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ぐさっとくる話

ちょっとした心がけで、こんなにも人生が快適になるとは!

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第一話
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「大きな金ができたら、どうする」
「別荘の庭のヤシの下で、昼寝でもするよ」
「オレはもう前から、ヤシの下で昼寝をしている」
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女と靴下、それは戦後、強くなったものの代表とされている。
 靴下を、かくまでも強いものにした革命的繊維、ナイロンを発明したのは、ア
メリカのカロザースである。

 勤め先のデュポン社は、この天才化学者に、万人垂涎の約束をしていたそうだ。
「生涯どこへ海外旅行をしようが、どんな高級レストランやバーで飲食しようが、
費用の一切は会社が持つ」
というのである。

 デュポン社としては、この天才技術者を、他社に引き抜かれたりしたら、たい
へんだと考えたにちがいない。

 もし、カロザースの、ごきげんを損じて、ナイロンの秘法を、どこかの会社に
もらされたりしたら、元も子もなくなる。

 彼の一生の遊び代ぐらい保証しても、いたって安いものと考えたのだろう。

 ところが、天国の楽園にいるみたいな、そのカロザースが、四十一歳という若
い身で自殺してしまったのである。

 ここで、人間の幸福とはなにか、を考える一つの小話を紹介しよう。

 所はある南の国。登場人物はアメリカ人と現地人。
 ヤシの木の下で、いつも昼寝をしている男をつかまえて、アメリカ人が説教する。

「なまけていずに、働いて金をもうけたらどうだ」
 男がジロリと見あげて言う。

「金をもうけて、どうするのだ」

「銀行に預けてふやせば、大きな金になる」

「大きな金ができたら、どうする」

「立派な家を建て、もっと金ができれば、暖かい所に別荘でも持つか」

「別荘を持って、どうするのだ」

「別荘の庭のヤシの下で、昼寝でもするよ」

「オレはもう前から、ヤシの下で昼寝をしている」
 このアメリカ人を全人類におきかえてもよいだろう。

 こんな幸福論の破綻を、カロザースは、マザマザと見せているようである。

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