最新情報(2000年10月)
10月26日
  過労死 死亡した進学塾講師の母親が労災申請(神戸)

  進学塾「日能研関西」(本社・神戸市)の男性講師(当時39)が今年1月にくも膜下出血で死亡したのは、年末年始を含む約2カ月間に1日も休みがない激務による過労とストレスが原因として、男性の母親が26日、 神戸東労働基準監督署に遺族補償一時金などの支給を求めて労災申請した。

  代理人の弁護士によると、男性は大阪市中央区の教室などで有名私立中学を目指す「灘・特進コース」の小学6年生らに算数を教えていた。
  授業以外にもテスト作成や保護者説明会などで忙しく、1月10日に私立中の入試が始まると、各試験会場に激励に出向いたり、不合格者の相談に乗るなど更に仕事が増加。同23日早朝、自宅でくも膜下出血で倒れ、6日後に亡くなった。
  分かっているだけで、昨年12月1日以降の53日間無休で、倒れるまでの1週間の労働時間は約80時間だったという。

   母親は「いつ電話しても自宅にいないほど、異常な忙しさだった。息子の無念さを思うと悔しくてならない」と話している。同社は「全く休みが無かったということはないはず。過重労働だったかどうかの判断は労基署に任せたい」としている。

  同社は関東、九州にもグループ会社がある大規模進学塾。同社だけで兵庫、京都、大阪、広島の4府県に17教室があり、約6000人の生徒がいる。 

 

 10月26日
   過労死 市職員の死因は公務に起因と1審を支持(広島高裁支部)

   岡山県倉敷市の男性市職員(当時42歳)が急性心筋こうそくで急死したのは、長期の過重な公務が原因として、男性の妻(51)が地方公務員災害補償基金県支部長を相手取り「公務外災害」の決定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が26日、広島高裁岡山支部であった。
   前川鉄郎裁判長は「死因は公務に起因する」として、公務と急死の因果関係を認めた1審・岡山地裁判決を支持、県支部の控訴を棄却した。

  判決によると、男性は市下水道局の係長だった1989年11月24日午後11時半ごろ、残業を終えて帰宅途中に気分が悪くなり、翌25日午前4時ごろ、心筋こうそくで急死した。
  もともと高血圧症で治療を続けながら勤務。84年4月から死亡するまでの約5年8カ月間は、県に出向するなど仕事に忙殺され、1カ月平均で73〜57時間の残業や休日出勤を続けていた。

  妻は同基金県支部に公務災害の認定を請求したが、同支部は91年1月、基金理事長通達で示されていた過労死の認定基準「死亡前4週間」を判断材料に、「公務が過重だったとは認められない」との決定を出した。
  同支部審査会や同基金審査会への再審請求も行ったがいずれも棄却され、93年3月に提訴。98年12月の1審判決は「長期間の公務の過重さが、心筋こうそくを招いた」と因果関係を認めたが、同支部が控訴していた。


 10月25日 
   放射線被ばくで労災認定 福島の元原発作業員

   共同通信ニュース速報
  福島県内の原子力発電所などで働き、昨年十一月に白血病で死亡した同県内の元作業員の男性=当時(47)=について、富岡労働基準監督署は二十五日までに、作業中の放射線被ばくが原因の労災と認定した。
  同労基署によると、男性は東京電力の孫請け会社の溶接工として約十一年にわたり、東京電力の福島第一原発(双葉町、大熊町)、福島第二原発(楢葉町、富岡町)などで働いていたが、昨年十一月に白血病で福島県いわき市の病院で死亡。
  妻が昨年十二月、労災認定を申請した。
  労働省では「被ばく総量が五ミリシーベルトに作業年数を掛けた数値を上回っていること」などの認定基準を規定。この男性の被ばく総量が七四・九ミリシーベルトだったことなどから同監督署は労災と認定した。
  労働省によると、茨城県東海村の臨界事故による急性放射線症のケースを除き、原発作業員の放射線被ばくに関する労災認定の申請は、昨年度までに全国で九件あり、うち四件が認められている。


