最新情報(2002年3月)
 

3月29日 サービス残業認めず 会社に211万円支払い命令 大阪地裁判決 (産経新聞3月30日付)

 元広告営業・編集担当の女性が、サービス残業″とされた年約700時間の時間外労働の賃金など計約230万円の支払いを、勤務していた会社に求めた訴訟の判決が29日、大阪地裁であった。松本哲泓裁判官は「就労時間とされる午後6時以降は時間外労働にあたる」とした上で、会社側が払っていた月額8万円の営業手当には「時間外賃金の性質があると認めることはできない」として、会社側に計約211万円の支払いを命じた。

営業手当「時間外でない」
 訴えていたのは大阪府八尾市の高橋映美さん(26)。
 判決によると、高橋さんは平成11年7月に通信販売などを業務とする「サンマーク」(本社・東京)に入社。大阪支社編集部で無料情報誌の広告営業と、広告の編集作業を担当していた。
 毎日夕方まで外回りの営業活動を行い、その後、編集部に戻り編集業務をしており、翌年9月に退職するまでの時間外労働は約700時間にのぼった。
 会社側は「営業社員の勤務形態はほとんどが営業所外で行うもので労働時間を算定し難く、所定労働時間だけが労働したものとみなされ、時間外手当が発生する余地はまったくない」と主張したが、松本裁判官は「原告に事業所外の業務を自由に使える裁量はなく、就業規則上与えられた休憩時間以外は労働時間であったと、所定労働時間の午後6時以降を時間外労働と認めた。
 また、会社側は、月額8万円の営業手当に時間外賃金の性質がある」としたが、松本裁判官は「雇用の際の説明にもなく、営業手当を除いた賃金水準も高くない」と認めなかった。
 判決では、時間外労働の賃金分とともに、労基法に違反した使用者に命じられる付加金として約103万円の支払いも命じた。しかし、始業時間の午前10時以前の就労については時間外労働とは認められなかった。

「判決、是正の第一歩に」
午前10時以前「時間外」認定求め控訴へ
   原告・高橋さん
 「同じ立場の人は多い。判決を『サービス残業』是正の第一歩にしたい」
 高橋さんらは判決後、喜びを語った。しかし、この日の判決で始業時間の午前10時以前の就労については時間外労働と認められなかったことには不満を表明。控訴することを明らかにした。
 「今までそんな要求をした者はいない」。在職中から時間外労働の賃金支払いを会社に訴えてきた高橋さんに対し、会社は「開き直って」(原告弁護団)支払いを拒否してきたという。裁判でも一貫「法律上、時間外手当が発生する余地はない」と主張した。
 それだけに高橋さんは「難しい裁判に勝てた」と胸をなでおろす。その一方で時間外手当は労基法に規定されているだけに「(勝って)当たり前のことでもあった」とも話し、サービス残業が多くの企業で常態化している現状を批判した。
 高橋さんの代理人で労働基準オンブズマンの岩城穣弁護士も「サービス残業″によって過労死が出るなど、問題がある企業の現状を是正する第一歩になる」と評価した。」


3月28日 過労死行員の遺族が提訴 第一勧銀に1億2000万 東京地裁

 第一勧業銀行(東京)の国際金融法人部次長だった木村公史さん=当時(47)=が過労死したのは上司らの責任だとして、遺族が二十八日、同行に約一億二千三百万円の損害賠償と社内報への謝罪文掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 訴えによると、木村さんは一九九七年十月以降はアジア経済危機対応で慢性的な疲労状態にあった。九八年四月十六日から十日間の日程でアジア、欧州五カ国の十四銀行を訪れ、外国銀行の円決済を第一勧銀に委託するよう依頼。帰国後も休日がないまま勤務し、同月二十八日、同期の行員の送別会で倒れ、翌日心筋梗塞(こうそく)で死亡した。
 中央労働基準監督署は昨年三月、過労死と認定し遺族補償給付の支給を決めた。遺族は「上司を含む会社は慢性的に働かせ続けた責任がある」と主張している。


