第44話 北海道根室市の「ホームランやき」
日本でいちばん朝の早い町で
日本最東端の街、根室。
釧路からさらに東へ140km。花咲半島の中央にある北洋漁業の街である。
霧も出やすく、一年を通して気温が上がらないため、夏でもストーブが
片付けられることはない。
そんな根室市街地の半島の反対側にある漁港、花咲港の手前に、ポツンと佇む
1軒のおやき屋さんがある。店の名前は「ホームランやき」。店の歴史はすでに40年、
現在の店主は2代目となる老舗だ。
ホームランやきは1個40円。
エスカロップ、オランダせんべい、北の勝、タイエーストアの焼きとり弁当などと共に、
根室市民に愛されて続けている、野球のボールの形をしたつぶ餡入りのおやきなのだ。
この店のメニューは5つ。
ホームランやき 40円
正油味ラーメン 400円
塩味ラーメン 400円
お子さまラーメン 300円
大盛ラーメン 500円
正油ラーメンではなく、しょうゆ味というところが、北海道限定のマルちゃんラーメンを
連想させる。
おやきが冷たくなってしまったら
店内はテーブル4つ、丸イスが各4つ。
4つのうち1つのテーブルだけはマンガ置き場となっているので一人掛け。
駄菓子屋や鯛焼き屋の中の、かき氷を食べたりするようなスペース。
そんなかんじ。
ラーメンを待つ間もひっきりなしに客が訪れ、ホームランやきが20個とか
30個という単位で次々と売れていき、中には予約のお客さんまでいる。
よく売れてるなあというのが印象だが、北洋漁業の最盛期には売れ方が
一桁違ったらしい。今はどこも大変なのだね。
せっかくここまで来たのだから、ホームランやきも食べたい。
ラーメンの食前に食べるもよし、食後のデザートもよし。はたまた2個注文して、
食前と食後に食べるもよし。
今回私は観光客らしく、食後にお持ちかえりとして、近くの花咲港で
ゆっくり食べることにした。
港近くの店の花咲ガニなどを茹でる匂いを横目に、港の邪魔にならないところで、
冷たい潮風に吹かれながらあつあつの甘いホームランやきを食べると、
心も体も温まってくる。
店の壁には「おやきが冷たくなってしまったら」という貼紙があった。
解説によれば方法は3つ。
その1.油で揚げる
その2.オーブンで焼く
その3.ジャーを利用する
ジャーを使うときは、ごはんの上にラップを敷いて約40分置いておくといいそうだ。
知らなかったぁ。でも途中でごはんを食べたくなったら、どうすんのかな。
美しいスープ
プラスチックの四角いお盆で運ばれてきたラーメンは、正油も塩も丼の底まで
はっきり見える透明スープ。とくに塩の透明度は特筆ものの美しさ。
でもダシはしっかり。
材料はわからないが、あまりいろいろなものを使っていなさそうなシンプルがうれしい。
麺は色白の細麺。
具は脂のミミがついたチャーシューが2枚、メンマ、ねぎ、海苔。
じんわりとおいしい。
海苔がとてもほどけやすいため、スープの味を変えたくない人は海苔を真っ先に
食べてしまうほうがいいかと思うが、あえて海苔を放っておいて、食べ終わる頃には
底に解けた海苔で、永谷園の海苔茶漬けのような風味に変化していくのを楽しむのも、
また一興ではないかと思う。
ちなみにレンゲはなし。水の入ったブルーのコップとともになつかしさを誘う。
子供の頃、近所に小銭を握って食べに行ったようなラーメンが、東の果ての港町に
今もひっそりと息づいている。
(03年8月20日)
<おやき>
文中の「おやき」って言葉ですが全国的に通じてるのでしょうか。
札幌ではサザエや千歳焼とかで「おやき」なんですが。今川焼きとか大判焼きとも言いますね。