社員のメール傍受認めます」英で法律施行
   【ロンドン24日=渡辺覚】
英国で二十四日、企業に対して、従業員の電話や電子メールの傍受を認める法律が施行された。
   この法律は、「捜査権限規制法」。本来、IT(情報技術)時代に即応した犯罪捜査の充実を目的とした新法だが、捜査当局に電子メールの傍受を認めるなど、全国的に情報通信の傍受システムを整える一環として、英国内の企業や官公庁にも従業員・職員の通信記録をモニターする幅広い権限を付与したものだ。
   これによって、英国内の企業は、従業員の同意を得ずに、電話の会話や電子メールの送受信記録を傍受したり、インターネットの閲覧記録をモニターできるようになった。
   新法は、傍受の目的を〈1〉業務の記録維持〈2〉国家機密の保持〈3〉犯罪防止や捜査協力〈4〉通信の不正使用――などと幅広く設定。企業にとっては事実上、社内のすべての電話やコンピューター通信記録の常時監視が可能となった。法制化の過程では「従業員の同意」の扱いをめぐって議論が分かれたが、最終的に、同意は不要となった。

   

10月24日
   航空機内の失神・心臓発作予防は「水」補給

  気圧の低い航空機内での失神や心臓発作の予防に、水分の補給が効果を発揮することが、埼玉医大の松村誠・心臓病センター超音波検査研究室長らの二十四日までの研究でわかった。パイロットの間では「とにかく水はよく飲んだ方がいい」と昔から語り継がれてきたが、その効果が科学的に説明された形だ。
   航空機内は、乗客や乗員が酸素マスクなしで行動できるよう地上に近い気圧に保たれている。しかし、機外との気圧差が大きいほど機体にかかる負担が大きいため、巡航状態に入ると、〇・七〜〇・八気圧程度に下がる。
   気圧が低いと血中の酸素が不足する上に、自律神経の働きで血圧も下がり、失神、心臓発作が起きやすい。
   このため松村室長は、その予防に血流量を増やす方法を検討。富士山の山頂と同じ程度の〇・六九気圧の実験施設内で、実験協力者十二人について、体に吸収されやすいスポーツドリンク五百ミリ・リットルや食事をとった場合と、一切とらなかった場合を比較した。
   この結果、水分をとった場合は血圧の低下はほとんど起きず、けい動脈の血流量も何もとらない場合に比べ5%増加。脳内の酸素量も明らかに上昇した。
   特に飛行時間の長い国際線では、機内の湿度は20%以下と乾燥しており、体内の水分も失われやすいことから、地上での日常生活以上に、こまめな水分補給が血圧の維持と低酸素状態の改善に効果がありそうだ。
   松村室長は「水分補給に少し気を使うだけで心臓発作の可能性を減らせる。ただ、糖尿病や高血圧など持病がある人は、念のため医師に相談してほしい」と話している。

 

10月24日 
   過労自殺賠償で調停成立 ソフト会社の長時間労働で(仙台簡裁)


 コンピュータープログラマーだった長男の自殺は長時間労働が原因として、宮城県の衣料品販売業夫妻が、勤務先のソフトウエア会社「シー・エス・イー」(東京)に慰謝料など約七千七百万円の賠償を求めた民事調停が二十四日、仙台簡裁であり、会社側が解決金として七千万円を支払うことで調停が成立した。
   過労死や過労自殺の賠償問題が調停で解決するのは異例。広告代理店「電通」の過労死訴訟で今年三月、最高裁が会社の責任を認めて以降、過労死などで会社の責任を認める司法判断が相次いでおり、夫妻の代理人は「(調停成立には)そうした司法の流れが背景にある」としている。

   申し立てによると、夫妻の長男当時(26)は一九九四年に入社。
   九七年三月ごろから長時間労働が恒常化した。自殺した五月は徹夜二日を含め残業時間が約百八十五時間に達し、休日もすべて出勤していた。
   調停で、会社側は「仕事を早く切り上げるべきだった」などと生樹さんの責任を主張していたが、最終的に取り下げた。仙台労働基準監督署は昨年十一月、長男の労災を認定している。

 