3月27日 ストレス対処法の教育必要 隊員の精神ケアで 消防庁の研究会

 悲惨な現場に直面した消防隊員の精神面のストレス対策を検討している総務省消防庁の研究会(座長・丸山晋淑徳大教授)は二十七日、心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神面の障害を起こさないためには予防的な教育などが必要だとする中間報告をまとめた。
 中間報告は、精神面のストレス対策を通じて消防隊員が常に万全の状態でいられることは、防災確保の面からも重要だと指摘。
 そのために、現場活動でのストレスへの対処法を事前に隊員に教育することや、ストレスを受けた可能性のある隊員を、プライバシーに配慮しながら把握することを求めている。
 またストレスを受けた隊員が職場とは関係なく悩みを相談できる態勢の整備や、隊員の家族の理解を深める啓発活動も必要だとしている。


3月26日 <過労死判決>「国内外の出張は負担」逆転の認定判決 東京高裁

 三井東圧化学(現三井化学)の社員だった夫(当時48歳)が死亡したのは過労が原因だとして、千葉県在住の妻が、遺族補償の支給を認めなかった中央労働基準監督署長の処分取り消しを求めた訴訟で、東京高裁は26日、妻側の訴えを認める逆転勝訴判決を言い渡した。村上敬一裁判長は「国内外の出張を含む死亡直前の業務は極めて過重な負担となった」と死亡は労災と認定し、妻の訴えを退けた1審判決を取り消した。

 夫は90年5月、急性心筋こうそくで死亡したが、その直前の13日間は全く休みがなく、鹿児島、栃木、広島、大分、台湾に出張した。判決は「長時間の移動や待ち時間を余儀なくされる出張業務は苦痛を伴い、日常生活を不規則にして疲労を蓄積させた」と指摘した。1審の東京地裁は「出張の移動は労働密度が高くない」などとして請求を棄却していた。

 妻側の弁護士は「出張業務の過重さをきちんと評価した意義ある判決だ」と話している。


3月17日 労基署相談で明暗も  家族「過労死心配」訴え増加  会社「タダ働き」手口悪質に(3月19日付朝日新聞「くらし」のページ)


かけがえのない家族を過労死から守ろうと、労働基準監督署に相談する人が増えています。サービス残業で疲れ果てて帰宅する家族を見るに見かねてのことです。しかし、ウソの残業記録を作るなど会社の手口は悪質になり、労基署の調査が入ると、だれが知らせたのか「犯人捜し」をされるおそれがあります。労基署に相談した結果、明暗の分かれた二つの事例を紹介し、労基署の活用の仕方を考えます。     (鶴見 知子)

夫に内証、匿名で電話  「犯人捜し」され退職
 「このままでは殺されてしまう」
 夫(44)は、化学メーカーの福島県の工場で課長をしていた。出社は午前8持台、退社は連日、日付が変わってから。睡眠は2〜3時間。片道30`のマイカー通勤で、交通事故も心配だった。
 11日間休みなしで160時間勤務と多忙を極めたころ、夫の身を案じた妻(40)は匿名で労基署に電話した。状況を話すと、「ぜひ会社名を教えてほしい」と促され、社名を伝えた。夫には内証にしていた。
 労基署が調査に入ったのは3カ月後。残業代を払うをつ行政指導した。社内では「犯人捜し」が始まった。課長に昇進してから月5万円減収になっていたことや、住宅ローンがあることなどから、夫が凝われた。
夫に尋ねられて、妻は正直に話した。夫が会社に報告したところ、「ペナルティー」を覚悟するように言い渡された。
 「東京本社に夫婦で謝りに来い」「労基署への相談を取り消せ」
妻も2回、社長に呼び出された。退職を決意すると、「どこの会社も採らないようにしてやる」と言われた。辞めるとき、夫は「これを教訓に良い会社になってほしい」と言ったが、会社側からの謝罪はなかった。
 退職から1年。夫は再就職できないままだ。中学生と小学生の子どもがおり、家族は不安な気持ちでいる。
 妻は「行政の中途半端な対応のせいで、残業代目当てと誤解され、会社に憎まれた。相談した人が守られず、会社に何の責めも負わせないのでは、公的機関として頼れない」と訴える。
 担当した富岡労基署の署長は、取材に対して、「匿名の、しかも本人ではなく家族からの電話だったため、不明な点が多いまま調査に入った。結果的に長時間働く人が少なくて対象者が絞り込まれてしまった」と説明する。
 さらに、本人が書いた残業申請書がネックになった、という。年前4時まで働いていても、課長本人が残業時間を短く記入しており、書類上は合法の範囲だったので、残業代の未払いを是正勧告するにとどまった。その後、出退社時間の記録があることが分かったが、会社は「在社時間全部、働いていた証拠はない」と主張してきた。
 法律は労基署に協力した労働者の解雇や不利益扱いを禁じている。
 署長は「本人が退職願を書かなければ、違う展開になったかもしれない」という。
妻は納得できない思いのままだ。「本人は会社の中で言い出せないのが現実。気付いた家族が申し出なければ、過労死は後を絶たないのではないでしょうか」

