他選手補殺補正
以前送球の行方に注意するにおいて,Excelのソルバー機能を用いて送球の流れを推測した.今回は,久保拓也さんから頂いた日本プロ野球通年のデータを用いて,プロ野球で野手がアウトを取る時の送球が時代とともにどう変化しているかを推測してみた.
実際の作業に当たっては,1936年から2009年までのデータを用い,一リーグ時代(1936-1949だが,以後便宜的に1940年代と呼ばせていただく),および1950年代以降2000年代までの10年ごとに,補殺と刺殺の組み合わせを,誤差の最小自乗和が最小になるように割り振ってみた.結果は以下の通り.表内の数字は,1試合当たりの推計数を表す.
2000年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.00 | 0.71 | 0.49 | 0.04 | 0.20 |
| 捕手補殺 | 0.01 | 0.00 | 0.00 | 0.43 | 0.00 | 0.11 |
| 一塁補殺 | 0.41 | 0.05 | 0.00 | 0.00 | 0.01 | 0.15 |
| 二塁補殺 | 0.16 | 0.06 | 2.43 | 0.00 | 0.09 | 0.42 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 1.75 | 0.03 | 0.00 | 0.00 |
| 遊撃補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.34 | 0.75 | 0.00 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.05 | 0.00 | 0.06 | 0.02 | 0.03 |
| 補殺なし | 0.05 | 0.35 | 1.46 | 0.34 | 0.60 | 0.79 |
2000年代においては,例えば,投手補殺―一塁刺殺の組み合わせとったアウトの数は,平均して1試合当たり0.7個程度であることがこの方法では推測されている,ということである.以下,時代をさかのぼって続ける.
1990年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.00 | 1.13 | 0.46 | 0.00 | 0.00 |
| 捕手補殺 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.21 | 0.19 | 0.19 |
| 一塁補殺 | 0.35 | 0.00 | 0.00 | 0.04 | 0.00 | 0.25 |
| 二塁補殺 | 0.11 | 0.00 | 2.54 | 0.00 | 0.03 | 0.30 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 1.44 | 0.42 | 0.00 | 0.00 |
| 遊撃補殺 | 0.19 | 0.20 | 2.63 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.06 | 0.00 | 0.04 | 0.04 | 0.04 |
| 補殺なし | 0.00 | 0.43 | 0.97 | 0.95 | 0.56 | 0.76 |
1980年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.00 | 1.18 | 0.44 | 0.09 | 0.16 |
| 捕手補殺 | 0.01 | 0.00 | 0.00 | 0.14 | 0.04 | 0.40 |
| 一塁補殺 | 0.40 | 0.06 | 0.00 | 0.21 | 0.00 | 0.00 |
| 二塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 3.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.11 | 1.82 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 遊撃補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.00 | 0.98 | 0.00 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.04 | 0.00 | 0.06 | 0.00 | 0.09 |
| 補殺なし | 0.04 | 0.68 | 1.30 | 0.30 | 0.84 | 0.86 |
1970年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.03 | 1.30 | 0.38 | 0.00 | 0.15 |
| 捕手補殺 | 0.02 | 0.00 | 0.19 | 0.15 | 0.10 | 0.13 |
| 一塁補殺 | 0.37 | 0.00 | 0.00 | 0.14 | 0.03 | 0.07 |
| 二塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.45 | 0.00 | 0.00 | 0.37 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 1.78 | 0.39 | 0.00 | 0.00 |
| 遊撃補殺 | 0.05 | 0.17 | 2.16 | 0.35 | 0.18 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.04 | 0.03 | 0.04 | 0.04 | 0.04 |
| 補殺なし | 0.00 | 0.55 | 1.20 | 0.81 | 0.77 | 0.89 |
1960年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.00 | 1.79 | 0.00 | 0.04 | 0.12 |
| 捕手補殺 | 0.00 | 0.00 | 0.33 | 0.21 | 0.03 | 0.00 |
| 一塁補殺 | 0.22 | 0.00 | 0.00 | 0.24 | 0.09 | 0.03 |
| 二塁補殺 | 0.12 | 0.00 | 2.33 | 0.00 | 0.00 | 0.40 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.17 | 0.29 | 0.00 | 0.00 |
| 遊撃補殺 | 0.12 | 0.02 | 2.18 | 0.66 | 0.00 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.07 | 0.00 | 0.08 | 0.00 | 0.05 |
| 補殺なし | 0.11 | 0.68 | 0.95 | 0.71 | 0.70 | 0.98 |
1950年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.03 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
| 捕手補殺 | 0.00 | 0.00 | 0.50 | 0.00 | 0.00 | 0.18 |
| 一塁補殺 | 0.12 | 0.00 | 0.00 | 0.22 | 0.00 | 0.00 |
| 二塁補殺 | 0.08 | 0.00 | 2.22 | 0.00 | 0.01 | 0.48 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.03 | 2.21 | 0.63 | 0.00 | 0.01 |
| 遊撃補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.40 | 0.92 | 0.02 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.19 | 0.05 | 0.00 |
| 補殺なし | 0.14 | 0.64 | 1.15 | 0.66 | 0.75 | 0.94 |
1940年代
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.04 | 1.60 | 0.53 | 0.00 | 0.02 |
| 捕手補殺 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.24 | 0.10 | 0.42 |
| 一塁補殺 | 0.04 | 0.00 | 0.00 | 0.22 | 0.00 | 0.03 |
| 二塁補殺 | 0.12 | 0.09 | 2.37 | 0.00 | 0.11 | 0.15 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.28 | 2.13 | 0.31 | 0.00 | 0.12 |
| 遊撃補殺 | 0.07 | 0.11 | 2.32 | 0.73 | 0.18 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.04 | 0.00 | 0.06 | 0.06 | 0.14 |
| 補殺なし | 0.10 | 0.23 | 1.64 | 0.78 | 0.64 | 1.08 |
もっとイメージを沸かせやすくするために,グラフ化してみる.以下は,投手補殺と組み合わせの刺殺数,および補殺の組み合わせがない投手刺殺数の変化をグラフ化したものである.要は,「投手は打球や送球を捕球した後,アウトを取るためにそのボールを別の選手に投げたか,投げたとしたらどこに投げたか」ということが示されている.

