RRFについて
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1.はじめに ここではJames(2006)にRelative Range Factor(以下RRFと略す)の考え方を自分のコメントを付けて紹介し,これをNPBに導入する上での自分の考え方を述べる. 2.RFの問題点とRRFの計算法 Jamesは,Range Factor(以下RFと略す)を考え付いた人であるが,上記文献の中で自らRFの問題点を5つ指摘している.(以下斜体は引用) 1) 守備イニング補正がない 「守備イニング推計方法について」でも述べたが,日本においては,NPB関係者以外,現状正確な守備イニングを知る方法がないので,何らかのほうほうで推計するしかない. 2) 三振補正がない これは私が奪アウト率を考案したときに指摘した点である.つまり,チーム投手の奪三振能力が高いと,そもそも後ろにあまりボールが飛んでこないので,野手の実力と関係なく守備機会が減ってしまうという問題である. 3) 投手のゴロ傾向補正がない. 下は,過去10年分のNPB内野奪アウト率と外野奪アウト率の散布図である. ![]() 概ね外野の奪アウト率が高いチームほど内野の奪アウト率が低い,と言う傾向が見て取れる.もちろん,「内野守備力が高いチームほど外野守備力が低い」という関係があろうはずもない. これは,おそらくは打球分布によるものである.ゴロピッチャーが多いチームであれば内野の守備機会は増えるし,フライピッチャーが多ければその逆である. 4) 投手の左右補正がない. これは,左投手が多いチームは,対戦相手が先発野手に右打者をより多用するので,必然的に左方向の打球が増え,遊撃手や三塁手の守備機会が増えてしまう,ということである. 5.チーム守備力補正がない. 道作氏による「チーム内での守備機会の奪い合い」参照のこと.チーム全体の守備力が高いと,個人の守備機会を増やす難易度が増す. これらの問題点を指摘した上で,James氏はRRFを提唱する.RRFの算出法は以下のようなものである. 1) 選手の期待補殺を概算する 1.まずリーグ総補殺数を数える. 2.外野手と捕手による補殺を引く. 選手の期待補殺は,選手のゴロ処理能力を計算するために求める,と考えてよいと思うが,そうなると,やや特殊な補殺である外野手と捕手の補殺は除外した方が良い,ということであろう. 3.残りの補殺のうち,何パーセントが遊撃手の補殺かを計算する. 4.チーム総補殺を求める. 5.チーム総補殺よりチーム外野手と捕手の補殺を引く. 6.5に3をかける. これで,「該当チームに,もし平均的な守備力を持った遊撃手がいればいくつ補殺がつくか」が計算される. 7.チームの左腕投球イニング割合を計算する. 8.同じくリーグ平均を計算する. 9.チームがリーグ平均より25イニング上下するごとに遊撃手の期待補殺を1足し引きする. 7〜9は問題点で取り上げられた左腕補正である. 10.9に該当遊撃手の守備イニングを掛ける. 11.チーム総イニングで割る. 2) 選手の期待刺殺を概算する 1.まずリーグ総刺殺を数える. 2.三振を引く. 問題点で取り上げられた投手奪三振能力補正である. 3.外野手の刺殺を引く. 問題点で取り上げられた打球分布補正である. 4.三塁手と遊撃手の補殺を引く. 遊撃手の補殺は遊撃手の刺殺を伴うことは絶対にないし,三塁手の補殺が遊撃手の補殺を伴うことも滅多にないのでこれを除外する,ということである. 5.残りの刺殺のうち,遊撃手の刺殺の割合を計算する. 6.チーム成績について1-4を行う. 7.5と6をかける. 期待補殺の6と同じである. 8.チームの左腕投球イニングが90イニング上下するごとに期待刺殺を1引く. 左腕補正である.左腕投球イニングが増えるほど遊撃手期待刺殺が減る,というのは二塁手の補殺が減るからかな? 9.チーム期待一塁走者数とリーグ平均との差を概算する 一塁走者補正である.チームが出した一塁走者が増えるほど遊撃手の守備機会が増える,ということである.二塁封殺が増えるためと考えられる.ちなみに期待一塁走者数の求め方は以下の通り. 期待一塁走者数=(安打−本塁打)×0.781+四球+死球−暴投−ボーク−捕逸−許盗塁−盗塁刺 10.25推計一塁走者数ごとに遊撃手期待刺殺を1足す. 11.10に該当守備イニングをかける. 12.チーム総イニングで割る. 3) 刺殺数と補殺数を足す. 4) 実際の合計数を期待合計数で割る. 5) チームDERをかける. 