第30話 北海道釧路市の「かど屋」





 霧の釧路

 ふと考えてみると、釧路のラーメンというものをまだ一度も食べていないことに
気づいた。道東方面へは夏に何度も旅行しているのに、釧路ではあまり食事をする
機会がなかった。
 東家総本家の蕎麦と、八千代寿司の寿司くらいしか食べてない。(秋に出る
近海物のさんまの寿司は絶品なのだ)
 釧路は夏でも涼しいのに、なぜラーメンを食べなかったのか。
 こんなことではいけない。そんなわけで札幌から車で約6時間の釧路に
改めて訪れたのだった。

 釧路は霧の町とも言われる。
 幣舞橋に霧がかかる幻想的な風景の中を、かの石川啄木もこの地を訪れた時に
歩いていたのだろうか・・・なーんてガイドのチラシを斜め読みしながら、
頭の中はラーメン一色。
 霧もラーメンの湯気のように見えてきた。


  ツブ焼きがうまい

 今回訪れたのは、釧路市街の飲み屋街の角にある「かど屋」。
たぶん角にあるから「かど屋」。
 ネーミングも単純なこの店のメニューはラーメン、ツブ焼き、ツブザンギ。あとは酒。
ラーメンは醤油のみ。

 カウンター席に座った私は、ラーメンが来るまでツブ焼きを食べながら待つことにした。
周りもみんな食べてるし。
 ツブはグツグツと音を立てながら、特製のまな板のような木皿に乗ってやってきた。
 まな板がハワイ土産のマカダミアナッツチョコのケースのようにツブの形に彫り込まれていて、
そこにツブが収まるようになっているのだ。
 二人で食べられるように串を刺す穴が2ヶ所あいている。左右対称に傾斜して
刺さっている串がちょっと微笑ましい。
 焼きたてのツブは熱いので、指先でアッチッチしながらつまみ、串で刺して、
くるりと引っぱり出す。なにやら怪しくて、楽しい。
 カウンターとテーブル数席の賑わった店内には、ツブとビールのみで宴会を繰り広げる
強者もいた。


ラーメンもうまい

 ツブを食べ終えた頃にラーメンが来た。
 丼には生醤油のように黒いスープがたっぷり。かなり真っ黒く、ちょっと「焼き」が
入ったかのように香ばしい。たっぷりのスープの中に、少し頼りなげな細麺が泳ぐ。
 スープの色とは裏腹に、あっさりと飽きのこない味に仕上がっており、味は濃いめだが、
油が少ないのですいすい食べられた。好きだな、こういうの。

 しかし・・・ん? なんだこれ。
 スープになにか魚貝系の隠し味がするような気がする。
 これはスープのダシなのか? それとも直前に食べたツブのせいなのか?
 だめだ。スープをぜんぶ飲んでも、もうぜんぜんわからん。
 先にツブなんて食べなきゃよかった(おいしかったけど。)

 こんど釧路に来たら、また寄ろうっと。

(02年2月13日)



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