オンブズマンが支援  秘密に配慮、残業も減る
 関西の大手塗料会社の社員の妻は、昨年、夫の長持間勤務を心配していた。午前2〜3時に帰ってきて、7時通ぎには出勤する。笑顔が消え、「しんどい」としか言わなくなった。
 労基署に相談した。会社に指導があり、一時的に改善されたが、すぐ元に戻ってしまった。再び相談すると、「本人が協力してくれないと困る」と言われた。
 夫は協力する気力も時間もない。このまま何もできないのかと絶望しかけたとき、ニュースで「労働基準オンブズマン」を知った。昨年6月、脇田滋・龍谷大学教授を代表に、関西の弁護士らが立ち上げた市民団体だ。過労死や過労自殺を防ごうと、労基署への告訴・告発などを支援する。
 刑事罰を求める告訴・告発は、その会社で働き続けたい人には厳しい選択だ。妻の相談を受けた岩城穣弁護士は、本人ではなく弁護士が通告する方法をとった。労基署に夫の名刺や妻の連絡先、妻がつけた夫の勤務時間などを提出して、会社側には決して知られないように配慮を求めた。
 担当した大阪・天満労基署の監督官は「事前に情報を十分に得た方が当事者を守りやすい」と話す。定期監督を装ったり、関係ない部署を調べたりして、会社側が分からないようにできる。
 ここでも残業報告書はあったが、社員たちは60時間残果レても15時間と自筆で記入していた。
 弁護士らによると、監督官ば社員数人を無作為に選び、一人ずつ尋ねていった。多くの社員は「サービス残業」を認めた。調査の結果、会社に対し過去8カ月分、約1千万円の残業代を支払わせた。その後は残業が減り、夫は夕飯を家族と食べられるようになった。仕事の話を楽しそうに語ることもある。
 妻は「長く働きたい会社なので、法律を守ってほしかった。オンブズマンが入ってから、労基署の動きが格段に良くなった」と感謝する。
 動き方の変化について労基署は否定するが、「家族の情報は不確かな場合もあり、弁護士が整理理してくれて助かった面はある」としている。
 労働基準オンブズマンの連絡先は、下川和男法律事務所(TEL06−6366−5253、ファクス06−6366−5255)。


3月17日 時間外労働協定 月に150時間も 法律で上限規制を 参院委で八田議員要求(3月17日付「しんぶん赤旗」)

 日本共産党の八田ひろ子議員は十五日の参院予算委員会で、大企業の長時間労働を容認する特別協定を示し、「政府が法律で長時間労働の上限規制をすべきだ」と迫りました。

 労働基準法三六条に基づく「三六協定」によれば、労使が特別協定を結べば、政府基準である時間外労働の上限(年間三百六十時間)を延長して労働者を働かせることができます。八田氏は独自に調査したトヨタとその関連企業、NTT西日本、NKKなど大企業の特別協定の資料を提示しました。

 八田氏は、大リストラを強行しているNTTの特別協定では、年間の時間外労働が一千時間、一カ月では百五十時間になることを示し、「厚生労働省の過労死認定基準では、一カ月百時間で“赤信号”だ」と指摘。政府が年間労働時間を千八百時間としながら、一方で残業一千時間という長時間労働を放置していると批判し、「法律で上限規制すべきだ」と求めました。

 坂口力厚生労働相は「法的に罰則を設けるより企業が社会規範を守るべきだ」と答え、長時間労働を放置する姿勢を示しました。


3月17日 <労災隠し>防止で連携、厚労省が「報告の適正化」懇談会設置

 厚生労働省は16日までに、経済団体、労働団体、行政で構成する「労災報告の適正化に関する懇談会」を設置した。労災隠しの排除をテーマに3者が集まる組織は初めて。仕事上の事故や病気を労災保険ではなく健康保険などで処理する「労災隠し」が深刻な問題として浮上したことや労災保険料改定への対応で、これまでの協議で、労働基準監督官の役割を補完して危険個所の指摘などをする「労災防止指導員」の強化で合意の方向といい、新年度以降、具体策を詰める。労災隠し問題については、91年に旧労働省が通達を出して以降、具体的な対策は打ち出されていなかった。