ここからいくつかのことが読み取れる.
・サンプル数不足から,推計数はやや粗いものとなっている.おそらくはどの時代においても細々と存在したであろう1-6や1-5が観測されたりされなかったりしていることあたりから,この推計方法の限界を認識願いたい.
・投手が打球を処理するアウトは年々減少している.特に投手一人でとるアウト(大半は投飛・投直と思われる)は1970年代以降ほとんど観測されないまでになっている.
・一塁手に向かって投げる割合が減り,二塁でアウトを完成させる割合が増えているように見える.人工芝化などでゴロの足が速まり,投ゴロそのものが減少する一方,封殺はしやすくなったということでしょうか.あるいは単なる誤差か.
以下,守備位置ごとに続ける.

傾向がつかみにくいが,2-3送球の減少から補ゴロが減少していることが読み取れる.2-4送球,2-6送球の増加が示すものは何だろう.盗塁死の数は基本的に1960年代以降減少し続けているので,補ゴロ→二塁封殺が増えたということ.考えられるのは犠打成功率の低下だが….

・プロ野球草創期にはほとんど観測されていない3-1送球が1950年代から1970年代にかけて激増しているのが見て取れる.これは道作氏の「一ゴロと同時に投手が一塁に全力疾走するプレーは1960年代前半に定着した」という説とも符合する.
・ある時代まで二塁送球は3-4送球主体だったように見えるのだが,現在の併殺プレーでは3-6送球が常識であり,かつてはどのような封殺が行われていたのか気になるところである.

