恐るべし! デパ地下!
| デパ地下…… もし、この言葉を聞いただけで何か胸がわくわくし、目を細めてため息をついてしまう人がいたら、その人はかなりデパ地下の魔力にやられていると思う。 デパ地下、そこは人々の熱気と好奇心と期待とが溢れた空間。店員の大声と客のざわめき、そして繰り広げられる駆け引きと闘い……。1歩入るだけで血液が体中を駆け巡り、一気に興奮状態に陥る。 ああ、デパ地下…… 私は大阪の阪急、阪神、大丸というデパートが立ち並ぶ真ん中のビルに仕事でちょくちょく通っている。ちょっと疲れて一杯やりたいけど、金もないしなぁ……と思う時や、なんかわからんけど、むしゃくしゃするんだよぉ!という時には、ちょっとデパ地下へ寄る。 私が直行するのは、たいてい阪急の日本酒売場である。ここは毎回いろんな酒蔵の地酒をたくさん用意していて、それを試飲させてくれるのだ。 私は「ちょっと阪急で試飲して帰るわ!」と皆に言い、阪急の地下へと行く。 酒をじっと見ていると、「どうぞー、おねえさん飲んでみて」と、マネキンのおばさんが私に小さなプラスチックのコップを手渡してくれる。 「あ、すいません……」と、一応、「いいの?試飲なんてさせてくれるの?」みたいなちょっと驚いたような顔で注いでもらう。 私が飲み終わるやいなや、おばさんは「はい、次これ飲んで」。 それをぐっと空けると、「はい、これもね」。 いやいや、そんなペースで飲まされても……。おばさんの迫力に負けてぐいっと空ける。 「はい、じゃあ、あとこれね。ちょっと辛口」 えええっーーー! 「はい、これも美味しいよ」 はぁはぁ・・・・・・ このおばさん、もうすっかり顔なじみなのだが(私は)、いつもものすごいスピードでどんどんありったけの種類を注いで飲ませるのだ。途中からもう味が混ざって何がなんだかわからなくなる。わからなくなって一通りは飲み終えたところで、「どうですか? どれいっときます?」と言われる。 いや、今日は試飲だけのつもりで来たんだが……と思いながらも口が勝手に動く。 「えーと、じゃあ、これ1本」 「はい、ありがとございます」おばさんはにっこり。 ……完敗だ。私の負けだよ、おばさん。 こんな調子で、私はいつも「試飲して帰るわー」と言いながら、このおばさんがいる時には必ず1、2本酒を買って帰ることになる。 今日も思わず1本買ってしまい、「おばさんにすすめられるといつも買ってしまうんです」と告白してしまった。おばさんはちょっと照れたように、「もう20年やってるからね」と言った。さすが!熟練のワザなのだ。マネキンは難しいからなぁ……。 こうして日本酒売場でさんざん試飲をした後に、デパ地下をうろうろしてはもう終わりである。ほろ酔い気分で財布の紐もどんどん緩み(元々緩んでるのに!!)、見るものすべてが美味しそうに目に映るのだ。そして、気がついたら、パンやピザや紅茶を手にしてしまっているのである。 私は阪急デパートに完全に型にはめられている客だ。 今日も、パン売場の横をとおったら、サンドイッチを売っていて、店員が大声で「今から2つで300円! どれでも2つで300円!」と叫び出した。見るとうまそうだ。思わず手に取った。すると、同じように何人もが手に取る。それを見た他の客がつられるようにまた手に取り、人だかりができたものだから、どんどん人が集まってくる。そこにまた店員が「さあ、あるだけ! あるだけですよぉぉぉーーー!」と叫んだからたまらない。何かの合図のようにみんなが一斉に手を伸ばし、取り合った。もう奪い合いである。あっと言う間にサンドイッチは完売。 当然、私の手にも2つのサンドイッチが握られていた。 ん? 私は本当にサンドイッチが欲しかったんだろうか? ちょっと疑問に思う。が、もうカゴに戻すわけにもいかず、ま、300円だしいいかー……と自分に言い聞かせた。 恐るべし! デパ地下のタイムサービス!! デパ地下には何か魔物が住んでいるとしか思えない。 なぜ何もかもが美味しそうに見えるのか? なぜあんなにも人々を興奮状態にもっていくのか? あの食品が並ぶ通路を通る時にわきあがる何とも言えない欲望……。時々、「もう気が狂う、これ以上いたらおかしくなる……」と思って、急いでエスカレーターを駆けあがることがある。 こんなことになるのは私だけなんだろうか? よくキャッチセールスなんて誰がひっかかるねん?と不思議に思っているが、もしかしたらデパ地下の戦略にひっかかってる?私…… まあ、いいか。自分が得したと思えれば、戦略だってひっかかったほうが幸せかもしれない。 少なくとも私はデパ地下で美味しそうなものに囲まれて気が狂いそうになっている瞬間、ものすごーく幸せなのだから……。 ◎今回のテーマ◎ 「デパ地下の魅力って何ですか? あなたはデパ地下で買い物するのは好きですか?」 2002.11.8 |