 労災事故で負傷した場合、治療費は本来、労災保険扱いとなる。しかし、実際には健康保険に請求されて労災事故が表に出ない“労災隠し”が頻発。こうしたケースが、政府管掌の健康保険だけで90年度からの10年間で約58万件(約207億円)あったことが一昨年秋、明るみに出た。

 設置された「労災報告の適正化に関する懇談会」には、厚労省、日経連、連合のほか、建設業界と関連労組から代表者が参加した。

 協議の中で、労災隠しの実態が十分に把握できていないことの反省を踏まえ、労災事故が発生しやすい現場への対応などが議論されたという。

 強化で合意に達しつつある「労災防止指導員」は非常勤の国家公務員。労働現場のパトロールなどを通じて労災事故対策について指導する。現在、1500人が労組側と一般から選ばれている。労災事故が多い建設業界を中心に、人員を増やすことが検討されている。

 厚労省によると、00年の労災事故による休業4日以上の死傷者は約13万4000人。うち製造業と建設業で5割以上を占めた。また、労災隠しの摘発件数は過去最悪の91件で、65件が起訴された。 【大島秀利】


3月16日 自殺相談、1週間で3千件

 「リストラされて、自殺願望が再び芽生えた。妻は死ぬなら自宅のベッドで死んでくれという」――。「日本いのちの電話連盟」が昨年12月に行った全国電話相談に、こんな訴えを含めて3000件以上の自殺に関する相談が寄せられた。
 40歳以上の相談者が半数近くを占めており、長期不況で厳しい雇用情勢が続く中、中高年層の悩みの深刻さが浮き彫りとなっている。
 この電話相談は、自殺予防を目的に全国49の「いのちの電話センター」を結んだ初の試みで、昨年12月1―7日の1週間実施された。自殺に関する相談は3037件で、相談者は40歳以上が1397人にのぼった。
 自殺を考えたきっかけでは、「大学生の息子がうつ病で、自殺未遂も起こした。死にたい、と言われて疲れ切った」(50歳代、女性)など、家族関係にまつわる悩みが多かった。その一方で、「1人暮らしで1年以上仕事をしていない。親に仕送り打ち切りを通告された」(30歳代、男性)、「リストラで収入がなくなり、妻とも離婚した」(40歳代、男性)など、不況による失業者増を反映した相談も目立った。
 自殺者は、1998年以降毎年3万人を超えており、厚生労働省も自殺防止対策有識者懇談会を設けて対策に乗り出している。



3月15日 過労でぜんそく悪化と認定 労基署側の控訴を棄却 名古屋高裁

 「住友電設」(大阪市)の社員鈴木竜雄さん=当時(42)=が、過労でぜんそくを悪化させ死亡したとして、妻美穂さん(49)=愛知県一宮市=が、名古屋東労働基準監督署長に遺族補償年金の不支給処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が十五日、名古屋高裁であり、大内捷司裁判長は処分を取り消した一審判決を支持し「過労でぜんそくが悪化し、死亡した」と認定、労基署側の控訴を棄却した。
 妻側の弁護士によると、過労死をめぐる訴訟で、過労でぜんそくが悪化して死亡した、と高裁段階で認定されたのは初めて。
 大内裁判長は判決理由で、一審判決の認定事実をほぼ全面的に踏まえた上で、「気管支拡張剤の多用や喫煙習慣などが主な死因、とする労基署の主張は採用できない」と指摘。「労基署の控訴は理由がない」と述べた。
 判決によると、竜雄さんは一九七七年、工事現場の粉じんでぜんそくを発症。名古屋市で開かれた世界デザイン博覧会宿舎の電気設備工事の現場責任者として八八年から翌年にかけて従事し、ぜんそくが悪化したのに、内勤への配転希望が実現せず、八九年十一月、発作を起こして死亡した。
 美穂さんは、住友電設にも損害賠償などを求めて提訴。二○○○年一月、同社が六千万円の解決金を支払うことで和解している。
 名古屋地裁は九九年九月、不支給処分を取り消し、労基署側が控訴していた。
 判決後、記者会見した美穂さんは「判決がいったん延期されるなど、長い裁判だったが、高裁判決もいい結果でほっとしている」と話した。