・全時代を通じて4単独,4-3送球,4-6送球がほとんどを占める.

・1960年代以降,打球処理機会自体の減少が見て取れる.道作氏によるところの「守備における三塁手の位置づけの変化」がはっきり表れている.
・全時代を通じて5単独,5-3送球,5-4送球で大半を占めている.

・打球処理数がゆるやかに減少しているようにも読めるが,これは投手の奪三振数が増えた影響によるものであり,全時代を通じて最も打球がよく飛んでくる守備位置であり,守備の花形であることに変わりはない.
・全時代を通じて6単独,6-3送球,6-4送球で大半を占めている.
外野は単独刺殺がほとんどを占めるので,補殺時の送球のみを示す.

・全時代を通じて2,4,5,6への送球が大半という常識的な結果となった.
・昔の外野手補殺数は,今と比べてずっと多かったらしい.攻撃側のエクストラ進塁判断能力の向上によるものだろうか?
結果は,3-1送球の増加,投ゴロ,補ゴロの2塁封殺の増加など,送球パターンの時代を通じた変化が示唆されるものとなった.ただ,
・10年ごとかつ誤差の大きい数字であり,なんとなく傾向をつかむことはできるものの,きっちり時代区分できる自信が持てるほどではないこと
・送球が変化している部分が,投手,捕手という,送球の絶対数があまり多くない守備位置であること
から,実際の守備力評価補正にあたっては,以下の,全時代を通じた数字を使うことにした.
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | |
| 投手補殺 | 0.00 | 0.06 | 1.41 | 0.10 | 0.09 | 0.17 |
| 捕手補殺 | 0.02 | 0.00 | 0.07 | 0.20 | 0.09 | 0.24 |
| 一塁補殺 | 0.28 | 0.02 | 0.00 | 0.15 | 0.01 | 0.08 |
| 二塁補殺 | 0.00 | 0.00 | 2.84 | 0.00 | 0.00 | 0.09 |
| 三塁補殺 | 0.00 | 0.08 | 2.00 | 0.17 | 0.00 | 0.00 |
| 遊撃補殺 | 0.01 | 0.00 | 2.17 | 0.92 | 0.00 | 0.00 |
| 外野補殺 | 0.00 | 0.07 | 0.00 | 0.09 | 0.02 | 0.02 |
| 補殺なし | 0.01 | 0.60 | 1.17 | 0.60 | 0.78 | 0.87 |
各補殺数に対する割合でいえば,このような感じである.
| 投手刺殺 | 捕手刺殺 | 一塁刺殺 | 二塁刺殺 | 三塁刺殺 | 遊撃刺殺 | 合計 | |
| 投手補殺 | 0.0% | 3.1% | 77.1% | 5.7% | 5.0% | 9.2% | 100.0% |
| 捕手補殺 | 2.4% | 0.0% | 11.0% | 33.2% | 13.9% | 39.5% | 100.0% |
| 一塁補殺 | 51.8% | 3.5% | 0.0% | 28.1% | 1.4% | 15.3% | 100.0% |
| 二塁補殺 | 0.0% | 0.0% | 97.0% | 0.0% | 0.0% | 3.0% | 100.0% |
| 三塁補殺 | 0.0% | 3.5% | 88.9% | 7.5% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
| 遊撃補殺 | 0.2% | 0.0% | 70.0% | 29.7% | 0.0% | 0.0% | 100.0% |
| 外野補殺 | 0.0% | 33.9% | 0.0% | 43.0% | 11.4% | 11.7% | 100.0% |
全体的には,もっとも変化が大きく見えるのは1960年代から1970年代で,
・3-1Aプレーの定着
・投ゴロ・補ゴロから二塁封殺の急増
・三塁守備機会の急減
などが観測でき,ここで切ってもいいかと思ったのだが,確信が持てなかったので,以後守備力評価には全年データを用いることにする.