6) リーグDERで割る. チーム守備力補正である.DER(Defense Efficiency Ratio)は「グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにできる確率」を表す率で,以下のように定義される(異説あり). DER=(打席−安打−四球−死球−三振−失策)÷(打席−本塁打−四球−死球−三振) 分母は以前定義した「野手責任打席数」と同じである. こうして求まるのが「RRF」であり,この数字は「平均的な遊撃手の何倍,アウトを得たか」を表す数字である.これを「平均的な遊撃手よりいくつアウトを奪ったか」を表すPlay Plusに換算する方法は以下の通りである. Play Plus=(RRF−1)×(期待補殺+期待刺殺) なお,道作氏はこれに0.47をかけ,守備による得失点としている. 3.RRF計算にあたって このように,RRFはRFの問題点解決を目指した意欲的な指標であり,日本においてもこのような考え方の指標が浸透することを期待する. ここでは,いくつかの点に注意しつつ,日本版守備得失点を求めてみた. 基本的な求め方はともかくとして,問題は様々な補正方法が果たしてNPBの野球にも当てはまるかである. 内外野(ゴロ/フライ)打球分布による数値のずれは,問題点3で指摘したとおり明白に存在するので,補正を行うことにする.ただし,この補正方法にも問題がないわけではない.例えば,内外野打球分布は以下のような外的要因の影響を受けるとよく言われる. ・狭い球場の場合,外野の守備機会は減少する.これは,広い球場なら外野が処理できる打球がフェンスの向こうへ消えてしまうためである.同じ理由で,飛ぶボールを使用する球場では外野手の守備機会は減少する. ・土のグラウンドは,打球を殺すので内野手の守備機会を増加させる. またこれらを考慮した上で,内野によるアウトが多く,外野によるアウトが少ない球団があったとして,その原因が,上記の通りゴロピッチャーが多いためなのか,単純に内野が名手揃いで外野がザルというだけなのかは区別できない. 一塁走者数補正は,期待一塁走者数と各守備位置刺殺数の関係については「一塁走者が増えると一塁刺殺数が減る」という傾向が比較的はっきり見られたが,それ以外の関係があまり明らかでなかったため,行わないこととする. 左腕補正については,ここ10年のNPBでは以下の傾向が見られた. ・左腕が60イニング増えると,一塁手補殺数は1減少する. ・左腕が25イニング増えると,二塁手補殺数は1減少する. ・左腕が25イニング増えると,三塁手補殺数は1増加する. ・左腕が25イニング増えると,遊撃手補殺数は1増加する. この補正方法がさらに過去にさかのぼって適用できるか,他のリーグで適用できるかはわからないが,とりあえず遊撃手の補正数はJames(2006)に等しく,この補正には一定の信憑性があると考え,採用することとした. もう一つ,細かい点で,遊撃手の期待刺殺数を求めるとき,「三塁手と遊撃手の補殺を分母から引く」という点を,他の守備位置に対しどう適用するかという問題がある.一塁手,二塁手は全内野手から送球を受ける可能性がある守備位置,と言ってよいと思うのだが,三塁手の場合,3−5とか4−5とか6−5は分母に入れなくてもいい気がするもののまあまったくないとも言えない.そもそも遊撃手からして,「刺殺の何割が送球を受けたもので何割がフライ・ライナーを捕球したものか」は結構重要な問題である.まあこれは現状ではわからないのでどうしようもない.とりあえず二塁手,三塁手に関してはみずからの補殺のみ分母から省略することとした. 一塁に関しては,刺殺数において他の守備位置から受ける影響があまりに多い一方,補殺数はフットワークのよさを表す数値であると考え,補殺のみで得失点を算出した. それからDER補正であるが,「一旦出塁してからアウト」という守備記録のほうには当然含まれるアウトが含まれていないため,これの含まれる「奪アウト率」で補正を行った. もっとも,「一旦出塁してからアウト」の約半数を占める併殺打によるアウトはまだ野手の能力によるものと考えやすいから良いとして,その他のアウトが盗塁死,その他先の塁を狙って憤死,走塁ミス,守備妨害,隠し球,ベース踏み忘れなど守備側の実力と言うよりは攻撃側の暴走・ミスとみなされやすいものが多いので,微妙な問題ではある. 個人守備イニングはここの2の方法で推計,得点化に当たっては道作氏の採用する「1Play Plusあたり0.47点」を採用した.誤差は「推計守備イニングがチーム守備イニングの半分以上」という条件では5点以内に抑えられていることを久保拓也さん集計の2007年度データで確認.また,失策は補正していない.
文献 James Bill 2006.Relative Range Factors.In The Fielding Bible ed John Dewan 199-209.Skokie,IL:ACTA Sports. |