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第9回
●夢の間に製造した爆弾(夏目漱石)
「所詮、我々は自分で夢の間に
製造した爆弾を思い思いに抱きながら、
一人残らず、死という遠いところへ、
談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」
【夏目漱石】
漱石は大変なことを、この短い文章にぶち込んでいると思います。
まず「夢の間に」とあるのは、私達の人生のことでしょう。
よく人生は夢に例えられます。
・足利尊氏「この世は夢のごとくに候」 (楠木正成を倒し、京を奪還した後の言葉)
・足利義政 何事も夢幻と思い知る 身にも憂いも喜びもなし
・織田信長 人生五十年 下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり(敦盛)
・明智光秀 五十五年の夢 覚め来りて一元に帰す
・豊臣秀吉 おごらざる者もまた久しからず
露と落ち露と消えにし我が身かな 難波のことも夢の又夢
・蓮如上人 夫れおもんみれば、人間は電光朝露の夢幻の間の楽しみぞかし
「夢の世に 夢見て暮らす夢人が 夢物語するも夢かな」で、
「人生は夢」の言葉は枚挙にいとまがありません。
そんな夢のような一生でなにをやっているかというと
「夢の間に製造した爆弾を思い思いに抱きながら」
ここでいう爆弾とは、罪悪のことでしょう。
生きるためには仕方がないといいながら、殺生の限りを尽くし、
また心の中では恐ろしいことを考えています。
その罪悪は、やがて懐で爆発してしまうものなのかも知れません。
そして。
「一人残らず、死という遠いところへ、
談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」
どんな人も例外なく、最後死んでいかねばなりません。
死刑囚だけが死んでいくのでもなければ、癌で苦しんでいる人だけが
死ぬのでもありません。
100%確実に死なねばなりません。
そのことを知りながら
「談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか」
実はこのことが最も恐ろしいことなのかも知れません。
一大事を一大事と知ればまだよいのですが、
一大事を一大事とも知らず、まったく無防備で死の谷底に向かって
大行進している。これこそ一大事ではないでしょうか。
そんな大変なことを漱石はこの一文にしたためているのかもしれません。
(KEN)
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