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9 しかし亜理紗は昨夜までと同じように、いや昨夜まで以上に激しく乱れていたため、俊介は何も言えなかった。 不思議な感覚の中で俊介は果ててしまった。 馬乗りになった亜理紗は顔を俊介に近づけてきた。 (フゥ〜〜…) 亜理紗が俊介に息を吹きかける。 その息が北風のように冷たい。 俊介は自分の身体が次第に凍てついて行くように思った。 「俊介、あなたが好き…あなたを東京に帰したくない…ずっとこのまま…」 亜理紗はそれだけを告げたあと、急に俊介から離れて涙声で言った。 「できない…できない〜!私にはとてもできないっ!さようなら、俊介さん…さようなら…ううう…」 亜理紗は訳の判らないことを口走りながら、襖を開けて玄関から廊下に出ていってしまった。 それも全裸で…。 俊介は呆然としていた。 亜理紗にいったい何が起こったのか、彼女が口走った言葉の意味は何だったのか? 全く不可解なままその夜は過ぎていった。 翌朝、朝食を運んで来たのはいつもと同じ女将であった。 そう言えば亜理紗が、食事を運んできたことは一度も無かった。 俊介は女将と話す際、亜理紗のことを聞きたいと言う衝動をずっと抑えていた。 まさか女将の娘と恋に落ちて、夜毎抱いているなんて言えるはずもない。 しかし、お世話になったこの旅館とは今日でおさらばだ。 俊介は思い切って、亜理紗のことを聞いてみることにした。 「女将さん、とてもお世話になったね。また機会があればお邪魔するのでよろしく頼みます。ところで…娘さんのことだけど、昼間は全く顔を見せないけど、どこかに行ってるの?」 「え?むすめ・・・?娘って私の娘ですか?」 「ええ、もちろん女将さんの娘さんですよ。」 「確かに私には娘はいますが・・・でも、今は関西の方に嫁いでいるんですけど。昨夜も電話で長話をしてしまって。で、その娘が何か…?」 「な、何だって!?娘さんは関西に嫁いでいるって!?娘さんは他にはいないのですか?」 「はい、私の子供は息子1人と娘1人だけですが・・・。それが何か?」 「そうですか。妙なことを聞きますが、この旅館には女将さんの他にどのような方がおられるのですか?」 「は、はい。最近はお客さんも少なくなったもので、従業員らしい従業員はほとんどいないんです。私以外には夫と板前、それに仲居だけなんですよ。」 「仲居さん?おいくつぐらいの方ですか?」 「今年55歳になりますが。」 |
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10(最終回) 「19歳ぐらいの若い女性はいませんか?」 「はい、いませんが…。ま、まさか…」 女将の顔色が見る見るうちに青くなって行った。 「車井原さん…こんなことを言うのも何ですが、あなたが見られた女性はもしかしたら…」 「もしかしたら?もしかしたら、何なんですか!?」 「いえ、そんな事はあり得ないですね…。車井原さんは相当お疲れだったんです。きっと悪い夢でも見られたのだと思いますよ。」 「女将さん…、教えてください。」 女将は言うべきか言わざるべきかかなり迷ったようだが、ついに意を決したのか、驚くべきことを俊介に語り始めた。 「車井原さんがお越しになられた目的は雪女伝説でしたね。今でもね、たまに出る…と言う噂があるのです。私は信じてませんがね。何でも好みの男性がくれば、人間に化けて夜を共にする。そして精を吸い尽くし、最後には氷の息を吹き掛け、殺してしまう…と言われているのです。」 「女将さん…それじゃ僕はその雪女に遭ったんだ…遭っただけでなく夜毎…」 「いえ、その先はおっしゃられなくても大体判ります。とにかく東京にお帰りになられたら、すぐに祈祷師の所に行かれた方が良いと思います。」 「祈祷師ですか?ええ、でも僕は死ななかったですよ。」 「それは余程運が良かったのか、それとも雪女があなたのことを真剣に愛してしまったのか…私には判りません。どちらにしても充分気を付けてくださいね。」 俊介は女将に丁重に礼を述べ、小千谷を後にした。 女将は俊介が帰った後、部屋の掃除をしたが、不思議なことに布団が水を打ったようにぐっしょりと濡れていることに気づいた。 そればかりか、明らかに俊介のものではない長い髪の毛が数本白いシーツに付着していた。 一方、俊介は帰った後、1日掛けてレポートをまとめ上げ、企画部長に提出した。 その際、亜理紗とのことは当然ながら一切レポートには記さなかった。 亜理紗とのことを書けば、きっと面白いネタとして取り上げられるだろう。 もしかしたら他の報道陣までがこぞって現地を訪れ、亜理紗を探索するかも知れない。 しかしそれは絶対に避けなければならない。 あの8日間にわたる亜理紗との艶やかな秘め事は、そっと胸に仕舞っておきたかった。 (亜理紗…また君に会いに行くよ…きっと…) (完) ![]() 作者 Shyrockさん 雪むすめ 亜理紗さん |
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| 2005.2.28掲載 |
| 小説提供『愛と官能の美学』様 | |
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