|
1 女を介抱しているうちに
俺は、ねじろ(拠点)を色々と変える。
公衆トイレの裏とか。
ガードレールの下とか。
橋の下とか。
ひとりというのは寂しい。しかし、ホームレスの仲間と、ベッタリというのも、時々嫌気がさす時があるのだ。
その点、公衆トイレの裏側というのは、穴場だった。
実際、臭い匂いがする。
だから、公衆トイレの裏側には、めったに人がやって来ない。
しかも、トイレの建物の中に入ると、手洗い場に、水道の蛇口があり、簡単に水が手に入るのだ。
そして、不思議なことだが、その市の管理する公衆トイレには、手洗い場の横にコンセントがあった。
市役所の人間か、あるいは市役所から委託を受けた清掃業者が、電気クリーナーでトイレ掃除をするときにでも使うのであろうか。
が、ともかく、そのコンセントからコードをつなぎ、電気ポットで、お湯を沸かすことができた。
それに、くさいとはいえ、ここは、こんもりとした茂みになっており、めずらしく、土の地面なのである。コンクリートではないから、夜は比較的暖かいのである。
もっとも、その茂みから前の方に2,3歩も進むと、その先はゆるやかな崖になっており、そのコンクリートの崖を3,4メートルも斜め下に降りていくと、大きな川の流れに手で触れることができた。
ある日のことだった。
めったにないことだが、俺は夜中に目を覚ました。
蛍光塗料の置時計を見る。
針は、午前1時を回っていた。
そして、俺は尿意を感じたのだ。
暗くなってからのことだった。あるスナックの裏手にあるビール瓶置き場をあさっていると、底にかなりの飲み残こしのあるビール瓶が5,6本もあったのだ。
今年の夏は暑かった。
9月になっても、例年の8月のようで、日中、30度を超える日が続いていた。
10月も暖かかった、まるで例年の9月のように。
しかし、10月も下旬になると、さすがに夜は冷えてきた。
俺は起き出し、ぐるっと回って公衆トイレの建物の中に入る。
と、横合いの大便用のトイレが大きく開いている。
ここは、いつもはたとえ、中で用を足している人間がいなくても閉じられているのだ。
用をしていないときは、ドアの取っ手のところに青い表示が出ている。
そして、中で人が用を足している時は、そこが、赤になっているのだ。
不思議に思い、俺は、からだをかがめた。
と、中に、女がいるではないか。
間違えたか、寝ぼけて、女子トイレと…。
急いで、右横を見る。
確かに、男性用の、立っておしっこをする便器が、3つも立ちに並んでいる。
間違ってはいない。
確かに、俺は、男子用トイレに入っているのだ。
相手が間違っている。
俺は、目をこすった。
女が、ひざまずき、洋式トイレの便器の中に、頭を突っ込んでいる。
俺は、ドアに近づき、女の様子をさぐった。
「うーん、うーん」
女が、うめき声を上げている。
「どうしたんや」
俺は、トイレの中に入り込んだ。
そして、女の上半身を持ち上げた。
臭い匂いがした。
女は、口から、何か吐いているようだった。
女の顔を見る。
呆けたような顔をしていたが、色が白く、鼻筋が通り、眉が濃かった。
俺は、顔を覗き込むようにして女に聞いた。
「吐きたいのか?」
女が、目を閉じたまま、うなずいた。
俺は、女の首根っこに左手を当て、女の口の中に、右手を突っ込んだ。そして、中指をノドちんこ辺りの奥まで差し込んだ。
「ウッ、うううう、うっ」
女がうめく。
しかし、俺は、指を突っ込んだままにしていた。
そして、指を突っ込んだまま、女の首根っこを押さえ込みながら、女を四つんばいさせた。
俺は、空いた左手で、女の背中を撫でてやった。下の腰のあたりから、上の肩口のあたりまで、力を込めて、擦り上げるようにして撫でて行く。
「うっ、オッ、エ−ッ」
女が吐いた。
俺の右手の甲に、ヌルっとしたものが、かかった。
俺は、今度は、背中をゆっくりと、静かに優しく撫でてやった。
女が深い息をした。
俺は、女の口から自分の手をゆっくりと抜いた。そして、手の甲を見た。白い液だった。それに、泡っぽいものが加わっている。
もう胃の中に、食べ物はないようだ。
食べたものは、すべて出し切り、そして最後に、胃液が出て来たのだろう。
