第24話 北海道小樽市の「シグナル食堂」
冬の日本海
突然ですが、海っていいですね。
青い空。かもめ。潮の香り。波のさざめき。
夏に海水浴場で恋をして、秋に破局したり。(他意はありません)
そんなわけで、今回は日本海の目の前にやってきました。
ドドドーン!
灰色の海。荒れ狂う波。
そう、季節は冬なのでした。
私が車で来たのは小樽の朝里駅前。うう・・・寒い。厳しい。
駅前といっても小さな無人駅だし、家も少ない。背後は線路、目の前は
荒れ狂う冬の日本海。
ほとんど演歌の世界。かもめも凍えてしまいそうな寒さです。
そんな場所にあるのが「シグナル食堂」。
聞くところによると、普段は店頭でツブを焼いているらしいのだが、
そんな気配はない。やっぱりこんな真冬じゃ誰も来ないから、焼かないのだろう。
とにかく寒いので、ちょっと怪しげな店に入った。
店内には愛想のいいおじさんとおばさん。
よかった。これでこのお店が開いていなかったら、寂しすぎる。
謎の食器群
店内はテーブル席が4つにカウンター席が3つくらい。
では小さなお店なのかというと、じつはそうでもない。小さくはないが狭い。
余計なモノが多すぎるのだ。
お店の半分以上が空き箱や食器などで埋まってしまっている。中でも不揃いな食器や
鍋の数々はかなりの量だ。
7席の食堂で、メニューもラーメン、そば、丼ものやカレーくらいのものなのに、
こんなに鍋や食器が必要なものなのだろうか?
他にも空き瓶や、営業中の大きな木札、サラダ用の大きな木のスプーンまである。
いったいなにに使うのだろう。
そんな私の疑問など知る由もなく、カウンター内ではおじさんとおばさんが
にこやかにラーメンを作っている。
ほどなく醤油ラーメンが登場。
おおっ! なんと丼がお皿に乗って出てきた。まるでフランス料理のような演出だ。
こういうことをするためのたくさんの食器だったのだろうか?
春になったら
ラーメンはあっさり昔風。口当たりのいい中細の麺。具はチャーシュー、メンマ、
ネギ、ゆで卵、わかめ。
私的にはラーメンの具に海苔以外の海産物を使うのは好まないのだが、
ここのラーメンは少しくらい海草が入っていたほうがおいしい気がする。
おじさんとおばさんの笑顔もラーメンもあったかくて、しみじみおいしい。
すっかり満たされた気分で店を出た私だが、しかしここで安心するわけには
いかないのだった。
道路は凍結、対向車とすれ違えないほどに狭く、急勾配。おまけに路肩弱し。
こんなところで死にたくはない。
春になったらまた来よう。絶対にそのほうがいいと思うから。
ところで後でよく考えるとあの丼の下のお皿は、ラーメンを運ぶための
単なるお盆の代わりだったのかもしれない。
だがそれもこれもカウンター越しにラーメンを出せないくらいに、
モノがいっぱいだからである。
春になったら少しは片づいているだろうか。
(01年12月5日)