃はデニムのズボンを脱ぎ捨て、佐々木の買ってきたコットン生地のグレーの下着を手で少し肌触りを確認する。

 そして三日間の研修でデリケートゾーンを隠しつづけた汚れピンクの下着とは、別世界の感触を味わった。
「680円だが、気に入ったか?」と佐々木が問う。

「はい、監視員様ありがとうございます。」と涙ぐみながら答えた。

 ズボンを穿き終え、涙をぬぐうと、佐々木が、
「忘れるとこだった。」
 と佳乃の頭を下げさせ、バーコードリーダーのようなものをうなじに当てる。

「ピー・・・ピピ。」
 電子音が鳴り赤いの送信ボタンを押す。佐々木は深々と息を吸い、

「会員様との研修が終わって風呂にはいったのか?匂い嗜好会員様の嫌いなシャンプーのいい匂いがするぜ、NO26よ。旦那にはばれないようにタバコの煙、つけといてやるよ。ふー。」
 と白い煙が佳乃にまとわりつく。

 佐々木がスライドドアをあけ、外の様子を伺い誰もいないのを確認すると、佳乃に降りるよう促した。すると佐々木の端末が、音を立てた。

「ん。はやいな。」
 佐々木はつぶやき、佳乃にむけて声を掛けた。

「おい、次の研修は来月の第三月曜日から2日間だとよ・・。」

 七月も終わりが近づいた今日、三週間程の休息があたえられ、安堵とゆうより三週間怯え続けなければならない精神的不安のほうが強い。

 佳乃は聞いたか聞かないかわからないそぶりで肩を落とし家路へと歩を進める。途中、食い込み気味の下着を元に戻すように、指先で引っ張る姿に、佐々木は、「安すぎたかな。」と心の中でつぶやいた。


「・・ただいま・・・。」
 佳乃は、友佳が寝ているのを気にしてか小声でただいまを言いながら靴を脱いでいた。廊下の奥からは、テレビの音が聞こえ友之がスポーツニュースをつけたまま佳乃の元へ近づいてくる。

「おかえり・・遅かったな・・・タクシー拾えなかったの?」

「う、うん・・・結構並んでたから・・・あ、だめ・・お、お風呂に・・あんっ。」
 友之は久しぶりに自分の妻に女を感じ、カバンを廊下に置いた佳乃に正面から抱きつきキスをする。
 デニムの上からでは飽き足らず、ベルトをしていない隙間から手をしのばせ、穿いて間もないグレーの下着に手を這わす。

 妻の動揺に気がつかない夫だったが、首筋辺りに舌先を這わした友之は、佳乃が欲した風呂場へのこだわりと違和感ある匂いに気がつく。

「・・・佳乃・・シャンプーの匂いするけど?」

「そ・・そう?宿舎のシャンプー・・香料がきつかったからかなぁ・・・タ、タバコ臭いからシャワー浴びさせて・・ね。」

「じゃぁ・・おれも一緒に・・・いいだろ。」

「・・・うん。」
 荷物を置いた佳乃は、そのまま脱衣場に向かう。

「パパ・・・先に入ってて・・・。」

「あぁ・・・。」
 そそくさと服を脱ぎさる友之は、半勃起の陰茎をぶらつかせながらUBの中に入る。シャワーの音が聞こえ始めるとようやく佳乃は、服を脱ぎ脱衣かごに入れる。佐々木から受け取り数分前に穿かされた汚れのない下着をそっとデニムの下に隠すと友之の待つ湯気の中に引き込まれた。

 バスタブに尻をつけ半勃起した陰茎を剥きあげる友之に目を背けようと佳乃は反射的にしかけた。が、嗜好会員でもない夫の行動を拒むわけにもいかず、ましてや疑問をいだいた匂いのことを問いかえられることを恐れ、大島らが欲する行為を能動的にし始めた。

「・・パパ・・大きくなってるね。・・・パクッ。」
 結んだ髪の毛を解くことなく膝まづき、剥きあげた友之の亀頭に舌を添え先端のみを口内に頬張った。小さめのイチゴを一粒口の中に入れ転がす程度の仕草に、友之は興奮し血流は増していった。