10月23日 
    航空機のエコノミー席は危険? 足動かせず血液障害も

    共同通信ニュース速報

【ロンドン23日共同】
   ロンドンのヒースロー空港で今月中旬、到着直後に死亡した二十八歳の英国人女性が、実は、長時間エコノミークラスの狭い座席に座っていたことによる血行障害が原因となって起きる「エコノミークラス・シンドローム」の犠牲者だったことが分かった。
   二十三日付の英各紙によると、この女性はシドニー五輪を観戦し、約二十時間をかけてシドニーから香港経由で帰国。しかし、ヒースロー空港に到着直後にロビーで意識を失い、間もなく死亡した。
   検視の結果、死因は血栓症と判明。エコノミークラスの狭い座席に長時間座っていたことで、足の血管中に血液の塊が生じ、それが心臓や肺に達して死亡する「エコノミークラス・シンドローム」が原因だった。
  専門医によると、エコノミークラス・シンドロームによる事故は毎年何件か発生しているが「大半は中・高年者で、二十八歳の犠牲者はおそらく最年少だろう」という。
  航空会社は「一時間に三、四分間足を動かすだけで状況は改善される」としている。

 

10月19日
    自殺防止へ総合対策 「いのちの日」設定 マニュアル作りも 厚生、労働省
    (産経夕刊)

 *自殺防止、厚生省が対策 来年度から 動機調査や相談員研修(日経)


中国過労死:上海の食品工場の男性の遺族が損害賠償訴訟

 【北京19日浦松丈二】上海市の食品工場で夜勤中に突然死した男性の遺族が「過労死だ」として、工場側を相手取って同市静安区人民法院(地裁)に損害賠償訴訟を起こしている。19日付の中国各紙は「中国初の過労死訴訟」として一斉に報道しており、日本語の過労死は「グオ・ラオ・スー」という中国語読みで広まりそうだ。

   報道によると、この男性(当時56歳)は今年8月、夜勤中に体調悪化を訴えて突然倒れ、死亡した。遺族は直前に夜勤が連続したことが原因の「過労死」と主張。無理な勤務日程を組んだとして工場側に20万元(約260万円)の賠償を求めた。工場側は単なる「病死」と主張し、16日から男性の死因を争点に審理が始まっている。

   中国でも競争原理導入に伴って長時間労働が社会問題化しており、国内メディアは過労死が日本で1970年代から80年代にかけて社会問題化したことや認定基準などを 紹介、さらに中国でも過労死防止策を法制化するよう訴える識者の意見を伝えている。

   しかし、同法院担当者は毎日新聞の電話取材に「このケースは一般の労働争議として扱っており、過労死訴訟というのはメディアの造語」と答え、過労死が公的に認知されていないことを明らかにした。


 

自殺:会議設置し防止策検討へ 厚生、労働両省が予算要求

厚生、労働両省は来年度から自殺防止のための本格的な対策に乗り出す。
 日本新生特別枠として予算要求するもので、300の自殺したケースを無作為抽出し、自殺に至った経緯や、どうすれば防げたかなどについて1年程度かけて検討。
   あわせて医学や司法、経済、労働、文化など各界の有識者による会議を設置し、提言をまとめる。

  また、相談体制を充実するため全国で相談活動に取り組んでいる民間団体の「いのちの電話」の活動に対して相談員の研修のための費用の補助や、相談員の養成確保のための助成を初めて行うことにした。いのちの電話は全国に48個所あり、約7600人が年間66万件の相談を受けている。

  自殺者は1997年までは年間2万人台で推移していたが、98年には3万2863人、99年には3万3048人と増加傾向にあり、中高年のリストラ自殺などが社会問題化している。


  

10月17日
      勤労者:「心の健康相談」のネット窓口 悩みのメール相次ぐ

  職場でのストレスなどが原因とみられる自殺者が増えているなか、労働省の外郭団体労働福祉事業団が今春設置した「勤労者 心の健康相談」のインターネットの相談窓口に、悩みを訴えるメールが相次いでいる。「仕事がうまくいかず家庭が壊れそうだ」 「過労で自律神経失調症になった」。寄せられたメールには医師が回答するが、深刻なケースには医療機関の紹介をしている。ネットからは、だれにも相談できずに苦悩するサラリーマンや家族の姿が浮かび上がる。

