ちょっとたまらん本たち
「たまらん本たち」よりここは軽めにいきます(笑)
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「夢見通りの人々」 宮本 輝 新潮文庫 |
これも初期の頃の宮本輝の作品だが、「泥の河」のように重い感じではなく、どちらかといえば軽いタッチで書かれたものである。 「夢見通り」に住む人々の様子が、主人公の春太によって描かれていく。肉屋の兄弟、スナックのママ、ホモと言われているカメラ屋の主人など、癖のある登場人物とのやりとりが面白い。 人生に悩み、恋に悩み、傷ついたり成長したりする住人たち一人一人にスポットをあてていくのだが、それぞれがみんな「陰」の部分をもっていて、やたら人間くさいのがいい。 また、宮本輝の書く大阪弁は優しい感じで好きだ。これを読んだら、きっと人間が好きになる。 |
「非色」 有吉 佐和子 角川文庫 |
これを読んだときはかなりガーンときた。「人種偏見」という難しいテーマを扱いながらも、見事な「物語」に仕立てているからだ。 終戦直後、勤め先の駐留軍キャバレーで黒人のトムと知り合い、結婚・出産する「私」。トムは生まれた子供を「白雪姫」と呼ぶほど、肌の色に劣等感を抱いていたが、日本人の私にはその意味がまだよくわからない。 しかし、トムが帰国し、ニューヨークへ渡ったとき、貧民街ハーレムでの暮らしの中で、私もアメリカでは肌の色ですべてが決まることを知る。そして、黒人よりもさらに「下」に思われている人種がいることも・・・。 これは「人種偏見」と同時に「女性の強さ」も感じさせてくれる本だ。 |
「蟹工船」 小林 多喜二 岩波文庫 |
大学時代、プロレタリア文学にもはまり、小林多喜二や宮本百合子、葉山嘉樹、中野重治などを読み漁った。「文学とは美しいもの。文学とは夢を与えるもの。文学とは自分を問い直すもの」そんなふうに考えていた私にとって、プロレタリア文学はまさに「花園を荒らす」ようなものだったが、それでも「この文学は必ず日本人全員が読まなくてはいけない」と思うようになった。 なぜなら、私は何も知らなかったからだ。日本がどんなに貧しい国であったか。戦後、高度成長期後の日本しか知らない私は日本の貧しさを知らなすぎた。たぶん、ほとんどの同世代がそうだと思う。だからこそ、これを読んでほしいのだ。 別に私は共産主義の思想など持ち合わせていないが、当時の労働者がどんなものであったか知ってほしいと思う。それから、小林多喜二が特高警察により、拷問を受けて死んだという事実も。彼の死体の足はむくれあがって丸太のようだったという・・・。 いい歴史も悪い歴史もまっすぐに見る目を持ちたいものだ。 |
「人の砂漠」 沢木 耕太郎 新潮社 |
初めて沢木さんの本を読んだのがこれだった。まだ彼が「深夜特急」などでブレイクするずっと前のことだ。 ここに収められている数編のノンフィクションはどれも本当に素晴らしい。沢木さんの原点という気がする。 最初にある「おばあさんが死んだ」を読んだとき、こんなふうに人を見て、こんなふうに人のことを書ける人がいるんだと、悔しいくらいにスゴイと思った。 自分の兄のミイラと布団の中で死んでいた一人の老女。沢木さんはその老女が気になって、彼女の人生をたどっていく・・・。 フィクションかと思うほど、ドラマティックな人々の人生。きっと世の中にはたくさん転がってる。それに、気付かずに通り過ぎてしまうのではなく、立ち止まってじっくり見る「目」が必要なのだ。沢木さんはそれができる数少ない人である。 |
「さいはての二人」 鷺沢 萠 角川書店 |
ここ最近の鷺沢さんの作品としては、なんといってもこれがナンバーワンだろう。 美亜という日本人離れした美しさをもった若い女性と、朴さんと呼ばれる謎の中年男性が、互いに惹かれ合っていく。けれど二人には性的な関係はなかった。それには理由があって、最後にはそのことが明らかになる。 途中、美亜が子供の頃のことを思うシーンがあるのだが、雨の降る寒い日に、家に帰るとお母さんが葛湯を作って飲ませてくれる・・・そんな情景。でも、それは美亜の家ではなく、一緒に帰った友達の家のことだったので、美亜はいつか自分の子供にもそうしてやろうと考えている。 そのシーンを読むと、私はなんだかせつなくなる。ラストもやっぱりせつない。 |