送球の行方に注意する


TOP
送球の行方に注意する
失点要因を分解する

日本版DIPSRA'を求める
守備位置補正を考える

ポジション別攻撃力2008
RFと奪アウト率
Blog
Link
更新履歴
1.はじめに

 私は,これまで,既存の守備記録,及びRangeの考え方を利用して守備指標の改良を模索してきた.しかしながら,ここでなんとももどかしいのは,「実際のところ,グラウンド上をボールはどのように移動しているのか?」ということがいまいち正確にわからないことである.

 RF,RRFは「アウトを取る能力」をはかることで選手の守備力を測ろうという試みである.ただし,現状で一塁手のRFはほとんど意味のないものとなってしまっているし,各守備位置のRFを足していくとチーム合計RFからはかけ離れた数字となってしまう.

 要は単にアウトにかかわった,というだけでなく,その刺殺はフライを取ったのか,ゴロを取って自分でベースを踏んだのか,他人の送球を受けてのものなのか,ということを知りたいわけだ.

 そこで,本稿では,人に教えてもらったエクセルのソルバー機能を活用して,送球を総合的に把握し,守備評価に結びつけるということを考えた.

2.推計の方法

 奪アウトを意味する守備記録には,補殺と刺殺がある.アウト1つには必ず刺殺1つが記録される.これに対し補殺は刺殺が,アウト1つにつき複数記録されることもあれば一つも記録されないこともある.

 複数つく場合として,中継プレーや挟殺プレー,マニアックなプレーではアライバのアレなどが該当する.但し,複数の選手に補殺が記録される事例はあまり多くない.また,補殺が記録される選手は,必ず刺殺が記録される選手とは異なる選手である.

 以上の話から,とりあえずアウト一つにつき複数記録される補殺を無視,かつ三振,外野手の刺殺を除外すると,こんな表ができる.

送球元
(補殺)
242             
72             
99             
449             
253             
469             
19             
なし 439             
75 33 1319 339 81 195
送球先(刺殺)
(横浜,2007の場合)


 上記の仮定をとった場合,すべての送球は上の表のどれかの組み合わせになるわけだ.こんな表が何百枚かできる.要はどうやってこの表の中身を埋めていくかということだ.今回,この表を埋めるにあたり,エクセルのソルバー機能を利用した.

 ここで知りたいのは,例えば,「大体平均すると,投手の補殺のうち,何パーセントが一塁手の刺殺とセットで,何パーセントが二塁手の刺殺とセットで……」ということである.ソルバー機能を使い,それぞれの補殺数について,合計が100%になり,各年度各球団の理論値と実際の値の誤差の二乗和が最小になるように,補殺数を割り振ってみた.

3.結果

結果が以下の表.

1刺殺 2刺殺 3刺殺 4刺殺 5刺殺 6刺殺 合計
1補殺 0.0% 0.0% 57.6% 36.5% 0.0% 5.8% 100.0%
2補殺 0.0% 0.0% 18.1% 24.4% 26.9% 30.7% 100.0%
3補殺 59.2% 1.7% 0.0% 0.0% 0.0% 39.1% 100.0%
4補殺 1.6% 0.0% 88.0% 0.0% 0.2% 10.2% 100.0%
5補殺 0.0% 0.0% 90.6% 9.4% 0.0% 0.0% 100.0%
6補殺 0.6% 0.0% 77.8% 21.7% 0.0% 0.0% 100.0%
8補殺 0.0% 49.8% 0.0% 50.2% 0.0% 0.0% 100.0%
補殺なし 0.0% 10.6% 35.1% 16.7% 16.4% 21.3% 100.0%

 説明すると,投手の補殺のうち,一塁手の刺殺とセットになっているもの(投手から一塁手に送球されてアウトが完成したものと思われる)が投手の補殺全体のうち57.6パーセント,同様に二塁手の刺殺とセットになっているものが36.5パーセント……と考えると,理論値と実際の値の間で誤差が最小になりました,ということだ.

 4補殺-5刺殺とか,いまいちよく分からない組み合わせも存在するが,誤差はつきものなので,しょうがない.