  相談窓口は、同事業団が運営する横浜労災病院に設けられた。4月からこれまでに寄せられたメールは計59件。

  40代の男性は「上司と反りが合わないうえ、仕事の失敗でふさぎ込むことが多い。妻から見放されて離婚話が持ち上がっている。とても周りの者には言えない」。20代の女性は「ストレスでうつ状自律神経失調症と診断された。呼吸困難になり吐き気に襲われる」と苦しさを吐露する。

  夫が銀行に勤めている女性は「夫は帰宅が午前2〜3時で、朝は7時に出て行く。最近、平衡感覚がなくなり、後頭部がしびれると訴えている」。共働きの30代の女性は「残業が続き、慢性的な睡眠不足や疲労が続く。会社に行くのが苦痛だ」と打ち明ける。米国に住む日本人からの相談も。「夫が仕事上のことで悩み、精神科に通っている。
 近く帰国するが、日本でも同様な治療ができるだろうか」と心配する。

  警察庁によると、昨年1年間の全国の自殺者は3万3048人で、2年連続で3万人を突破し、過去最悪となった。約2割が経済・生活問題が原因とみている。メール相談を受けている同病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師(52)は「メールなら匿名性もあり、時間に関係なく発進できる。悩みをためないで気楽に相談してほしい」と呼びかけている。アドレスはmental―tel@yokohamah.rofuku.go.jp
  このほか「心の健康相談」は全国計11カ所の労災病院で電話でも受け付けている。問い合わせは同事業団(044・556・9861)。 【真鍋 光之】


10月15日
      民間の8割が残業を短縮 育児で時短も7割超す

人事院が十五日までにまとめた一九九九年の民間企業の勤務条件制度調査で、時間外の勤務時間を短縮した企業が全体の約八○%に上ることが分かった。
   調査は、国家公務員の勤務条件を見直すための資料づくりとして実施。従業員百人以上の企業から無作為抽出した四千四百八十社を対象に実施し、約半数から有効回答を得た。
  どのようにして短縮したかをみると(複数回答)、事務部門の機械化などを図る「OA化の推進」が六○・七%と最も多く、次いで「業務配分の改善」(五一・七%)や「人員配置の改善」(五一・○%)、「計画的な業務執行の徹底」(三五・九%)などの順だった。
  また、育児のため従業員の勤務時間を短縮するなど一定の配慮をしている企業が七四・三%あった。
  人事院は「民間は業務の進め方など、さまざまな見直しを行っていることが分かった。国家公務員の超過勤務も減る傾向にあるが、もっと縮減が必要だ。
  調査結果は勤務条件を考える上で参考にする」と説明している。


  

10月13日
      過労死訴訟:上告棄却 会社側に賠償命令が確定(最高裁)

 脳出血で1990年に33歳で死亡した川崎市麻生区のシステムエンジニアの男性の遺族が「過労死だった」と主張して、勤務先のソフトウエア開発会社「システムコンサルタント」(東京都墨田区)に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(北川弘治裁判長)は13日、会社側の上告を棄却する決定をした。会社側に約3200万円の支払いを命じた
 東京高裁判決が確定した。

  遺族側が勝訴した1、2審判決によると、男性は79年に入社し、89年5月から金融機関関連会社のソフトウエア開発チームの責任者となり、90年5月に死亡した。
  入社後、年間労働時間が3000時間を超えた年は4回あり、慢性的な過労状態だった。さらに90年3月からの月間労働時間は300時間に達し、死亡直前の業務は著しく過重だった。

  1審・東京地裁は98年3月、約4070万円の支払いを命じたが、2審・東京高裁は昨年7月、残業などを除いた収入を基に計算し、約3200万円に減額した。


 