3月13日 「月100時間を超す残業」で京セラ過労死訴訟が和解(朝日新聞3月14日付)

 「京セラ」(本社・京都市)の社員で香港の現地法人に勤務していた大森光隆さん(当時29歳)が心筋こうそくで死亡したのは過労が原因だったとして、秋田県大曲市の両親が、同社などを相手取って起こした損害賠償請求訴訟は12日、仙台高裁秋田支部(矢崎正彦裁判長)で和解が成立した。会社側が5千万円を支払うとともに、従業員への「安全配慮義務を尽くす」などと約束した。

 一審は原告敗訴だったが、厚生労働省が昨年12月、過労死認定で死の6カ月前からの「蓄積疲労」を重視する新基準を示したことが和解に結びついた。新基準は「発症前1カ月間に約100時間を超す残業」などを「蓄積疲労」の目安とした。代理人によると、カメラ開発部の技師だった大森さんの残業時間は「200時間近かった」という。

 提訴から4年半。勝利判決にも等しい和解内容を、原告の両親は「会社側は社員の健康に配慮すると約束した。息子の死は無駄にならなかった」などと喜んだ。



「息子の死、無駄にならず」 京セラ訴訟

息子の過労死を訴え続けた父親の大森昌丸さんと遺影を胸元に抱える母親の光子さん=秋田市の裁判所玄関前で
和解金5000万円 「安全配慮義務尽くす」

父「経験、過労死防止に」

 次男が心筋こうそくで死亡したのは出向先の海外工場での過酷な労働が原因だ||秋田地裁、仙台高裁秋田支部を舞台に足かけ5年に渡った電気機器大手「京セラ」(本社・京都)を巡る過労死訴訟は12日、京セラ側が5千万円の和解金を支払い、社員への「安全配慮義務を尽くす」などと約束したことで和解が成立した。この日の協議に喪服で出席した両親は、安どの表情で「息子の死は無駄にならなかった」と語った。

 「勝利和解」

 午前11時45分。裁判所正面玄関から、支援者が念願の4文字を記した紙を掲げて駆け出してくると、全国から集まった50人ほどの仲間たちが拍手を送った。

 遅れて、過労死した大森光隆さん(当時29)の父昌丸さん(69)と母光子さん(64)が姿を現した。目をつぶったままの昌丸さんの横で、喪服姿の光子さんが「お世話になりました」と何度も頭を下げた。

 この後の記者会見で光子さんは「毎朝、息子の遺影に手を合わせながら、死を無駄にしないぞ、という気持ちでやってきた」と振り返った。昌丸さんは「今回の経験を過労死阻止のためにいかしたい」と語った。

 光隆さんは、中国の関連工場で設計技師として新製品開発に携わっていた96年10月、突然倒れ、死亡した。99年7月に出された一審判決は、死因と業務との因果関係を認めなかった。

 しかし、厚生労働省が昨年12月、それまで発症前1週間程度に限られてきた業務実態の判断を、6カ月前まで広げ、長期間の「蓄積疲労」を認める新たな認定基準を示したことが、今回の和解に結びついた。

 新基準は蓄積疲労の目安を「発症前1カ月間に約100時間を超える残業」などとしているが、原告代理人によると、光隆さんの死亡前の残業時間は1カ月間で200時間近かったという。


3月13日 京セラ過労死 両親訴え勝利和解 安全配慮義務を明記 仙台高裁秋田支部(「しんぶん赤旗」3月14日付)

 息子の死は過労死として、秋田県大曲市の両親が京セラと香港の現地法人を相手取り損害賠償を求めた京セラ過労死訴訟の和解協議が十二日、仙台高裁秋田支部(矢崎正彦裁判長)であり、双方が裁判所の提案を受け入れ、和解が成立しました。

 訴えていたのは大森昌丸さん(69)と光子さん(64)。息子の光隆さん(当時二十九歳)が一九九六年十月七日、出張先の中国東莞市石龍鎮の工場で就労中に心筋梗塞(こうそく)で死亡したのは過労死で、京セラと現地法人は安全配慮義務に反していた、と主張しました。