 実数に割合をかけ,1試合あたりのパターン出現数を表したのが,以下の表.一塁だけ補殺者無しの刺殺が多いのは,まあ分かるだろう.

1刺殺 2刺殺 3刺殺 4刺殺 5刺殺 6刺殺 合計
1補殺 0.00 0.00 0.86 0.54 0.00 0.09 1.49
2補殺 0.00 0.00 0.10 0.14 0.15 0.17 0.57
3補殺 0.37 0.01 0.00 0.00 0.00 0.25 0.63
4補殺 0.05 0.00 2.69 0.00 0.01 0.31 3.06
5補殺 0.00 0.00 1.65 0.17 0.00 0.00 1.82
6補殺 0.02 0.00 2.38 0.66 0.00 0.00 3.06
8補殺 0.00 0.09 0.00 0.09 0.00 0.00 0.17
補殺なし 0.00 0.38 1.28 0.61 0.60 0.78 3.64
合計 0.44 0.48 8.96 2.21 0.76 1.60 14.45

フロー図にするとこんな感じ.



で,実際,これを上記の横浜2007の例などに当てはめてみると,以下のようになる.

合計 1刺殺 2刺殺 3刺殺 4刺殺 5刺殺 6刺殺
1補殺 242 0 0 140 88 0 14
2補殺 72 0 0 13 18 19 22
3補殺 99 59 2 0 0 0 39
4補殺 449 7 0 395 0 1 46
5補殺 253 0 0 229 24 0 0
6補殺 469 3 0 365 102 0 0
8補殺 19 0 9 0 10 0 0
補殺なし 439 0 46 154 73 72 94
刺殺数合計理論値 2042 68 57 1295 314 92 215
実際の刺殺数 2042 75 33 1319 339 81 195
刺殺プレイプラス 0 7 -24 24 25 -11 -20

 一番下に出てきた理論上の刺殺数に,DERなりBABIPなり奪アウト率なりで補正をかけたのが刺殺の基準値.補殺数は100パーセント補殺者の能力で決まると決め付けてしまい,特に補正をかけずに基準値を出す.

 このやり方によって出てくる数字の意味はRF,RRFと同じで「平均的な守備力の選手がプレーした時に比べ,どのくらい多くのアウトを取れたか」ということであるのだが,すべての守備位置の成績を求められる点,そのすべての守備位置の成績を合計するとチームのプレイプラスになる点(RF,RRFは補殺と刺殺をダブルカウントしているため,一致しない)が異なる.

 2008年分はまだ計算していないので,ここでは,2007年分を載せる.

まずセリーグ.



続いてパリーグ.



 とりあえず,この一塁手のプラスマイナスは大げさすぎなのでは? というのがこれを見た人の感想であると思う.いくらウッズの守備がしょっちゅう話題になるほどアレとは言え,井端のプラス+荒木のプラス<ウッズのマイナスはないだろうと.ただ,球団全体の合計値は一定なはずなので,一塁手が過小評価であるとすれば,それ以外のどこかが過大評価であるということだ.

 一塁手が大げさであることを示す傍証はあって,下の表は,1992年から2007年までの全球団守備位置別プレイプラスの標準偏差である.これが大きいほど,守備力の差がつきやすい守備位置であるということだ.

1PP 2PP 3PP 4PP 5PP 6PP 7PP 8PP 9PP
19.1 13.7 30.7 36.1 24.3 33.8 21.6 21.7 22.1


 一塁手が二塁手,遊撃手に次いでいる.やはりここまでどんぶり勘定では誤差が大きすぎるか,はたまた実は一塁手の守備は超重要なのか…….この値,内外野打球分布補正も左右方向打球分布補正も走者数補正も行っていないのも一因かもしれない.ともかくも,もう少し頑張れば使えそうな値なのだが…….さらに検討を進めることにする.

(2008.11.15追加)
 2008年度分を算出したので,追加.まずセリーグ.


チーム最高はヤクルトの+43,最低は中日の−40である.

続いてパリーグ.


最高はもちろん日本ハムでなんと+110.最低はロッテで−40.セ・パとも突っ込みどころの満載な結果であるが,それはまた別のときに.
 

TOPに戻る