10月12日 
     労働省、過労死の労災認定基準の見直し作業への着手を発表

 労働省は10月12日、いわゆる過労死の労災認定基準の見直しに向けた検討を開始することを明らかにした(別紙資料参照)。これは、平成12年7月17日に最高裁が下した2件の国側敗訴の判決(横浜南労働基準監督署長事件西宮労働基準監督署長事件)を受けたものである。
 蓄積疲労の評価や「直前1週間基準」の見直しなど、いずれも従前から過労死弁護団全国連絡会議などが強く求めていたものであり、見直しはむしろ遅きに失したといえる。
 また、2の(1)のロは、最高裁判決の内容を不当に限定的にとらえたもので、非常に問題である。最高裁は、広く一般的に「精神的緊張を伴う業務や不規則な業務などに従事することによって生じる『慢性の疲労や過度のストレスの持続』が慢性の高血圧症、動脈硬化の原因の一つとなり得る」としたのであり、「脳・心臓疾患発症の有力な原因が、高血圧症などの基礎疾患によるのものなのか、『業務の過重性』によるものなのか判断できないような一定条件の場合」にだけ、「慢性の疲労や過度のストレスの持続」を「『業務の過重性』の評価に当たって、付加的な要因として考慮する考え方」をとったのではない。
 労働省が認定基準の見直しをするについて、最高裁判決の趣旨を正しく取り入れ、真に被災労働者やその遺族の救済につながるものにしていくよう、強く求めていく必要がある。
(大阪過労死問題連絡会事務局長 岩城 穣)



10月12日
      過労死 遺族補償年金にサービス残業も含める(羽曳野労基署)

 羽曳野労働基準監督署は12日、大阪府松原市のプラスチック加工会社に勤務していた堺市の男性会社員(53歳で昨年4月死亡)を過労死と認め、労災保険法に基づく遺族補償年金の算定基準に、賃金未払い分の残業も含めることを決め、遺族に通知した。
 通常は実際に支給された額を基準に年金の支給額が算定されるが、このケースでは残業を示すタイムカードが残っていたほか、日報から算出された“サービス残業”の一部も未払い賃金として算入された。「過労死弁護団全国連絡会議」によると、“サービス残業”分が年金に反映されたのは初めてという。

  決定などによると、男性は1998年1月、同業他社での実績を買われてプラスチック加工会社に採用された。会社の経営が苦しく社長が休みがちな中、男性は営業、製造管理の3部門の責任者を兼任。欠勤者が出ると製造工場で自ら生産にあたり、トラブル対応や新規顧客の開発にも走り回った。帰宅後も深夜まで残務をこなしていた。

  昨年4月中旬、早朝に自宅の書斎兼寝室で死亡しているのを、妻(50)が見つけた。
  一方、会社は今年1月、大阪地裁に自己破産を申し立て、事実上倒産している。
  妻は今年3月、同監督署に年金などの支給を申請していた。

  遺族補償年金は、死亡前3カ月間の1日の平均賃金をもとに算定される。男性は毎月150時間近い残業をしていたが、会社は60時間を超える残業に手当てを支払っていなかった。しかし、タイムカードや日報が残っていたことなどから、同監督署は賃金未払いの残業を認定。この残業代も含めて基準額を算定した結果、年金額は支給額だけを算定した場合より34%増えた。

  男性の妻は「会社には夫が好きで働いていたように言われた。公的に過酷な仕事が認められ、安どの気持ちでいっぱいです」と語った。

  労働省は「未払い賃金が立証できる事例では、従来から未払い分も算定基準に盛り込んでいる。昨年度の労災認定は81件あるが、未払い分を含めたものが何件あるかは把握していない」と説明。一方、弁護団は「今までは遺族側も未払い賃金を請求に盛り込んでこなかった。これを機に、今後は事前に賃金確認の裁判を起こして未払いを確定させるなど、サービス残業分も年金に反映させられるよう取り組みたい」と話している。
 

 

10月11日
      特報・自殺 破たん企業の内情に精通のキーマン、3年で10人

 経営破たんした企業の幹部が自ら命を絶つケースが続発し、この3年間だけで10人に達している。いずれも会社の経理など内情に精通し、経営責任を解明するうえでの「キーマン」と位置づけられる人物。10日に自殺した百貨店「そごう」元副社長の中沢幸夫さん(74)もその一人だった。外部からは順風満帆に見える大企業の幹部たち。
 何が自殺の引き金を引いたのか。難航する経営再建と幹部の自殺というダブルショックが、破たん企業に重くのしかかる。

  1997年11月に北海道拓殖銀行、山一証券が破たんして以降、日本長期信用銀行(現新生銀行)や日本債券信用銀行、東邦生命など、金融機関を中心に大型の企業破たんが相次いだ。新経営陣による経営責任の追及へ向けた調査に加え、大半は東京地検特捜部や警視庁などによる捜査の対象にもなり、旧経営陣ら幹部の自殺が増えていった。

