第9話 北海道富良野市の「助六食堂」





 ラーメン屋の匂い

 ラーメン屋さんの前を通ると、ノレンの向こうからプーンといい匂いがして、
ついつい引き込まれてしまった経験はないだろうか。

 あのプーンとくる匂いの正体はなんだろう。
 かん水、豚骨、ラード、醤油、コショー、にんにく。
 そして、ネギ。
 ラーメン屋さんの匂いの中で、ネギの匂いはかなり強いのではないだろうか。
ネギラーメンというのもあって、あれはあれでおいしいけれど、じつは普通のラーメンも、
かなりネギ臭いのではないかと思う。

 さて所用で富良野へ行った私が向かったのは市街地の「助六食堂」。
 手にしていたのは、ランダムプレス刊「北海道ラーメン100選」。
 富良野の掲載店は3軒で、うち一軒は定休日、もう一軒はすでに経験済みだったので、
狙いは自然と「助六食堂」に絞られた。

 駐車場が見当たらなかったが、辺りは市街地とは思えないほどの静けさで、
路上駐車で捕まりそうな気配もない。


  なにかが違う 

 広めの店内はいかにも昔の食堂ってかんじの落ち着いた佇まい。
 食堂といってもあるのはラーメンと蕎麦のみ。ライスもあったかも。 

 ランダムプレスお薦めの塩ラーメンは、濁っているけれどあっさりした、
やや和風のスープに、ふんわりした中細麺。具はチャーシュー、メンマ、
ネギとシンプル。
 白濁スープに浮かぶ青ネギが美しい。店の雰囲気にマッチした懐かしい味。

 しかし食べ進むうちに、何かが他のラーメンと違うような気がしてきた。
味のバランスなのかどうか、よくわからないけれど、この違いが和風のラーメンを
さらに和風にしているような気が・・・。なにが違うんだろ。

 答えは店を出て、帰りの車中で判明した。
 コンビニで買ったお茶をひとくち飲んだ瞬間、ネギの強烈な匂いが口中に
広がったのだ。
 お茶を飲んでも飲んでも、いつまでもネギ臭い。気がつくと、もう既に息もネギ臭いし、
車中もネギ臭さが充満している。

 なんなんだ、これは。


究極のネギラーメン


 そうだ、青ネギ。
 ネギは青かった。見事なくらいに揃いも揃って青かった。
 食べているときは、彩りがきれいというくらいにしか思わなかったが、考えてみると
ラーメンのネギはふつうはもう少し白い。
 ネギの青いところはネギ臭いのだ(おいしいけど)。

 なぜ「助六食堂」のネギは、あんなに青かったのか?
 私の想像では、ひょっとしたらネギの白いところをそば用に使っているから
ではないだろうか。(そばを食べていないので、はっきりしたことはわからないけど)
 しかし、もし「助六食堂」が、あの青ネギを意図的にラーメンに使っていたとしたら、
あれこそがまさに究極のネギラーメンといえるかもしれない。

 「助六食堂」のネギは、醤油ラーメンでも十分に堪能できる。巷のネギラーメンでは
満足できないとお嘆きの貴方も、風邪気味の貴方も、富良野へお立ち寄りの際には
是非どうぞ。

(01年8月17日)



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