四つんばいになっていた女を、俺は仰向けにしてやった。
そして、俺は、腕の中で、抱きとめてやった。
女はぐったりとなって、からだを俺の胸にあずけてきた。
これでは歩けない。
俺も、酒を飲みすぎて吐いた経験が何度もあるのだ。
こんなにまで吐くと、実際、動けないのだ。
ちょっとでも動くと、気持ちがわるくなる。
俺は、トイレのタイルの上に座り込み、ずっと、彼女を抱いてやっていた。
深夜だから、このあたりに人は来ないはずだった。
それに人が来たところで、どういうことはない。
俺は、別にわるいことをやっているわけではないのだから。
と、俺は、眠くなってきた。
ここの、冷たいタイルの上で寝るわけにもいかない。
俺は、彼女を背負った。
そして、俺のねぐらに連れて行ったのだった。
ねぐらといっても、周りを木で囲い、その立ち木の上に、横木を載せ、さらに、その横木の上に、小枝や葉っぱの付いた木を載せただけの屋根だった。
床といえば、丸太のような木を地面の上に隙間なく並べ、その上に、ダンボールの型紙を敷いただけのものだ。
なかの広さといえば、たたみ2畳(じょう)分しかない。
ランプを灯(とも)す。
昭和の頃に炭坑夫が使ったとでも思われるような、古くさいランプだった。
燃やす油は、スナックの裏に捨ててある、プラスチック製ボトルの底にわずかに残っている天麩羅あぶらをビール瓶に詰めて集めたものだった。
ランプの光でもって、俺は、ダンボールの床の上に、もう一枚毛布を敷いた。
そして、女をその毛布の上に乗せた。
俺も、寝ころがる。
なかは狭いのだ、自然と体とからだがくっつき合う。
俺は、すぐ近くにある彼女の顔をながめた。
色白の美人であった。
が、何かが匂う。
見ると、彼女の黒いスーツの上着の胸元に汚物がべっとりと付いていた。
公衆トイレで抱いているときは、他の匂いで打ち消されていたのであろうか。でも、今は、その汚物がが、強烈な臭いを放っていた。
俺は、汚物が臭くて眠れない気がして、女のからだから、そのスーツを脱がしていた。
が、まだ、何かが匂っていた。
よく見ると、スーツのスカートにも、汚物が付着していた。
俺は、スカートも脱がしていた。
俺は、寝ようと思って、目をつむった。
しかし、女のスーツ(洋服)に、こびりついた汚物の匂いが気になってなかなか寝付かれない。
ついに俺は起き出していた。
洗濯粉をスーツに掛け、洗濯粉がこぼれないように気をつけながら、小屋の外に出て、斜面を降り、川の水辺の方に降りて行った。
俺は、スーツをよく絞り、枝に掛け、手でパタパタと叩きながら、かつ、皺にならないよう、広げるようにして干した。
小屋に戻った。
彼女はよく寝ていた。スースーと寝息を立てながら。
もう一枚、毛布があった。それを掛けてやろうと思った。
そのとき、彼女が、寝相を変えるかのように身をよじった。
と、女は立て膝になっていた。
俺は、胸がドキッと鳴ったような気がした。
心臓というか、心が震えているのだ。
(女は、よく寝ている。何をしてもわからないぐらいに…)
そんな、もうひとりの俺の声が、耳のほんのちょっと上の方でした。
俺は、急いでランプを手にした。
ランプを女の股間の方に近づける。
ストッキングが膝頭のところで、破けていた。
そこに血がにじんでいる。
俺は、ストッキングを脱がせていた。
血の滲んでいる膝小僧のところを、拾ってきてストックしてあった濡れティッシュで拭き、そこに『傷用リバ・テープ』を貼ってやった。
そのとき、膝を立てていた彼女が、その膝を左右に広げたのだった。
白いパンティが見えた。
そして、その白いパンティの脇から、何やら、黒い糸のようなものが、はみ出していた。
俺は、自然と、そのまたぐらの中に、顔を近づけて行った。
とてもいい匂いがした。
こんな匂いを嗅いだのは、10数年ぶりのような気がした。
俺は、顔を上げた。そして、彼女の顔色をうかがった。彼女は目を瞑り、口をちょっと開けながら、寝息をたて、よく寝ていた。
俺は、顔をさらに彼女のパンティに近づけていった。
いい匂いだった。それはまさしく女の匂いであり、雌の匂いであった。決して、おしっこのそれではなかった。