「ペロッ・・チュッ・・・チュパ。」

「・・・・溜まってんだ・・・あっ・・・気持ちいぃぃ。」

「ジュルッ・・ジュルッ。」

「・・・お、奥まで・・・咥えてくれよ・・なっなっ。」
 佳乃は、友之の懇願する目を見つめ、口を離さぬまま陰毛生えそろう根元付近まで咥え込んだ。

「ジュポッ・・・ジュルジュル。」
 鼻先をくすぐる友之の陰毛は、買い置きのシャンプーの匂いがし佳乃の帰りを待っていたことがわかる。

「・・・・ふっぅぅ・・・。」

「ジュジュ・・・ジュル。」
 佳乃の頭の動きが次第に大きくなり始めると、友之の両の手は佳乃の後頭部に廻り前後運動のサポートに回った。

「・・・あぁ・・・いぃぃ・・・あっあっ・・・・出・・出る。」

「ズポッ・・・ジュルッポッ・・・ズポッ。」
 友之が大きく背中を逸らすと同時に、佳乃の視線は仰け反った友之のあご下を見据える。友之が目を瞑った瞬間に熱くどろりとした愛する夫の精液を咽喉奥深く受け止めた。

「・・はぁはぁ・・まだ出るよぉ・・・はぁはぁ・・・。」
 射精することで少し昂ぶりの収まった陰茎から唇を離すと、蛇口をひねり口内に溜め置かれた友之の精液を一度手に受け、排水口へと流してしまう。それを見た友之の切なそうな顔に、佳乃は気付くことはなかった。

「・・・パパ、早かったね。」

「・・・溜まってるからな・・・浮気してない証拠だよ。」

「そうね・・・濃いかった・・・ドロドロしてた。」

「佳乃・・・跨れよ・・・このまま・・・まだ、いけそうだよ今日は・・・。」

「・・・・。」
 友之の誘いに恥らいながら小さく頷いた佳乃。屹立した友之の先端を三日間の嗜好研修中、変態に匂いだけをかぎ続けられ、完熟したまま放置されたマンゴーの裂け目に押し当てる。

「・・あんっ・・・パパ・・いっぱいして・・ねっ・・・ねっ。」
 佳乃は、友之の首筋に腕を巻きつけると自ら唇を重ね舌先をねじ込む。性感を昂ぶらされ続け挙句の果てに性感の解放をさせられずに三日間苦悶した佳乃の性衝動は、愛する友之によって解放されることを望んだ。

「あぁ・・・佳乃・・中が・・熱い・・・。」

「・・・あはぁぁぁ・・・い、言わないでぇ・・・欲しかったんだから・・・。」

「いつもと違って・・濡れてるな・・・。」

「はぁぁん・・つ、突いて・・・いっぱい・・・突いて。」
 乾き気味の佳乃の膣孔しか知らない友之は、嗜好研修にて牝肉へと変化させられ続ける佳乃の肉壁を下半身で感じ取り満足気味であった。膣液の分泌は、匂い嗜好研修にて焦らされた牝の本能から来る物で粗末な友之の陰茎を期待しての佳乃の分泌ではなかった。

「・・あんっ・・・もっと・・パパ・・・もっと奥を・・ねっ・・あぁぁ。」

「ハッハッ・・・こ、こうか・・佳乃・・・気持ちいいよ・・・。」

「うんっ・・・もっと・・・あぁぁん。」
 いつも以上に積極的に腰を打ち付ける佳乃に圧倒されながら、対面座位の形で交じり合う夫婦は、喘ぎ声をかき消すように唇を重ね密着していく。

「チュッ・・・はぁぁん・・・チュチュッ・・・ふぅぅぅ・・あっあっ。」
 重なり合う唇もピストンの動きに耐えられず合間合間に高ぶりの声が漏れる。友之の性衝動よりも佳乃の性解放のほうが強いのか、佳乃の唇は一旦友之から離れ、夫の鎖骨辺りに噛み付いた。その甘噛みに友之の動きも大きくなり甘噛みはしだいに歯型がつくほどの力が加わっていった。

