思い出捨てられない症候群
| この春、私は引っ越しをした。 1人暮しの住まいから、1人暮しの住まいへの引っ越しなんて、友達の車で2、3回往復したら済む・・・なんてことも可能だと思うのだが、私の引っ越しはものすごい大掛かりなものだった。 2トントラックに荷物はいっぱい、引っ越し屋さんも3人がかりである。 そんなだから、荷造りも大変で、母と二人で1日かかってやってもまだ終わらず、ほとんど徹夜で私は荷造りをした。 例えば、鍋。 私は自称「鍋フェチ」である。鍋を見るとぞくぞくするというのか、とにかく鍋が欲しくてたまらなくなる。1人暮しなのに、鍋が10個以上あるのだ。土鍋も3個ある。 さらに大量の和食器、ティーカップ。お菓子作りの型も明日からお菓子屋さんができるほどある。 それから、本。 本と漫画はなんとダンボール16箱。 他にも400本くらいあるもう聞かないカセットテープとか、ガラクタみたいなものが山ほど。 こんなたくさんの荷物が1DKの部屋のいったいどこに入っていたんだろうと不思議になった。(本だけはほとんど実家においていたのだが) 物が多いわりに、部屋は片付いていて、あまり物が外に出ていない。それはとにかく「家具」と「箱」が好きだからなのだ。入れ物さえ作れば、そこにガラクタが入っていても、部屋はきれいに片付いて見える。そうやってごまかして生活してきたが、引っ越すときに荷造りをして入れ物の外に物を出してみて、唖然とした。 「物が多い!!!」 引っ越し当日、父・母・もんちゃんが手伝いに来てくれたが、新しい2DKの部屋にすべて運び込まれた荷物を見て、4人でしばし呆然と立ち尽くした。 どこから手をつけていいのか、さっぱりわからないのだ。部屋の中いっぱいにダンボールが山と積まれていた。本当に「山」だった。 みんな「とほほ・・・」「ははは・・・」という感じだった。 しかし、引きつり笑いをしていたら、私は寝る場所もない。必死に片付け、3日間かかって、ようやく普通に生活できるようになった。 最近、引っ越して半年経って、部屋を見てみると、どうも「はみ出している」のが気になるようになってきた。引っ越した当初、なんとか収まっていたのに、収まりきれずにはみ出しているものがいくつか出てきたのだ。ひきだしが閉まりにくかったりもする。 そこで、前から思っていたが、どうしてこんなにも物が多いのだろう?と改めて検証してみることにした。 すると、ある1つのことに気がついた。 もちろん、物欲の塊の私だから、前述したように台所用品や本は多い。 けれど、それ以上に「捨てられないもの」があるのだ。 それは、「思い出」である。 私は「思い出捨てられない症候群」なのだ!(そんなのあるのかわからんが) 例えば、手紙。 中学生の頃から友達と手紙を交換するのが好きだった。この数年、やっとメールになって郵便物が減ったが、それまではかなりの量の郵便物が届いていた。 中学生の思考というのは今となってはよくわからんが、毎日学校で会う友達にわざわざ手紙を書いてきて交換する。内容はほとんどくだらないことだ。好きな男の子としゃべったとか、そんなどうでもよいことだ。まあ、その頃は真剣だったのだが・・・・・・。 大人になった今、もう決してその手紙を読み返すことはないのに、私は未だにそれを捨てられずにいる。 なぜか。 「思い出」だからだ。その手紙を捨てたら、その思い出まで捨ててしまうような気がして怖いのだ。 そんなわけで、私は大きな衣裳ケースに2箱分くらいの手紙を持っている。 手紙に始まり、日記帳はもちろん、写真をきれいに貼ったアルバムも何十冊もあるし、貼り切れなかった写真も山ほどある。 まあ、これくらいなら、捨てられないという人も多いと思うのだが、「思い出捨てられない症候群」はこんなものじゃない。 これを言うと、「それって、ヤバイって・・・」とちょっと引かれることもあるのだが、私は今まで付き合ってきた男の「箱」をいくつか持っているのだ。 「○○君ボックス」である。 そこに、その人と付き合ってきた間にもらった手紙とか、プレゼントとか、一緒に描いた絵とか、一緒に行った映画の半券とか、そんな思い出の品々が、人ごとにまとめられて入っているのだ。 片思いしていた場合は、その人から手渡されたジュースの空き缶とか、拾ったテストの切れ端とか、そんなものまで入っている場合もある。 これは我ながらヤバイ感じがするのだが、どうしても捨てられない。 とにかく付き合っていた男に限らず、「思い出」がまとわりつくとその物自体に価値が出てきてしまって、捨てられなくなってしまうという恐ろしい病気(?)なのである! 友達の結婚式の2次会のビンゴ大会で当たった「ジャカジャカジャンケン」のネジ巻き人形。絶対いらん! でも、捨てられない。 高校時代、ゆうちゃんとイズミヤに行って、偶然見つけた変なキーホルダー。どくろの顔の中に裸の女性が入っているのだが、これも捨てられない! 10年ほど前に、実家の物置で見つけた「未来少年コナン」のお茶碗。幼稚園のときに使っていた。絶対使わないが、やっぱり捨てられない……。 4、5年前の生徒にもらったオルゴールの人形。一度も音楽を鳴らしたこともないが、これも捨てられないよぉ!! そんなふうに、捨てられないものが山のようにあり・・…、いつか私は「思い出」に部屋を占領されてしまうのではないかと怯えている状態だ。 「思い出」がなければ、いさぎよく捨てることはできる。よくある「いつか使うかも……」と思って残しておくタイプでは決してないからだ。 さて、話を元に戻すが、この半年で何が増えたのか? それは、今付き合っている「彼」に関する物である。 彼と付き合い始めたのと引っ越したのはほとんど同時で、この半年間、彼は私物をいろいろと私の家に持ち込んだ。それが今「はみ出ている」原因である。 さらに、やはり彼との「思い出」が少しずつ「物」になって重なってきている。 彼は知らないと思うが、彼と一緒に落書きした紙まで私は大事に取ってあるのだ。 願わくは、「○○君ボックス」コレクションに彼の箱が加わらないことを……。 彼のことを「箱」にしまうような「思い出」にはしたくない。彼との思い出だけは、これからもっともっと増やしていかなければならないと思っている。 (これを読んだ彼が、「そんな昔の男の箱捨てろ!」って怒らないといいんだけどねぇ・・・) 私はいつか「思い出」を捨てられるのだろうか? ◎今回のテーマ◎ 「あなたは捨てられる人? 捨てられない人? 思い出捨てられない症候群ではないですか?」 2002.11.6 |