たべもののはなし 5月27日号
ホットドッグ
子供の頃、外の屋台で買って食べるホットドッグが大好きだった。
というか、あれは外の屋台でしか売っていなかったようにも思う。
割り箸のような太い串に刺さっていて、熱くてやや固めのサクッとした
薄茶色の衣で、ケチャップを塗りつけているやつを垂らさないように気をつけながら
(でも最後にはたれてしまうのだが)サクッとかじる。すると衣の中から顔を出すのは
薄いピンク色の魚肉ソーセージ。
なんだか洋風な感じがなんとも言えず、好きであった。
え? と思っている、そこの貴方。
そうなのです。これはホットドッグでは無い。
でも作者がガキの頃は、これが「ホットドッグ」って名前で売られていたのだ。
で、ジャージを穿いた低学年のガキから、ジーパンを穿いた高学年のガキに
なった作者は、とある屋台でホットドッグを買って衝撃を受けたのだ。
ちょっとヤーさん入ったお兄ちゃんが笑顔で手渡してくれたホットドッグは、
衣などついていない、フランクフルトに何箇所か切れ目を入れて焼いたものが
串に刺さっているではないか。
屋台の傍らには、なにやらフタのついた、ミシン油の容器が巨大になったような
プラスチックっぽい赤と黄色のボトルが置いてあって、それを塗って食べるという。
衣が無いのがとても寂しかったけれど、香ばしく焼いたソーセージはそれなりに
ジューシーで、ケチャップの赤に加えてマスタードのワザとらしいくらいの黄色が、
さらに本格的に洋風な感じがして、これも好きであった。
え? と思っている、そこの貴方。
そうなのです。これもホットドッグでは無い。
でも作者がジーパンのガキの頃は、これが「ホットドッグ」って名前で売られてたのだ。
やがて作者がアディダスのウインドブレーカーを着るガキになった頃には、
ロッテリアやドムドムが札幌にも現れ始め、外の屋台ではないところで、
また新たなホットドッグと出会う。コッペパンに縦に切れ目を入れたところに
ソーセージを挟んだホットドッグだ。もちろん串などに刺さってはいない。
ついに真打の登場。しかし当時既にやきそばパンやコロッケパンなどといった、
調理パンを日常食べていた作者にとって、それはただのソーセージパンにしか
見えなかったのだった。食べてみたらおいしかったけれど。
その後作者の周辺では衣つきのホットドッグは「フレンチドッグ」という名前に
改められた。しかしどうもこの呼び名は北海道だけらしく、全国的にはアメリカンドッグと
呼ばれているらしい。
永年続いている間違いや勘違いを正されることは人生の内に何度かあることだが、
ホットドッグについてはこれからも何度かそういう瞬間がやってきそうな気がする。
しかしなんとなく本格的洋風な感じがして、それなりにボリュームさえあれば、
それがどんな姿のホットドッグでも、それはそれで納得できそうな気もするのだ。