  旧長銀では98年10月から昨年5月にかけて、上原隆元副頭取ら3人もの自殺者を出した。上原元副頭取らは決算や不良債権処理などの責任者で旧長銀の不正経理に詳しい幹部だった。旧長銀は商法違反(違法配当)などの容疑で特捜部の捜査対象となっており、3人は参考人聴取を受けていた。

  乱脈経営のため99年6月に経営破たんした東京相和銀行も、99年10月のわずか1週間の間に、総務部副部長(当時48歳)ら2人が相次いで自殺した。99年6月に生命保険会社としては2件目の破たんとなった東邦生命でも、斎藤邦彦副社長(54)が、今年2月に自殺した。自殺した計10人全員が、自宅などで首をつったケースだった。

  相次ぐ経営幹部の自殺について、岩井弘融・東洋大名誉教授(社会病理学)は「大企業の幹部は、人脈が広いように見えるが、強いのは業界内部だけ。破たんという挫折や外からの追及に、耐えられなかったのではないか」と分析する。また「首つりという方法は、薬物や刃物を使ったものより発作的な側面が強い」という。

  また、自殺した10人のうち、仕事で3人と付き合ったことがあるという大手都市銀行幹部は「大まかに言うと、会社に対する忠誠心が強く生まじめなタイプで、会社の恥部を外に出したくなかったのではないか。日本の大企業には、退社しても会社のことに口を閉ざす人は多く、そんな“文化”が表れている」と話している。

 (企業破たんをめぐる最近の主な自殺者)

時期 関係企業 自殺時の肩書き
1997年11月 山一証券 系列証券大阪支店課長代理(40)
1998年10月 旧長銀 金融法人室長(48)
1999年5月 旧長銀 大阪支店長(51)
同年10月 東京相銀 総務部副部長(48)
  東京相銀 管財部次長(47)
2000年2月 東邦生命 副社長(54)
      4月 そごう 副社長(63)
      9月 日債銀   社長(60)
     10月 そごう 元副社長(74)

 


10月4日
      特報・腰痛 最高裁が通常作業でも労災認定、初の司法判断


  ごみ収集の通常作業中に急性腰痛になったとして、千葉県船橋市の職員が、公務災害(労災)認定を求めて地方公務員災害補償基金千葉県支部と争っていた裁判で、最高裁が市職員側勝訴の1、2審判決を支持し、同支部の上告を棄却していたことが4日、分かった。急性腰痛の労災認定は「通常の動作によるものは認定しない」との基準で行われているが、「通常の作業でも、腰痛が生じる危険性があれば労災認定をすべきだ」との初の司法判断が確定した。介護保険導入以後、腰痛に悩む労働者が増えている介護関係などの職場での労災認定に影響を与えそうだ。

  市職員は1990年3月、ごみ袋を清掃車に投入しようとした際にぎっくり腰になり労災認定を同支部に申請した。腰痛が公務によるものかどうかの認定基準は「通常と異なる動作」で「腰部に急激な力」が「突発的に生じた」ことを要件としている。このため、同支部は「ごみ袋投入作業は通常の動作」などとして「公務外」と決定、市職員がこの取り消しを求めて提訴した。

  1審の千葉地裁判決(96年8月)は「ごみ収集作業は過重ではなくても、腰を曲げる行為が繰り返され、腰痛を生じさせる危険性を持っている。通常の動作であっても、内在する危険性が現実化した」として職員の主張を認めた。2審の東京高裁判決(98年1月)も同様の判断を示し、今年7月、最高裁が同支部の上告を棄却した。

  腰痛は介護、保育、調理などの労働者に多く、介護関係職場では、労働省の外郭団体の委託調査で、特別養護老人ホームの職員や在宅介護のホームヘルパーのうち腰痛経験者が85%に達するなど、深刻化が指摘されている。 【大島 秀利】

  元労働基準監督署長の井上浩・全国労働者安全センター議長の話 通常動作で生じた腰痛は労災認定しないという認定基準を実質的に否定した判決だ。一般の労災を扱う労働省も含め対応の変更を迫るもので、介護や保育などの職場の腰痛認定に影響するだろう。


 

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