俺は、すでに勃起していた。
パンティを脱がしたかった。
そして、女の恥毛の匂いや、クレヴァス(亀裂)の中の匂いを嗅ぎたかった。
しかし、そんなことをすれば、女は目を覚ますであろう。
俺は、がまんした。
俺は再び寝ころがった。
ランプは点けたままにしておいた。
そして、目を瞑った。
と、俺は、昼間のことを思い出していた。
俺は、河原で、食パンの耳をかじっていた。
ベーカリーの、めがねを掛けたおやじと、世間話をするようになっていた。
日本の食糧自給率は、今や、40%を斬るになっただとか、老舗の餡ころ餅屋の“あ○福”はとんでもないことをやって消費者の信頼を裏切っただとか。
そのパンの耳を食べている最中に、いつもの奥さんがやってきたのだ。
「こんにちは、重原さん!」
(この人は、なんて、無防備な人だろう)
いつも俺はそう思う。
胸は、ツッンとばかり突っ張り、お尻は、キュンとばかりに跳ね上がっていた。
いつも、俺は、それをまぶしそうに見ていた…。
「いいお天気ですね。台風20号は、もう、三陸沖の方に逃げましたかね」
俺は、愛想を言っていた。
「これからだんだん寒くなるわ。からだには十分気をつけてね」
(俺なんか、そんなひとさまに心配してもらうほど値打ちのある人間じゃない)
「ありがとうございます」
しかし、俺は、頭を下げた。
(俺は、この人のことが好きなんだろうか)
俺は、黙ってうつむいていた。
と、奥さんは、犬に引きずられるようにして、離れて行った。
そして、俺はまた、食パンの耳をかじりはじめた。
(いい奥さんだなぁ。しかし、これは、俺の、プラトニックな片想い。どんなことがあったって、『好きだ』なんて、言ってはいけない。いや、そんなことを言う資格なんて、俺にはないんだから…)
と、俺は、そばに寝ている女が、寝返りを打ち、こちらを向くのに気が付いた。
女の寝顔を見る。
起きているわけではない。よく眠っている顔だ。
狭いところなのだ。どうしても、くっついてしまう。
俺は、女を、自分の胸に抱き止めるという格好になってしまっていた…。
俺は、女のおっぱいを胸に感じていた。
俺は、すでに勃起をしていた。だから、腰を後ろの方に引いていた。
しかし、女のからだから、雌の匂いが立ち上って来るのだ。
がまんができにくくなっている。
トイレの匂いはがまんできるのに…。女の匂いには、どうしても…。
徐々に徐々にではあるが、俺は、自分の腰を前に前にと、押し進めていた。
スボンの上からではあるが、俺の股のところが、しっかりと、女の股間に密着していくのがわかるのだ。
これは、明らかに意図的なものだった。
これでは、女が目を覚ます。そんなことはわかっていた。しかし、からだは、そのままだった。
密着していると、なぜか、股間全体が熱くなってくる。
そして、気持ちがせよかった。
俺は、さらなる快感を求めているらしい。気がつかないうちに、じわじわと、おのれの股間を、さらに女の股間へと、しっかりとくっつけていきつつあるのだ。
俺は、手をにぎりしめていた。
決して、彼女の肩に手を置いたりはしていなかった。
女が、身をよじる。
すると、女の方から俺の股間にしっかりと密着してくるような気がした。
女は気が付いているのか、俺がエッチな行動を取りつつあることを。
しかし、寝顔を見るかぎり、意識があるというわけではない。
俺は、顔が赤くなるのを感じていた。なぜなら、俺はエッチなことを止められないでいるからだった。
俺は、顔を赤くしながら、もじもじと、腰を動かしつつあった。
腰を動かすと、ズボンの中のアレがとても気持ちがよかった。
俺は、目を瞑っていた。
(あっ、奥さん!)
俺は、いつの間にか、目の前に、犬を連れて河原を散歩する奥さんの顔を思い浮かべていたのだった。
もはや、目の前の女に気付かれるのではないかという心配など、消え失せていた。
俺は、手は使わないけれども、腰をしっかりと使っていた。
(あああ、奥さん、好きです、好きです)
目の前で火花がはじけた。
溜まっていたのだろう。
俺は、パンツの中に、激しく射精していたのだった。
(つづく)
|