「あぅっぅぅ・・・。」
 佳乃を挿入したまま抱きかかえ、洗い場の床へと横たえる。挿入したまま友之は上になり大きく足を広げた佳乃に覆いかぶさり腰を打ち付ける。

「あっ・・あっ・・・パパ・・部屋で・・。」

「友佳が起きちゃうから・・・ここで・・・いいだろ。」

「・・・・あぁ・・う、うん。」
 風呂場で横たわった瞬間に、横山老人にいたずらをされた懲罰研修を思い出し、風呂場からの移動を促したが、友之の言葉に反論もできずに深々と陰茎を受け入れた。

「はぁぁ・・はぁぁ・・あっあっ・・・はぁぁ。」
 喘ぎ声は絶え間なく続きはするが、小波が打ち寄せる程度のもので、津波のようなものはこない。夫もピストン運動に集中しすぎていて小波を大波に変える乳房などへの愛撫は、期待できないでいた。

「・・はっはっ・・・いいか?・・・・おれ、すげぇ気持ちいいよ。」

「う、うん・・・いいよ・・パパ、私も・・あっ・・・あんっ。」
 小波をいくら合わせても大波にはならず、友之のものでは絶頂の入り口すらノックできなくなっていた。佳乃は、再び友之にしがみつき対面座位を熱望するように腰を押し当てる。首筋に腕を回し自らも夫のピストンに合わせ膣奥へ陰茎を呼び込もうと必死だ。

「・・は、はぁ・・・おいっ、佳乃、激しいよ・・・・。」

「・・だって・・パパと久しぶりだから・・・。」

「そ、そうだな・・・お、そろそろ・・・イキそうだ。」
 その言葉に佳乃は、夫へ身を預けるようにきつく抱きしめ重なりを密にする。友之のピストンがもっとも激しくなった瞬間、正当な権利を持った熱い遺伝子たちが我先にと放出された。

「はぁぁ・・・・・・・佳乃・・・よかったよ・・・はぁぁ。」

「・・パパ・・熱いよぉ・・・いっぱい出た?」

「あぁ・・・尿道が痛いくらいだよ。」

「・・・洗ってあげるから・・。」

「ありがとう・・・。」
 友之は再びバスタブに腰を下ろすと絶頂がとけ、だらりと垂れ下がった陰茎を佳乃の眼前にさらした。亀頭からは薄くなった精液が一滴零れそうになるが、佳乃はそれに気付くことなくぬるめのお湯をシャワーから噴射させ亀頭の汚れを落とし去った。数秒ほどの作業は、友之には物足りなく、いつも以上の激しさだった佳乃の性衝動に期待してか、商売女のサービスもどきを期待してしまっていた。

「ジャァァァ・・・・・キュッ。」

「・・・俺、先にあがるわ・・・チュッ。」

 洗い流し終えた亀頭の皮を友之は立ち上がり際に戻し、佳乃の舌先に軽く触れると名残惜しそうに風呂場を跡にした。

「・・・・ガチャッ。・・・・・バタンッ。」
 友之は、中で木霊するシャワーの流れる音が聞こえ始めると、脱衣場から立ち去った。しかし、15秒ほど間をおいて再び脱衣場へと足を踏み入れた。

「ザァァァァァ・・・・・」

「・・・パサ・・パサッ。」
 友之は、何気なく聞き流した佳乃の言葉「パパと久しぶりだから」という言葉に引っかかりを感じていた。その言葉の真意を確かめるように、佳乃の脱ぎ去った下着の入った脱衣かごに恐る恐る手をかける。

「・・・・・。」
 見つけたグレーのコットンの下着は、汚れることなくまだ新しげな触感が鈍感な男にも感じ取れた。

「・・・新しいのか?」
 友之は、佳乃の匂いを確かめるべく下着の股布の厚い部分を裏返しにし、麻薬探知犬のように嗅ぎ取った


「・・・・一日穿いてたのか?・・・どこかで・・・・まさか。」

 友之や佐々木の臭覚は、色々な混濁した匂いを嗅ぎ分けようとし始めていた。
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
2010.2.20掲載
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