たまらん本たち   
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「深夜特急」全3巻
沢木 耕太郎
新潮社
沢木耕太郎の本はどれもいいが、やっぱりこれは最高傑作、歴史に残る本ではないかと思う。、読んでいない人がもし存在するのなら、今すぐ本屋へ行って買ってきてほしい。
ノンフィクションライターの著者がユーラシア大陸をインドのデリーからロンドンまで、乗合バスを使って横断する旅の紀行文である。
沢木さんの目はいつも優しく、沢木さんが書く人間は悪い人も良い人も、みんな生きることに真剣だ。
紅茶のスペルが「C」で始まる国から「T」ので始まる国へ。
そして、旅のラストに再び「C」の付く紅茶の国へやって来る。
「紅茶のスペル」という小さなことに結びつけた、沢木さんの心の変化がなんともたまらんワンシーンだ。



「ジェーン・エア」上下巻
C・ブロンテ
新潮文庫
これを読んだのは中学生の頃だったと思う。
とにかくドラマティックなストーリなのだ。イギリスの暗いどんよりとした雰囲気が、初めは違和感を感じてしまうのに、読むほどに引き込まれていく。
また、著者のC・ブロンテの生き方にも興味をそそられる。「嵐が丘」を書いたエミリー・ブロンテの姉であるが、かなり閉鎖的な生活をしていたにも関わらず、想像力だけでここまでの物語を作り上げるという才能に脱帽。
物語の最後に、主人公ジェーンはこう思う。
「彼といることは、1人でいる時のように自由で、大勢でいる時のように楽しい」と。
この1文で、この物語はわたしの中で不動のものとなった。


「忍ぶ川」
三浦 哲郎
新潮社
三浦哲郎の芥川賞受賞作である。
行方不明の兄をもつ「私」と、遊郭のある町で生まれ神社のお堂で育った「自分の家」を持たない「志乃」。2人は愛し合い、ささやかな結婚式を挙げ、小さな新婚旅行に出かける。
その電車の中で、志乃が突然声を上げる。「みえる、みえる」
何が見えたのかと不思議に思い、「私が窓の外を見ると、「私」の家が遠くに見えた。志乃はなおも叫ぶ。「うち! あたしの、うち!」自分の「家」を持たない志乃が初めて、結婚したことにより「自分の家」を持ったのだ。だから、志乃は他の人が怪訝そうに見るのも構わず叫び続ける。「ね、みえるでしょう。あたしのうちが!」
あー、たまらんなぁ。もう書いてるだけで泣けてくる。
コメントはもう書くまい。とにかく読め!


「可愛いエミリー」
L・M・モンゴメリ
新潮文庫
モンゴメリといえば、「赤毛のアン」だが、わたしが好きなのはこの「エミリーシリーズ」だ。「可愛いエミリー」「エミリーはのぼる」「エミリーの求めるもの」と3巻で完結する。
中学生のとき、この物語に出会って、自分と重ね合わせてエミリーを見ていた。エミリーがどうしたって書くことをやめられない、いつか女流作家になることを志している女の子だったからだ。
これを読んで、私もいつか高くのぼるんだと心に誓った。これは物書きとしての私を一番支えてくれたバイブル的物語なのだ。
成長し、恋をし、別れがあり、年をとり、人生に失望した中で、エミリーを支えたのは、やっぱり「書くこと」だった。やがて、自分の本を出版する。
しかし、ラストはこれで終わりではない。すれ違い、心が離れ離れになってしまっていた恋人がある日、エミリーを呼びに来る。「君は僕を愛しているはずだ」と。
そして、たまらんラストに……。
はー…


「泥の河」
宮本 輝
角川文庫
宮本輝の作品は好きなのがいっぱいあるけれど、この中に収録されている「泥の河」が私は好きでたまらない。
宮本輝のこのデビュー作には彼の生き方や考え方のすべてが表れているような気がする。自分の内側へ、内側へと入り込んで、これでもか!っというくらい、えぐり出して書いたような、鬼気迫るものさえある。もう他に書かなくても、これ1作でいいんじゃないかと思うくらいだ。
読んだのは大学生のときの通学電車の中だった。電車が駅に到着しても、そのまま駅のホームにたたずんで終わりまで読みきってしまった。それくらい、衝撃的だった。
大阪を舞台に、子供の目を通して描いたシビアな世界が、懐かしさのような恥ずかしさのような不思議な気持ちを思い起こさせるのもいい。
宮本輝の書く人間は、いつも何かに向かってひたむきだ。それが読む人を感動させるのかもしれない。