 和解成立後の記者会見で、大森夫妻と弁護団は、「画期的な勝利和解」と強調しました。

 和解条項は、前文で光隆さんの死を「加重労働による極度の疲労のため」と両親が訴えたと明記し、(1)京セラらが和解金として既払金を除き五千万円の支払い義務を認め、両親に支払う(2)京セラらは、光隆さんの業務遂行中死亡を真摯(しんし)に受け止め…従業員の…安全配慮義務を尽くすよう努力する、など五項目を取り決めています。

 原告弁護団は、(1)五千万円の支払いは損害賠償責任を認めたものと同視できる(2)一審判決の不当性が明らかになった(3)国内在籍社員が海外子会社に出向し過労死した損害賠償請求訴訟で和解が成立した初めての事件(4)被控訴人らに安全配慮義務を尽くす努力を約束させた、などをあげ、「労働者の生命と健康を守るために画期的な意義がある」と強調しました。

 昌丸さんは、裁判を支え導いた多くの人びとに感謝し、「裁判が終わったが過労死はなくなっていない。けっして傍観者であってはならない。安心して生きられるよう願うのが人間の道。微力ながら(過労死を)なくすよう頑張っていきたい」と話しました。光子さんは、「息子の死をムダにしたくないと立ち上がった。(裁判が)京セラの労務改善につながっており、救われる思いをしている」と話しました。

 同訴訟の提訴は九七年八月。一審の秋田地裁判決(九九年八月)は訴えを棄却。両親が控訴していました。


3月4日 サービス残業など労基法違反  家族からも「申告」できます  井上、八田議員に政府が答弁書

 政府はこのほど、先に日本共産党の井上美代、八田ひろ子両参院議員が提出していた「労働基準法における監督機関に対する申告に関する質問主意書」に対し、労働者の家族などから同法違反の事業場に関する情報が寄せられた場合には、情報の内容、緊急性などを考え合わせ、「事業場に対し監督指導を実施する」との答弁書を出しました。

 この質問主意書は労働者の申告権を定めた労働基準法第一〇四条について質問したもの。「家族等から監督機関へ寄せられるさまざまな情報は、労働法令違反の重大な事実を通報しているものが多く含まれており、これらの情報も労働者本人の申告に準じて取り扱うべきである」として、政府の見解を求めていました。

 政府の答弁書は、家族からの情報によっても監督指導を実施することを明らかにしており、サービス残業(ただ働き)の根絶や長時間労働の規制などに活用できます。(3月4日付しんぶん赤旗)


3月4日 <過労死>深夜残業などに対応せず会社と社長に罰金 東京簡裁

 99年4月に過労死した社員に、連日の深夜残業をさせながら労働時間の管理や健康診断をしなかったとして、労働基準法と労働安全衛生法違反で略式起訴されていた東京都渋谷区の設計・施工会社と社長(49)に対し、東京簡裁は1日付で、それぞれ罰金30万円の略式命令を出した。


3月1日 銀行はサービス残業まん延  小沢議員追及に厚労省答弁「手当支払いを」

 銀行には「五つのサービス残業がまん延している」と二十七日の衆院厚生労働委員会で日本共産党の小沢和秋議員が告発し、集中的な監督指導を求めました。

 業務命令がなくても残業しなければ処理できないような場合について、厚生労働省は「手当の支払いが必要」と答弁しました。

 小沢議員は、大手銀行はサービス残業の「無法地帯」とのべ、通常でも七、八十時間の残業のうち二、三十時間しか自主申告できないこと、金融庁の不良債権の査定がある月は百数十時間の残業となり、五十時間くらいしか申告できないと告発。(1)閉店後の通常の残業(2)朝八時までに行員の七割が出勤(3)一時間のはずが三十分くらいしかとれない昼休み(4)休日出勤―の四つのサービス残業を指摘しました。

 小沢議員は、問題は残業の自主申告制にあるとのべ、大銀行では、上司が書き直せるよう鉛筆で残業時間を書いていると指摘。自主申告制の禁止とともに銀行へのいっせい立ち入り調査を求めました。坂口厚労相は、現在、各企業への調査をすすめており、銀行もその一つと答えました。

 小沢議員は、五つ目のサービス残業として、管理職に午後十時以降の深夜割増賃金が支払われていないと指摘したのに対し、日比徹労働基準局長は「割増賃金が必要」と答弁しました。(3月1日付しんぶん赤旗)



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